12.22.2020

[film] Small Axe: Education (2020)

17日、木曜日の晩、BBCのiPlayerで見ました。

Steve McQueenによるTVシリーズ”Small Axe”の5作めで、今のところこれが最後のエピソード。
この作品の主人公は12歳の少年Kingsley (Kenyah Sandy)で、これはSteve McQueenの子供の頃の経験に根差したものなのだそう。

メガネのKingsleyはふつうに学校の友達と楽しく遊んで騒ぐ年頃で、冒頭はプラネタリウム見学に行って大きくなったら宇宙飛行士になりたいな、って夢を描いている。けど授業の朗読はさっぱりだめで、音楽の合奏もはしゃいでいたら先生にめちゃくちゃ怒られたりしていると、母親のAgnes (Sharlene Whyte)は校長に呼び出されて、KingsleyのIQテストの結果がよくないし周囲についていけていないようなので、彼はこの学校とは別の特別な学校に行って貰う、その方が絶対に彼のためになるから、という。

その学校へはそれまで通っていた学校からさらに遠くにバスで行くことになるので、それまでの級友からはからかわれるし、授業といっても犬の鳴き声しか出さない子とか全く喋らない子とか、そんな子ばかりが周りいて先生はほぼなにもしないで放置したりへたくそなギターの弾き語りをしたり、自分は「バカの学校」 - とKingsleyがいう - に送られてしまったんだ、って絶望的になる。

そんなある日、Kingsleyの学校の前にLydia (Josette Simon)ていう女性が現れて、Kingsleyと話をして野放しにされているクラスの惨状を見ると、もうひとりの女性Hazel (Naomi Ackie)をつれてKingsleyの家にやって来てAgnesに話をする。今の英国の教育には構造的な差別があって西インド諸島からの移民の子は成績優秀なよいこにはなれない仕組みがあるしその機会も失われているし、Kingsleyが受けたIQテストは人種でバイアスがかけられているのだと。 怪しい勧誘のようにも見えたし、話の内容に動転したAgnesはお引き取り願うのだが、彼らが置いていった冊子を読んで、彼らの対話集会に行ってみると同じような境遇の親とか、自分は学ぶ機会がなかったので未だに英語が読めないのだという男性とかが沢山いた …   (で、ここから抜け出すためにみんなで国務長官のMargaret Thatcherに直談判しよう、とか)

ここまでの“Small Axe”は全て成人の、大人の世界の話だったのだが、それらの大人を作っていく子供の段階から、その教育の場からして既にこんなふうに仕組まれていたのだ、って。 それってひどくないか、と。

ひとつ前のエピソード - “Alex Wheatle”で、自分のストーリーを語ることが重要であること、その目覚めを描いた後、Steve McQueenはこのエピソードで、その手法を適用して自身の子供時代、彼自身に起こったストーリーを語ってみせる。ある時代と場所に刻まれた具体的な事件や出来事ではない、極めてパーソナルなことなのかもしれないが、でもそのことに対するなぜ? が彼の根となって彼を表現に向かわせたのだし、そうすることで、それを知らない今の子達に伝えられるものもあるはずだし、”Small Axe”は、間違いなく今の時代に対する小さな - でも確実に打ちこまれる - 斧になっていると思う。

そして、もう何度か書いているけど、これがお金を払わなければ見ることができない映画館の映画としてでなく、BBCという公共放送で放映されたということ、その意味の大きさ。 “Small Axe”のいくつかのエピソードについては、その実際の背景や事情について、動画できちんと補足解説してくれる以下のサイトもある。

https://www.bbc.co.uk/teach/class-clips-video/history-ks3-gcse-small-axe/zwsq8hv

きちんとしたアーカイブをもった公共放送の役目ってそもそもこういうもんよね、とカルトに乗っ取られてしまったどっかの国の公共放送のことを思う。日本にもこういう話 - 辛いけど確実に次に継がれなければならない話 - は過去にいくらでもあったしあるし。なんでさあ..(以下略)  っていうのと、従順で社会にとって都合のよい子供を量産する仕組みや仕掛けを編み出して組み込み部品として酷使することにかけて、あの国はほんと巧妙でやらしくできているよね、って。

公開でも放映でもいい、日本でも見られるようになってほしい。


いきなりTier 4が宣言されて、英国からウィルスの変種が出たとかで国境も閉鎖されて、ふだん南欧の方に行って過ごすはずの暮れの旅行計画 - 無理なら北欧でもアイスランドでも - は完全にとんでしまった。 それだけならしょうがないよね、なのだが国境が閉じて物流が止まってしまったので、フランスやベルギーから農産物や魚とかが入ってこなくなる可能性がでてきた、と。 具体的にはカリフラワーとかキャベツとか..  クリスマス直前にやめて、なのだがしょうがない。

例年であれば、パリに出て買い出しをしてくる予定だったのに神様ときたらなんでここまで...  しかたがないので近所のフランス系のデリに行ってカリフラワーとジロール茸だけ買ってきた。

でもそんなことより、孤立して辛い思いをしている子供たちや家族に暖かいクリスマスを。 Brexitなんてどうでもいいから。
 

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