12.03.2020

[film] Asia (2020)

11月25日、金曜日の晩、Curzon Home Cinemaで見ました。

これが長編デビューとなるRuthy Pribar監督によるイスラエル映画で、今年のトライベッカ映画祭では、監督賞であるNora Ephron Prizeの他にShira Haasさんがインターナショナル部門で最優秀女優を、更には撮影賞も受賞している。

タイトルはアジア(地域)のことではなく、主人公の女性の名前「アーシア」のことなの。

イスラエルに暮らす30代半ばのAsia (Alena Yiv)はロシアからの移民で、病院でナースをしながら自分が若い頃に生んだ10代の娘Vika (Shira Haas)とふたりでアパートに暮らしている。

Asiaは仕事の後にバーのカウンターで隣になった男と話したり踊ったり、勤務先の医師と彼の車の中でやったり、少しぎすぎすして疲れていて、アパートの冷蔵庫も不機嫌なノイズを出してばかりなので都度溜息をついてひっぱたいて黙らせる。 Vikaも楽しい日々を送っているようには見えなくて、仲間がスケボーをやっている公園に行ってタバコを吸ったりぼーっとしたり、誘ってきた男子をアパートに連れこんで酒呑んだりしているのだが、たまに気を失ったりぐったりしたり、母の勤める病院のERに運ばれてなにやってるのあんたは、になったり。

そんな二人だからそんなに仲がよい母娘とは言えなくて見えなくて、母はあたしにはまだやりたいことがあるし恋だってしたいんだから手間かけさせないで、だし、娘は構いたくないんなら寄ってこないでひとりで好きにするから、だし、この辺は割とふつうかも、と思っていると、頻繁に倒れるようになって病院の精密検査を受けたVikaは筋肉が動かなくなっていく病気にかかっていて、しかも急速に悪化しているようだ、と。

はじめはこの状態がふたりを更に険悪にする。ずっと自由を求めてきたVikaは思うように動いてくれない自分の身体に苛立って荒れるばかりだし、Asiaはこの状態をどう受け止めてよいのかわからない – なんで世話をしているのに怒られてばかりなのか、とか。映画の後半はふたりがつんけん喧嘩したり衝突しながら歩み寄っていく様子がゆっくり描かれて悪くないの。 難病モノにありがちな絆や関係性を自明の、当然のものとしていないところとか。 そのうちAsiaは同じ職場にいる若いナースのGabi (Tamir Mula)に空き時間にVikaの相手をしてやってくれないかと頼んで、よい若者のGabiはいいよ、って車椅子のVikaを外に連れていったりするようになって、それまで男子と親密になったことがなかったVikaは緩み始めて、ふたりはだんだん仲良くなっていく。

こんなふうにふたりが寄っていくかんじ - 母娘というよりふたりの女性が(病気という悲しいきっかけはあるにせよ)手探りで自分たち(Asiaの内にあるVika、Vikaの内にあるAsia)を発見していく過程がいろんな場面を通して細やかに描かれていて、とてもよい女性映画だと思った。 ただ一点、AsiaがGabiにあるお願いをして、そこからのVikaとGabiのエピソードについては賛否あるかもしれない。ああいうことってあるのだろうか、これがなくてもストーリーは運んでいけたのではないか、とか。

というのと、そうはいっても生活のために続けなければいけない日々の仕事も横にはあって、その辺のどんよりとした現実感も描かれていて、ラストがどうなるかは書きませんけど、ああー、って。
ここでのふたりの決定が、ふたりのどちらの or あいだの何を元に為されたのか - 正解なんてないのだが - 考えてみること。
あと、これが母娘ではなく、恋愛関係にある男女 or 女女だったらどうなっただろうか? とか。


朝から政府がワクチンを承認しました、世界で最初です、もうじき来ます、というのと、ロックダウンが明けてお店が開きました、というのをお祭りのようにずーっとニュースで流している。 ほんとうに必要としている人が大勢いることは確かなのでよいことなのだが、これで大丈夫だーってみんな走っていかないようにしないと。 注射うけた人はなにしてもいいとか勘違いしないでね。

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