12.18.2020

[film] The Shop Around the Corner (1940)

12日、土曜日の午後、BFI Southbankの一番でっかいスクリーンで見ました。ここ恒例のクリスマス映画特集から。

クリスマス映画はケーキと同じであれば食べるもの – やっていれば見るもので、TVだと”Love Actually” (2003)は流れていれば見るし、今年はなぜか”The Holiday” (2006)を割と頻繁にやっているのでこれも見るし、映画館だと”It's a Wonderful Life” (1946)と”Meet Me in St. Louis” (1944)は一年ごとに交替で見にいくかんじ。で、この『桃色の店』は映画館でやっていれば毎年でも必ず見る(ここでも既にいくつか書いている)。これをTVでリピートで放映してくれないかなー。

今年の初めにブダペストに行ったのも、この映画の舞台になった街(街角)がどんなところなのかを見たかったからなのだった。

街角にある革製品の店を経営するMatuschek (Frank Morgan)の元で働くAlfred (James Stewart)と5人の店員がいて、クリスマスを前にがんばって稼がなきゃ、になっているところにKlara (Margaret Sullavan)がこの店で働かせてくれ、と言ってきて、最初はごめん今はムリ、って断るのだがちゃっかり採用されたりしてまったくもう、で、Alfredはクリスマスに向けて文通相手との出会いがうまくいくかどうかで頭が塞がっていてそれどころじゃなくて、それはKlaraの方もまったく同様なのだった。そしてMatuschekは自分に隠れて妻がなにか怪しいことをやっているのではないか、でいらいらしてて、そのとばっちりがAlfredに飛んでくる。

慌しい仕事場で、慌しい年の瀬に、誰もが救いを求めている。これまでのルビッチもののようになにかミッションが動いていたりどこかで恋が勃発していたり、そういう状況下でコトの推移や転覆を見守るのではなく、誰もが同じ地面の上に立ってそこから浮かびあがったりつま先立ちしたり少しだけ幸せになったりすることを必要としていて、そこで人はどんなふうに人と出会って恋に落ちる(墜ちる)のか、をほんとに地面の上からドキュメントしようとする。決して形而上には向かわず、神も天使も出てこない - ここで起こるのはクリスマスの奇跡や恩寵ではなくて、どこでも(街角の小さな店でも)、誰にでも(経営者から小僧まで)起こりうることだ、っていうのがベースで。 これを最高のクリスマス映画だと思うのはそこなの。

ふたりの手紙のやりとりがあって、Alfredが突然解雇されて(↓)そこからカフェでの決定的な(でもおもしろい)すれ違いがあって(↓↓)Matuschekが自殺未遂をして(↓↓↓)、AlfredとMatuschekが和解して、Alfredが復帰して、クリスマスのセールがなんとかうまくいって、最後にお店に残ったAlfredとKlaraがツリーを挟んで向かいあう。 なーんにもなければ、ふたりの手紙のやりとりからカフェでの出会いから付きあって..  ってとんとんと進んでいったはず。 でもそうはならなかった。間にいろんなのが挟まって膨らんで錯綜して、これってどこから始まったのかというと、手紙の、郵便箱に封筒が入っていた、ふたりがその封筒を拾いあげたところからで、その等圧線の巡り合わせに神様みたいなものを見るのも見ないのもその人次第で、あとは師走ってそういう誤配みたいなのが嵐のように起こる季節なのよね、って。

これより後の時代の”You've Got Mail” (1998)だと、この辺のごちゃごちゃした配信を巡る混乱って電話回線を通ることで回避されて、このやりとりだけ物語として分離しちゃったのは少し残念かも、なのだが、最近のスマホの時代になると、端末にいろんなプロファイルが溢れてAIが勝手にオススメしてきたりするので、こんな物語はかえって作りやすいのかしら? でもそれを作るのはもはやヒトではない、と。

ルビッチの映画に出てくるDietrichともGarboともLombardとも全く異なる、場面によって少女のようにも老婆のようにも見えるMargaret Sullavanと、やはりルビッチの映画に出てくるギラギラ系男の湯気がでていないただの仕事人のようなJames Stewartの、いがみ合いから始まる出会いが、どう転がってあそこまでいくのか。

James Stewartのクリスマス映画って、”It's a Wonderful Life”もこれも、昨日Criterion Channelで見た”Bell, Book and Candle” (1958) - これもクリスマス映画 - も、彼はいっつもろくな目に合わされないふつーの男をやらされていて、でも最後にはなんとかなるからー。

今年のクリスマスはカフェも開いてないしお買い物も好きなようにできないし、数年後、この状態でなにがどうなることやら、の”Love Actually”みたいなクリスマス映画が作られることでしょう。 どうか、思い出したくもねえや、なやつにはなりませんように。

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