8.06.2020

[film] Things Behind the Sun (2001)

7月30日、木曜日の晩、Criterion Channelで見ました。7/31以降見れなくなる映画のリストから。

Allison Anders監督の作品は昨年8月に”Gas Food Lodging” (1992)をBFIのNineties特集で見て、とてもよかった、というのとオリジナルスコアをSonic Youth (Jim O'Rourkeがいた頃の) がやっている、というのもあった。日本で公開はされていない模様。

フロリダの住宅地のある一軒家の庭に明け方飲んだくれて転がっている中年女性がいて、彼女は毎年その時期になるとそこに来るらしく、今回も警察を呼ばれて簡易裁判の後にリリースされる。

彼女がSherry (Kim Dickens)で、地元でバンドをやっていて、彼女が過去にレイプされた経験を歌った曲がラジオでヒットし始めている。それをLAの音楽ジャーナリスト(雑誌の名前は”Vinyl Fetish”)のOwen (Gabriel Mann)が耳にしたら彼の顔色が変わって、これは自分が取材したいので行かせてくれ、と編集長 - Rosanna Arquette – を説得して現地に向かう。

前半は話があちこちに飛んでとっ散らかっててよくわからなくなるのだが、軒先でSherryが倒れていた家はかつてSherryがレイプされた現場で、OwenはSherryと同じ学校で一緒に遊んでいた友達だったことがわかって、現地に着くとOwenは獄中にいる兄Dan (Eric Stoltz)と会ってからライブハウスでSherryの歌を聞いてインタビューを申し込み、自分はあの歌に書かれたレイプのことを知っている、というと彼女は動転して、彼女を傍でケアしてきたパートナーのChuck (Don Cheadle)も激怒して..
(ここから先は真相なので知りたくない人はー)

Sherryがレイプされた現場はかつてOwenとDanが住んでいた家で、あの日仲良しのOwenにカセットテープを渡しにやってきたSherryにリビングでたむろしていたDanとその仲間がちょっかいを出して揉みあううちに彼女をレイプしてしまう。Owenは別の部屋にいて、兄たちの頻繁なそういう所業に耐えられなくていつものように大音量の音楽で耳を覆っていた..  (という記憶の再現が何度も)

Sherryのその後の人生はぼろぼろで今もまともな暮らしなんてできやしない、あんたにその苦しみがわかるか? とOwenとの取材でぶちまけるのだが、実はあの事件の後にOwenも傷ついて女性と関係を持てなくなっていて、でもふたりで向かい合って言葉にしていくことで少しづつ..

既にいろいろな人が語っているように、レイプはその人の一生に決定的な、消えない/消せないダメージを与えて、語ることすら苦痛になる – こんなふうに、という具合に何度も訴えてくるので再現シーンはとても辛いのだが、見たほうがいい。これ、監督のAllison Anders自身の経験でもあり(レイプシーンは、彼女が実際にそれを受けた場所で撮影されたそう)、決してひとごとの語りにはなっていない。Sherryがかつて一緒に聞いていた音楽(The Left Bankeとか)についてOwenと話をしていくところ、今は別の家族が暮らしている現場の家のなかに入れて貰って部屋の配置や浴室をじっと見つめるシーンとか、感覚的に伝わるものがある。”Gas Food Lodging”にあったクールなトーンとは対照的に行き場を失った怒りと熱が充満してつんのめって混乱している。この混乱をそのまま伝えたかったのだと思う。

タイトルはNick Drakeの曲のタイトルでもあって、この曲も勿論流れるのだが、Sonic Youthのひりひりしたスコアが見事なのと、あと、ライブハウスで演奏するSherryのバックバンドがJ. MascisにRedd KrossのSteve & Jeff McDonaldってどういうこと? ちなみにJ. Mascisはこのバンドではドラムスを叩いてて、少し喋るシーンもあるの(Steveも)。(そういえばJ. って”Gas Food Lodging”にも出てたね)

こないだ見たドキュメンタリー - ”On The Record” (2020) にしても、ようやく翻訳がでた『その名を暴け』にしても、これにしても、被害者に寄り添って起こったことを文字にすることが加害者を追い詰める。 ジャーナリストの仕事ってそういうものだと思うんだけど、日本の彼らは強者にばかり寄ってって提灯もって太鼓もって、なにしてんの? だよね。


ベイルート、とても心配。苦しんでいる人たちを少しでも..

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