8.29.2020

[film] TENET (2020)

 27日、木曜日の晩、Picturehouse Centralで見ました。
本来であれば70mm IMAXで見るべき(Tomが行ったのはBFI IMAXよね)なのだが、予約取れないし、天気悪くて頭いたいし、そんなにノれるかんじでもなかったのでふつうの70mm上映にした。やっぱり70mmだとぜんぜん違うねえ。

コロナ後の映画館再開の目玉というか象徴のように宣伝されていて、Christopher Nolanだし、そりゃそうなんだろうな、と思ったもののなんとなく気が重かった。Lock down中に何度かTVで見た”Dark Knight”のシリーズでも”Dunkirk” (2017)でも、至近距離で炸裂するサスペンスや修羅場はおっかないしすごいと思うし、あるいは”Inception” (2010)の夢の中でも”Interstellar” (2014)のブラックホールでも、人が立ち入ったことがない、見たことがない空間を、見たことがないという地点・前提から入って再構成して見せてしまうエネルギー(作っちゃうんだから)はえらいと思うのだが、そういう画面が彼方から吠えてくるHans Zimmerの「ばおおおぉーん」みたいな威圧的な音塊と共にやってくると、ごめんなさいコタツで寝ていたいですまだ暑いけど、とか言いたくなる。ここんとこ特に。

で、今回は007みたいな現代の活劇 – 第三次世界大戦阻止 – みたいなのだが、予告を見ると手元で撃った銃弾が元のとこに吸い込まれたり、要するに手元の手前の時間が戻ったり - それがテクノロジーなのか装置なのか物質なのか観念なのか肉体に宿るのかわかんないけど – そういうことがフィクションであれ起こりうるということを納得しないと頭はついていけずに気づいたら撃たれてハチの巣、なんだろうな、とか。

結論からいうと、よくわかんなかった。そのうちいろんな記事とか解説が出てきて読めば(たぶん読まない)わかるのかもしれないけど。だからネタバレもくそもないのだが、Christopher Nolanてすごいなーと思うのは、こういうなんかわかんない – きちんと説明されてもわかんない -  けど、画面と音のすごさは、画面だけは子供でもわあーって、なるくらい怒涛の勢いで押し寄せてくるところだと思う。こうして今回は電車とか船とか飛行機とかヘリとか、坊ちゃんも大喜びなのがいっぱいでてくるし、わけわかんなくたって見て損した気にはちっともならない(ここはひとによるか)。

「時間」のテーマが出てくるとやっぱりどうしても難しくなって、それでも”Interstellar”で時間を超えてやってきたMatthew McConaugheyが本棚の本を落としたり、”Avengers: Endgame”でCaptain AmericaがCaptain Americaと組み合って「いいケツだな」っていうようなシンプルなのだったらまだよいと思うのだが、逆行していく時間の流れに沿った動きの中で登場人物たちのアクションだけは順行(はて、この状態ではどちらが順?)するという、これも特撮には違いないけど、見ているこちらの視覚を適応させるのが大変なやつで、潜水作業 – 実際、そういうマスクみたいのをつける - や宇宙空間での作業を見ているかんじに近い。無重力ともちがう別の動きとか力の支配に抗うやつ。しかもそれの揺り戻しも含めて考えないといけない、とかなるともうお手あげ。想像することすらめんどいことが実際に起こってこちらを縛りにくる面倒くささ。(人によっては圧倒される、と)

劇中にも”Multiple Reality”って言葉がでてきたけど、我々は多層の現実世界を生きたことがないので、(多層がありうるとして、その多層性も含め)それがどんなものなのかって知らないわからない。だから如何ようにも旅をして構築したり描いたりすることができる、っていうのがChristopher Nolanが映画のなかでやってきたことで(だから彼の映画には乗り物がいっぱい)、目の前のあれこれで手一杯のひとにとってはそんなのどうでもいいー になりがち。男のファンタジーだろ、って

主人公 - The ProtagonistのJohn David Washingtonはすさまじい運動神経と手捌きで過去に起こったことを回収しつつ次の動きを決めていく(だからこそのThe Protagonist)のだが、ふだんから手際と要領の悪い人があれをやると二次災害三次災害のカオスを巻き起こして、大変なことになってしぬ(ことすらできない)  - という地獄の逆立ちコメディをCharlie Kaufmanあたりに撮ってほしい。

ここまで、ストーリーとかに全く入らずにきてしまったが、これって上から読んでも下から読んでもの回文になってきれいに閉じている、あるいは、ここで起こったことはまだ起こってないことが起こっているのだがそれはまだ起こっていない...  ってぐるぐる自分の尻尾を追って回り続ける、そういう歴史のありようを描いていたものなので、ストーリーは割とどうでもよくて、革命起こしたい人達が見たら憤死しちゃうようなやつなの。

その辺でMichael Caineが”Interstellar”の時みたいに回文形式の詩でも読んでくれたら儚くてばかばかしくなってよかったのに、主人公のスーツを貶しただけでいなくなってしまった。

でも今の我々が見るとやっぱし、彼らが向かう先はウクライナの炭鉱ではなくて最初に肺炎が確認された地点だよな、あーあって。

Aaron Taylor-Johnsonは”Kick-Ass”~“Godzilla”~”Avengers”ときて今回ので、地味だけど着実に強くなっているねえ。

Elizabeth Debickiさんはとっても素敵なんだけど、はやく”Vita & Virginia” (2018)を日本公開しなされ。Virginia WoolfとPrincess Dianaの両方を演じている珍しいひとなんだよ。

この仕掛けを巡ってフェミニスト軍団とマスキュリスト軍団が争奪戦を繰り広げる下ネタ満載rom-comが作られたらぜったい見に行く。汎用性あると思う。作るのは大変そうだけど。

Tomが現れたのは続編をやるんだったら入れて - ”Edge of Tomorrow” (2014)で同じようなのやっているからさ、っていうアピール説。


明日はRSD2020なのだが、リストを見ながら行くか行くまいかまだ悩んでいる。

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