8.07.2020

[film] Make Up (2019)

 1日、土曜日の晩、Curzon Home Cinemaで見ました。
Claire Oakley監督・作で、彼女の長編デビュー作となる。おもしろかったー。

英国の西 – コーンウォールの海岸沿いのリゾートパーク - 海岸に向かって同じようなコテージが綺麗に並んでいるところにRuth (Molly Windsor)が恋人のTom (Joseph Quinn)を訪ねてくる。季節はオフの冬で滞在している人は殆どいないのだがTomはそこのひとつのコテージに住み込みのスタッフとして働いている。

再会して情熱的に抱きあって、翌朝彼が仕事に出て行ってからふんふん掃除とかをしていると鏡にキスマークのような跡がついていたり、布団に赤茶の毛が絡まっていたり、暇なのでパーク内を散歩していると変な人影を見た気がしたり、別のコテージのガラス窓にも同じキスマークがある気がしたり、ずっとそこに住んでいる変なかんじの老婆の姿を見たり、従業員が飼っている犬は獰猛でこわいし、夜になると何度か叫び声のような音が聞こえた気がするし。

やがてRuthもそこで同じ仕事を貰って働き始めるのだが、冬のコーンウォールは風ぼうぼうで天気も悪くて、そこに同じような建物がずっと続いていて、管理人の女性は不愛想で怖くて、Tom以外の従業員はあんまガラよくないし、これは幽霊ホラーでも浮気スプラッターでも自閉サスペンスでも、リンチでもカーペンターでもデ・パルマでもなんでもありうるな、って身構える。

そのうちRuthはそこに勤める少し年上の女性Jade (Stefanie Martini)と知り合って、彼女はおしゃれで優しくてメイクとかスタイリングが趣味なので彼女のところに通ってネイルして貰ったりカラオケしたり踊りに行ったりして遊んでいるのだが、彼女の部屋に置いてあるウィッグの髪の毛が赤茶で。

そうやって彼女と会っている間にも彼女の目には変なもの嫌なもの怖いものがどんどん入ってきてこびりついて離れてくれないし、海も天候もずっと荒れまくって容赦ないし、Tomとの溝も深くなってみんな変な目で見るし、更には時系列も錯綜していって…  もうだめありえないーってなる … ここから先は書かないほうがいいかも。

最後はやられた。になって、タイトルと海にいるRuthがじんわりと染みてくる。(あーそうかー、って)

幽霊や亡霊や殺人鬼がいくらでも徘徊していそうな冬のリゾート地の海の奥とかコテージの影から忍び寄ってくる英国の怪談としか言いようのない土着のトラッドな恐怖。これをアメリカ西海岸で、より狂った形で展開したのが例えばDavid Robert Mitchellの”Under the Silver Lake” (2018)だった気がする。 まずは爪とか髪とか生理的なところに来るあたりからじわじわ攻めてきて、引き摺りこまれるような水に至る、という辺りも。

彼女に迫っていた/彼女が追っていた怖ろしいものの正体が暴かれる - それはこちら側で起こるのか彼女の方で起こるのか、なんか悔しいくらいに鮮やかで、でも後になって振り返ればそうとしか思えないようなそれで、もう一度見て確認したくなる。 彼女の素顔はどんなだったのか、って。

86分。このサイズで、バックにCreative EnglandとかBBC FilmsとかBFIがいる映画ってどれも外れないのはいつもすごいな、って思う。 スターも出ていない低予算なものだけど、テーマは貧困や差別や社会問題を幾重にも反射したシリアスなのが多くて、作者が考えてきたであろう筋道をこちらにも考えさせるのが多い。 金撒いて接待してしゃんしゃんのどっかの国の「クリエイティブ」とはえらい違いだよなー。


久々の35℃超えが予告されていたので朝からオフィスに避難した。アパートには冷房がないのでしんでしまう。 まだ誰もいないので快適だったねえ。

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