8.19.2020

[film] Festival (1967)

 11日、火曜日の晩、Criterion Channelで見ました。この日の昼間が死ぬほど暑くて晩になっても続いていて、なんも考えたくない、さーっと流せるドキュメンタリーがいいな、って。
1963年から65年までの3年間、Newport Folk Festivalの様子を追ったモノクロの映像。

いろんなミュージシャン - カントリー/フォーク系だとPeter, Paul and MaryとかPete SeegerとかBob DylanとかJoan Baezとか Judy CollinsとかDonovanとかJohnny Cashとか、ブルース、R&BよりだとSon HouseとかHowlin' Wolfとか Mike Bloomfield とかThe Staple Singersとか、ブルーグラスとか大道芸みたいのとか、知ってる人も知らない人も代わるがわる出てきてじゃんじゃか演奏していく。すさまじいパフォーマンスで聴衆を圧倒するような様子 – DylanとBaezは別格ぽいけど - は余り描かれなくて割とみんなすごーいなんだこれ? って表情でステージの方を見たりして、演奏する側もその様子にあっさり感動しているような。

昨今の夏のフェスときたら立派な産業で、マーケティングからチケッティングからマーチャンダイズからアクセスからぜんぶパッケージとして用意されてて、その居心地からなにからレイティングされて失敗すれば会社が軽く吹っ飛んだりする。それがよいのか悪いのかは別として、この頃はまだ素朴に野外の音楽会に大挙して人が集まっていろんなスタイルのミュージシャンがフォークやブルーズ - トラディショナルで地に足のついた民衆の音楽 – を演奏する、それをみんなで聴いたり驚いたり一緒に歌ったりして(その音楽の歴史に)参加する、ということになにか画期的な意義がある、と思われていて、その思いが共有されていたようで、その様子が新鮮だし生々しい。

この、すごいことが起こっているぞ、という地鳴りや雷神風神を呼ぶかんじはMonterey Pop FestivalやWoodstock のあたりまで続いたのだろうか? 今はなんでこんな … とか言ったところでしょうがない、ただ音楽が、歌が世界を変えることができる、とみんなが素朴に信じようとしていた幸せな時代があった、というのはこれを見るとわかる。

やっぱりJoan Baez とBob Dylanは魅力たっぷりで、ふたりを見ているだけで楽しい。Dylanがエレクトリックギターを手にした65年のライブも出てくるけど、この映画の流れの中ではどうってことないような。あとは"I Walk the Line" を歌うJohnny Cashの電撃。


Jazz on a Summer's Day (1959)

12日、水曜日の晩、前日に続けて暑くてやってられないので、Film ForumのVirtual Cinemaで見ました。 『真夏の夜のジャズ』として有名なやつで、1958年のNewport Jazz Festivalの模様を追ったドキュメンタリー。たまに会場の横で開催されていたAmerica's Cup(ヨットね)の様子も挿入される。デジタルリストアされたものすごくきれいな映像。上のフォークがモノクロでこっちの方が撮影年は前なのにカラーで、写真家のBert Sternが監督にいることもあってとってもリッチでカラフルで、上の”Festival”がガリ版印刷ならこっちはカラーグラビアたっぷり、どっちも古雑誌を広げるような味わいがたまんない。

ジャズはそんなに詳しくないのだが、そんなの関係なしにとにかくものすごくおもしろい。
いろんな音の重なりや連なりが絵の具を混ぜるようにトーンを変えつつ演奏の進行と共に自分の頭のカンバスにジャズ的な模様 – それがどうしてジャズになる/ジャズと呼ばれるの? を描いていく、そのスリリングなこと。最初の方のJimmy Giuffre 3のBob Brookmeyerのかっこよさ、異界からやってきたようなThelonious Monkの異様さとか、Anita O'DayにDinah WashingtonにGerry MulliganにChuck BerryにLouis ArmstrongにMahalia Jacksonに、ものすごい昔に伝説のような名前として聞いていたひとたちがほんとうに動いて演奏したり歌ったりしている。どれも人間とは思えないようなすごいことをやってて、でも楽しそうに笑っているの。

時折映しだされる客席の様子もとっても素敵で、あの女性はどんなところに住んでいるのだろうとか、普段はなにをしている人?とか、あのカップルはあのあとどこに行ったのだろうか、とか、ライブの様子と一緒に彼らのそういう像もしっかり残る。昔の観光地の素敵な写真みたいに。

ここにある優雅さ - 音楽を楽しむ、海辺の風を楽しむ優雅さって、いまのフェスを撮ったものにはあまり出てこない気がする。いまのフェスってとにかく楽しまなきゃ損、苦の果ての楽、みたいにみんなそれぞれの熱狂浄土に飢えている気がして、わからなくはないけどー。

中学生の自分に上の2本を見せてみたらどっちの音楽をいい、やりたい! って思うだろう?やっぱり後者だろうねえ、って。
なーんでパンクとか来ちゃったのかなあ(ぐるぐる)。おろかもの。


先週は上のように熱波でしんでいたが今週はしょうもない気圧のせいで頭痛はくるわ目はまわるわなんも手につかない。

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