8.09.2020

[film] Born in Flames (1983)

2日、日曜日の晩、Criterion Channelで見ました。BLMにも関連して何度かクローズアップされていて、それならば、くらいの軽いかんじで見たらなかなかびっくりだった。2016年にAnthology Film Archivesが焼き直したプリント。

まずこのタイトルって、81年のRed Krayolaの同名シングル曲から来ているのね。この年、日本で(のみ)発売されたRough Tradeのオムニバス盤 - ”Clear Cut”にも収録されているのだが、参加しているのがGina BirchやLora Logicなので、ほぼThe Raincoatsに聴こえるやつ。これが映画の中で何度か流れる。

ストーリーはNYを舞台にドキュメンタリーのように進んで、というか最初はてっきりドキュメンタリーなんだと思って見ていて、なんかおかしいぞ、って。 NYの市長は黒人で、合衆国の大統領は社会主義者で、“Social Democratic War of Liberation”の10年後という設定で、その革命から10年後のNYはどちらかというと硬直した性差別、人種差別、階級格差によるいろんな亀裂が顕在化してきている。

そこでアンダーグラウンドの海賊ラジオ局を組織する2つのグループ -  Phoenix RadioをやっているHoney (Honey)とRadio RagazzaをやっているIsabel (Adele Bertei)の活動 - ラジオで放送する討論会やインタビュー、ニュース、曲までを紹介しつつ、NYの街中で起こっていること - 女性が男にねちねち絡まれていると笛を吹きながら自転車に乗った女性たちが現れて助けたり- とか、NYの黒人女性アクティビストAdelaide (Jean Satterfield)がグローバルの活動家Zella (Flo Kennedy)に招かれてモロッコで訓練を受けて戻ってきたら空港で拘束されて自死 - おそらく虐待による殺人 - という事件があったり、それらの背後で暗躍するFBIがいて、それを追うグループもいて、結局彼女たちのラジオ局は解体させられて、だがしかし ..

近未来ふうの社会でも継続しているらしい格差や差別の問題に(主人公である女性たちが)現実的にどう立ち向かっていくか、という問いに対する答えは、いまのこの現実においてもじゅうぶんに有効な対抗手段であることを示して、たとえそれが当局によってあんなふうに弾圧されても潰されても例えばこんなふうに、というその先まで用意してどこまでもリアルに政治的で、その語り口も女性たちの描きかたも一筋縄ではなくて、まったく古びていないように見える。ネットなんてない、ビラにzineにラジオにライブくらいしかない時代なのに。

ラストは更に地下に潜行したゲリラグループがまさかあのワールドトレードセンターを… (すこしびっくり)

Criterionでは終わったあとに監督のLizzie Bordenさんのインタビュー映像がついていて、これの準備のために5年間、いろんな人に会って話を聞いたりアイデアを出し合ったりアドバイスを貰ったりしながら固めていったのだと。 そのうちの何人かはそのまま出演して貰って - そういえば、Kathryn Bigelowさんが当局に対抗する新聞記者のエディターグループのひとりとして出ていたり - なのでこれはやはり、当時のNYのサバイバルガイドにもなっているのだと思った。 見た後の感触はまさにドキュメンタリーを見た後のそれ - これからなんとかしないと - だし。

音楽はテーマ曲の他にThe BloodsとかThe Slitsとか、Jimi HendrixとかLou Reedも流れる。この時代のラジオ局がいかにかっこよかったか、って。


The Bowery (1994)

“Born in Flames”の前にCriterionで見たSara Driverの短編ドキュメンタリー。90年代初のBoweryの様子をそこに暮らしたりたむろしたりする人々の姿とそこから見たり聞こえたりする歴史も含めて撮っているだけなのだが、とってもよい。
この頃NYに住んでいて、でも当時、Houstonから下の区画へは行ってはいけません、って会社からおおまじめに言われたりしていた。 こっちもまじめだったので従って、せいぜいHouston添いにあったKnitting Factoryに通うくらいだったが、あの界隈って(SOHOも含めて)変なお店とかいっぱいあったのよねー。それが00年代に入ると一変して、Bowery Ballroomを中心にとっても栄えて、いまはあれこれ高くて誰も住めやしない。

"Bowery"がタイトルについた映画って、Raoul Walshの”The Bowery” (1933)とか、有名な“On the Bowery” (1956)とか、いっぱいあってだいたい外れない。


3月18日以降はじめて、ついに映画館に行って2本みた。ストリーミングでやってくれないみたいなのでしかたなく。 外は暑いし客は5人くらいなので極楽だったけど、トイレがひとりずつしか入れないとかねえ。
 

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