4.01.2020

[film] Vivarium (2019)

このサイトにある映画の感想は、ほぼすべて映画館で見たものに対して書いたものだった。たまに機内で見たのもあったりするが、少なくとも自分の家のTVのオンデマンドとか配信とかDVDとかで見たものは書いていない、というかそういうのをこれまでやったことがなかった。00年代の中頃、米国から戻ってくる時のどさくさで大量のDVDを買いこんで持ち帰ったが結局封を開かないまま日本に置いてきていて、なんでかというと落ち着きがない性分で、家にいても食事するか音楽聴くか本読むかTV見るか、くらいでそれ以外は外に出ることばかり考えているから(犬か.. )。だって外に出ればいくらでもおもしろいのがあるし、映画館の暗闇で見る35mmとか16mmのフィルムって、美しいったらないしー だったのだが、3月の後半から全てが変わってしまった。外ではなく家のなかでおもしろいのを探すしかなくなった。しかも仕事っていうおもしろくないのをやりながら(やりながら、じゃないな。避けながら、かな)。読書、っていうのもあってそれはふつうにやるのだが、読みながらも読んだあともだらだら考えたりしているので、それってここに映画の感想を書くようなのとは違う性質のなにか、という気がする。

とにかく、こういうことになったので家のPCで映画を見始めることにしたの。BFIのsubscriptionだと最初の14日間はタダだし、どれも£3 〜 4くらいだし、これでいつも行っている映画館を少しでも救うことができるのであれば、っていうのと、見逃していたやつをこの機会に押さえる、っていうのと。あとでMUBIとかCriterion Channelも試してみるつもり。とりあえず一日一本目標で、あきたらやめる。

“Vivarium”は、28日の昼、Curzon Home Cinema(っていうサービス)で見ました。見逃していたやつ。

これが長編2作目となるLorcan Finnegan監督によるアイルランド – デンマーク – ベルギー映画。
冒頭に鳥の托卵のシーンが出て、これに“Vivarium”の意味を加えるとだいたいわかってしまうのだが..

Gemma (Imogen Poots)とTom (Jesse Eisenberg)の若いカップルが仕事の後にこれから一緒に暮らす家でも探そうか、ってどこにでもありそうな町の不動産屋に入ると、なんか不気味な店員がお客さんパーフェクトな物件がありますよ、是非ご覧になってみませんか、ってあまりに押してくるので、車で現地に行ってみることにする。ここで止めときゃよかったのに。

連れていかれた先は新規分譲売り出し中、みたいな同じような一戸建てがきれいに何層も何棟も並んでいるような宅地で、雲まで同じように整列しているようで、新築の住居は新婚+子供(なぜか男子)を想定した理想的な造りだし、お二人にはぴったりでしょう、と攻めてくるのだがなんか気持ちわるいのでいいです、って断ろうとしたら店員が車ごと消えている。あのやろーって車で帰ろうとしても、その一角一帯から抜け出せなくなっていて、運転を替わってどこをどう行っても、元いた「9」っていう家の前に戻ってきてしまい、やがてガソリンがなくなって、その家で暮らさないわけにはいかなくなる。

そこの冷蔵庫には飾りのようなシャンパンとイチゴがあったのでそれでその夜はしのいだら、翌朝、家の前に段ボール箱に入った食べ物ひと揃いが届いていて、なんだこれ? と思いつつ貰って、その翌朝も箱があったので開けてみると中には赤ん坊(♂)が入っている。

捨てておくわけにもいかないので育てていくとそいつはあっという間に大きくなって喋るようになるのだが、勝手で我儘で言うこと聞いてもらえないと高音で叫びまくったりTV画面のぐるぐる回る意味なさそうな画像をずーっと見たりしててどうしようもなくて、ふたりはだんだん消耗してきて、やがてTomは何かに気付いたのか庭に穴を掘り始める…

まさに時流にのった(たまたまよ)”Stay Home”の悪夢ホラー、どこにも抜けられないので家に留まるしかなくて、留まると誰だおまえ? みたいなガキの面倒をさせられる。外にでたらZombieが、とか怪物が、ではなくて、外にはなんもなくて、家のなかによくわかんないガキが..  でも家をめぐる呪縛のありようをこんなふうに分解してみると、そんなに突飛な設定でもないのかも、普段のとたいして変わんないのかも、とか。

構造と設定がお伽噺のようにシンプルなだけにいろんなこと - 自分だったらどうするか? まずなにをすべきなのか?  とか、家の外に出ればいろんな世界が広がっているって、なんて素敵なことだろう(今は特に)、とか考えてしまうので主人公たちがあまりかわいそうに見えないところが少しだけ。Imogen PootsもJesse Eisenbergもすばらしい熱演をしているだけに。

エンドロールではあーらなつかし、XTCの"Complicated Game"が流れるの。なるほどなー。


一日一回は外に出るようにしていて、お買い物のついでに近所のこれまであまり歩いていなかった辺りをてけてけ散策しているのだが、Hitchcockの住んでいたとこを見つけたり、今日はMervyn Peakeの住んでいたとこを見つけた。「ゴーメンガースト」って、こんなふつうのお家で書かれていたの? って。

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