4.14.2020

[film] Riten (1969)

7日、月曜日の晩、MUBIで見ました。
MUBIでなんか探していたら、今晩深夜にExpireするよ、ってあったので見た。MUBIって、なんでExpireしたのも載っけているのかしら?  悔しいじゃないか(川島雄三のとか)。

Ingmar Bergmanの原作/監督による69年作で、まずTV放映されて劇場公開もされた。英語題は”The Rite”、邦題は『夜の儀式』。モノクロの72分。

どこかの町の判事Abrahamson (Erik Hell)が猥褻でやばい芝居をやっているという劇団員3名の訪問を受けて、彼らと個別 or 全員揃えて取り調べのために話をしていく、という筋立て。

劇団のメンバーは、女性のThea (Ingrid Thulin)、彼女の夫で初老のボス格のHans (Gunnar Björnstrand)、若くて酒浸りで乱暴なSebastian (Anders Ek)で、SebastianはTheaの前夫を殺して、いまも(Hansの妻なのに)Theaと関係を持っている – というようなことが個別の会話や判事との会話のなかで明らかになっていって、彼らの荒っぽい挙動や言動は見るからにそれっぽく、劇団員というよりちんぴらやくざの集まりのようにも見える。

判事はこの件にぜんぜん乗り気ではなくて弱気で、途中で教会にいって告解をして、自分はもうそんんなに長くないのかも、とか言う。(この時の司祭がBergman本人 ― 一瞬映るだけだが)

そして最後に「儀式」がくる。ここでまるで演劇のように(演劇だけど)予期していない何かが現れて裁く人と裁かれる人の逆転が起こる。というか、そういう不穏で怖いなにかを呼びこんでひっくり返す作業として「儀式」があって、それがこの劇団員と判事の間で突然執り行われてしまう。裁判という形、あるいは演劇という形をとって行われる主 - 客のありようが「儀式」というそれを取りしきる主体が不明の(そこに合意も契約も存在しない、酔っ払いのようにのしかかってくる)なにかに丸めこまれたときに生まれてしまう暴力とか不条理とか。

Bergmanの50~60年代の作品て、神とか宗教とか超自然のなにか、が普段のなんてことはない生活にこんなふうな侵入や転換を強いてきて脅かす(あるいは救いなしに突き落とす)というドラマが多かったと思うのだが、それがだんだん形而下に降りてきて、70年代になると日常の、夫婦間の会話とか関係がゆっくりとホラーに変容する、というものに変わっていった気がする。

これってBergmanの場合はホラーやサスペンスという形をとるのだが、シチュエーションによってはコメディにも転がりうるやつだと思って、このテーマはそっちの方がイメージしやすい気がする。
画面はTVを意識しているのが、上半身のクローズアップが多く、窮屈そうな八方塞がり感たっぷりで、ヌードもあるし、よくこんなのTVで放映したなあ、と思ってしまう。
といったところも含めて、ここまでダークな方に追いやってしまうのって、Bergmanは60年代末のアングラ・反体制演劇になんか恨みでもあったのかしら、とか。


ニュースを見ていると、感染拡大をどう食い止めるのか、数はどこまで伸びていくのか、ていう話題から、いつロックダウンをリリースできるのか(5月初は無理か?)とか、経済的ダメージとか、少しトーンが変わってきたような。ダメージなんてどこでもあるに決まっているし、誰のせいでもないんだからここで競争とか回復の早い遅いとか、そういう方向に行っちゃだめよね。 元には戻れない/戻せない、っていう前提に立って傷ついた人たちを救うことが優先されないとー。 戻しちゃだめだ立ち止まれ、って個人的には思うの。

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