4.18.2020

[film] Systemsprenger (2019)

10日、金曜日 - 四連休の初日の昼間、Cursor Home Cinemaで見ました。ドイツ映画で、英語題は”System Crasher”。監督はこれまでドキュメンタリー畑にいたNora Fingscheidt(女性)。

タイトルだけみるとパンクとかハッカーの話かと思うのだが、9歳の女の子のお話。
Bernadette - “Benni” (Helena Zengel)は、一度火がついて暴れ出すと手をつけられなくなる気性で叫びまくりながら周囲の子供も大人もお構いなしにぼこぼこ血まみれにしてしまうので、家族(母親ひとりと妹弟)から離され、学校からも追い出されて施設に入れられ、それでも評判がひどくて受け入れ先がない。母親以外の手が顔を触るとぶち切れる、ことはわかっているのだが、身体や脳には異常はなく、寧ろIQは高いくらいで、幼少期のトラウマが要因ではないか、と。

施設を転々として、いろいろ手を尽くしてもだめで、これまで同様の症状の少年たちをケアしてきた無骨なMichael (Albrecht Schuch)がBenniを3週間、電気もガスも通っていない山小屋で野良生活しながら治療することを提案し、梟を見せてやるから、とか彼女と約束して連れて行く。近所の酪農家と少しトラブルを起こしたりしたもののBenniとMichaelは仲良くなって、彼女も快方に向かうかと思えたのだがー。

はい。パンクとかハッカーの話かと思ってひっかかったのは自分で(だってタイトルのロゴとか)、こういう子育てとか教育の話だとは思わなくて、そういうのは苦手なのではじめはひー、ってなったのだが、これはこれで - Benniがあまりに凶暴でめちゃくちゃなのできついところだらけだったけど - おもしろく見ることができた。

傷を負った子供を野山で自炊させたら治りました、とか教育者の熱意と絆の確かさによって救われました、みたいな話だったらやだな、だったのだが、そうではなくて、山から戻ったBenniは、Michaelのとこに生まれた赤ん坊に触れたりして、よいこになったかに見えて、実はそうじゃなかったの。

結局国内の施設でBenniクラスの凶暴な子を治療・対応できるところはなくて(12歳以上であれば受け入れ可)、他にあるとしたらケニア、と言われて、ケニア…  って。 Benniは、これは自分で自分のことを制御できなくなるどうしようもない病気のようなもので、一緒にいるよい人々に迷惑をかけてしまう、ということがわかってきているのだが、でもケニアか …  って。この辺はなんだか痛ましい。誰もわるくないのに。 

でもラストはなんかすごくて、爽快なかんじすらあるの。 “Crasher”。
ドイツのだからか、まったくべたべたしたかんじがなくて、そこの扱いかたはすごいかも。

彼女を”Crasher”と呼ぶのであれば、彼女が壊そうとしているのはなんなのか?  彼女が生きようとしているのはどこなのか? 隅に押しやって見えない/見なかったことにしてしまえばいい、ってもんじゃないよね。 っていうことを考えさせるようなことがここ数週間、起こり続けているでしょ?  どんな国籍でも階級の上下もどんな職業でも無職でも年齢が上でも下でもどんな性別でも病気もちもそうじゃないのも関係なく、全員が等しく救われなければいけない - そうでないと全員が死ぬのだ、ってみんな思い知ったでしょ? 

Beniを演じたHelena Zengelさんの暴れっぷりがあまりにすごいのでこの娘だいじょうぶかしら、って心配になるのだが、宣伝とかを見る限りごくふつうの女の子のように笑っていたので少し安心したり。


ぽかぽか〜暑いくらいの春の陽気が続いた数日間の後、冷たい風と雨の日がきて数歩後退し、今日は少しだけ晴れ間が戻る。 こうやってじりじりと夏に向かっていることをじりじり確認する(したいんだって)には外をしばらくふらふらしてみるしかないのだが、それができない… けどやっぱり… のような複雑な顔で外を歩いている人たちがいっぱいいた。 そんな土曜日。

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