9.21.2018

[film] Sudden Fear (1952)

16日の日曜日の午後、BFIのJoan Crawford特集で見ました。
これはねえ、めちゃくちゃおもしろかった。これまでの彼女の特集でも一番だったかも。

“Possessed” (1947) に続いてオスカーの主演女優賞にノミネートされている。 邦題は『突然の恐怖』。

Myra (Crawford)はBroadwayで成功している劇作家で、舞台のリハーサルに立ち会って、あの男優はちょっと違うと思うから替えて、て言うとそう言われた男優 - Lester Blaine (Jack Palance)がなんでだよ、って突っかかってくる、というのが冒頭。

後日自宅のあるSan Franciscoに向かう電車でLesterと偶然(...)再会したMyraはこないだのお詫びもあるし、と食事したりいろいろ話したりしているうちに仲良くなって、そのまま一緒にSFに行って、そのままふたりは結婚してしまう。

しばらくはSFの瀟洒な邸宅 - 書斎には備え付けのレコーダーがあって部屋で思いついて喋ったことをすぐに録音できるの、とか - での甘い生活が綴られるのだが、弁護士との会話から彼女が死後は財産一式をすべて団体に寄付しようとしていることをたまたま知ったLesterがぴきってなって、やがて彼の傍にIrene (Gloria Grahame) が現れて極めて怪しいかんじになる。

IreneはLesterの元カノで、Myraが財産供与の書類にサインするまえにバラしちまおうぜ、ていう計画をMayaのいない時、よりによってあの書斎で密談したもんだから、しかも部屋の録音スイッチをオフにしていなかったもんだから、後でその内容を聞いてしまったMyraは幸福の絶頂から絶望の沼底に叩き落されてわなわなしつつ逆襲のプロットを考え始めて、Ireneの部屋の合鍵を作って出入りしたり、ふたりの字体を真似て嘘の手渡しメモを用意したり、できるだけLesterとは会わないようにしたり、タイムテーブル作って暗唱したり、とかスリル満点で、いよいよ実行の時が..

この特集でこないだ見た”Mannequin” (1937)では、逆の立場 - Spencer Tracyの金持ちからむしりとる側の若い娘で、でも途中で好きになっちゃってどうしよう、だったのに、今度のは若いツバメからむしられる側で、しかもあんなに好きだったのに、もう若くないからこれが最後の愛だと思ってたのにばかばかばか(含.自分)、って。

彼らの計画を知ったときにボロボロ泣いて悲しんで悔しがる姿、Ireneの部屋で計画の実行中、鏡に映った自分の姿にあたしなにやってんだろ、とうろたえる姿などから全開になるJoan Crawfordの無防備なエモと、それでも断固許さないんだから、とあくまで計画を遂行していく強さと、実行中にやってくるはらはらどきどき - 誰も助けてくれねえぜこんちくしょう - が過不足なく三つ巴になってて、最後は握り拳つくってMayaがんばれ逃げろ負けるな、って応援してしまう – そんなふうに入り混じった彼女の像はこれまであまりなかったかも。

Jack Palanceも登場したときからひと目で怪しいってわかる結婚詐欺タイプだし、Annette Beningが”Film Stars Don't Die in Liverpool” (2017)で演じたGloria Grahameのぺらい小悪党ぶりもたまんなくて、三者のアンサンブルもよくて、ノワールとしては明るすぎる(悪い方にあまりのめりこめない)のがちょっと違うかもだけど、お話しの転がりっぷり(SFの坂を転げ落ちるみたい)の気持ちよいことときたら。

で、あのあと、Myraはこれをネタに劇ひとつ書いて当てたのだと思うな。

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