9.11.2018

[film] Finding a Space for Wendy Toye

8月23日、木曜日の晩、BFIで見ました。映画上映というよりWendy Toyeという英国の振付家、ダンサー、舞台演出家、映画作家、等々の顔をもつ女性を紹介をする会。不勉強でこの方のことは存じておりませんでした。

1917年、Maya Derenの3日後に生まれたWendy Toyeは10歳でLondon Palladiumの舞台で最初の振付をして以降、13歳でOld Vicでの”Midsummer Night's Dream”に出るなど、舞台関係の仕事を続けて、52年に監督した短篇 – “The Stranger Left No Card” (1952)が、翌年のカンヌの最優秀短篇(フィクション)を受賞して、これをJean Cocteauが激賞して知り合って更にいろいろ広がっていった、と。Wikiを見るだけでも相当いろんなことをやっていて、すごいとしか言いようがない。なにかと神格化されがちなMaya Derenと比べて知名度は低いのかもしれないが、こんな女性もいたんだねえ。

The Stranger Left No Card (1952)    23 min.

彼女の映画監督としてのデビュー作で、3週間で£3500を使って撮られたもの。
地方のある駅に髭にでっかい帽子、大袈裟な動作をする道化師みたいな男 – Stranger (Alan Badel) が降りたって、おどけた仕草で手品をして子供たちを喜ばせて、滞在するホテルへの記帳名はナポレオンで、みんなはあれ誰? っていうのだが誰も知らなくて、でも愉快なひとだからいいじゃん、てみんなに好かれていくのだが…  なんの予備知識もなしに見ると最後に結構びっくりする。 最後、突然サイコホラーみたいのにざらっと変貌する手口が滑らかで鮮やかでこわくて、子供がみたらトラウマになるよ、くらいの。

The King’s Breakfast (1963)    28 min.

A.A. Milne(Winnie-the-Poohのひとね。ねんのため)の詩が原作で、ある朝、王様が朝食の席で"Could we have some butter for The Royal slice of bread?" て聞いたことから始まる王宮内の騒動 - 女王からメイドから牛まで - を切れ目のないダンスとマイムと音楽とで不思議の国のアリス風に、カラフルに賑やかに繋いでいって楽しいったらない。
朝ごはん、こんなふうだったら毎朝楽しいのになー(殴)。

これ、普通にバレエ作品としても成立しそうだけど、調度や仕掛けや配色を考えていったら必然的に映画になっていったのかもしれない。それくらい映像作品としての完成度は高くて、今のWes Andersonがやっていることを先取りしている感すらある。


他には、同様に振付家でダンサーで映画も撮っているSally PotterとWendy Toyeの84年にTV放映された対話の抜粋(25 min.)とか。互いに師匠でも弟子でもないふたり、なぜ振付をするのか、なぜ映画を撮るのか、それぞれが自分の中で解と道を見つけて活動をしてきた/いるもの同士の気持ちよいくらいにぱきぱきした対話。

この後はBFIのキュレーターの2名による解説・紹介があって、Q&Aでは実際に生前のWendy Toyeと仕事をしたことがあるという客席の女性たちからのコメントがあって、とにかく前日に研修で入ったような人の名前まで即座に憶えて指示を出したり、こわいくらいに頭のきれるひとでした、と。

まだまだ知らないことだらけだねえ、勉強しないとねえ、と改めて。 このへん底なしだよね。

英国は9月11日になりました。 あの日も火曜日だった。

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