11.12.2011

[film] Brooklyn Boheme (2011)

9日、水曜日の晩、IFCで。 これも"NYC DOC"からの1本。 行けるところまでいってみよう。

ブラックミュージック関係のライターとして知られるNelson Georgeさんが自ら監督をして、BrooklynのFort Greene界隈に80年代~90年代末まで暮らしていた音楽家、アーティスト、これらボヘミアン達の肖像を関係者インタビューを通して描く。

Nelson Georgeさん自身が今もずっとそこに暮らしていることもあり、とっても地元愛に溢れたものであることは確かなのだが、それにしても出てくる人たちがすごい。

Spike Lee, Branford Marsalis, Rosie Perez, Chris Rock, Saul Williams, Vernon Reid, Talib Kweli, などなど。
映画には出てこないけど、ほかには、Erykah Baduとか、Jeffrey Wrightとか、Mos Defとか。

彼らはみんな同じエリアに住んで、作品をつくったりしつつ、それぞれがそれぞれに有名になって、去っていった。
そのあまりの集中具合に20年代のJazzが出てきた頃のハーレムが引き合いに出されたりするが、こっちは音楽だけでなく、映画も俳優も漫談もある、全方位で、しかも旧来からのコミュニティのような強い繋がりをベースにしたわけではなく、ケミストリーみたいのが働いて同時発生的に拡がっていったようなところがおもしろい。

存在として大きいのは、やはりSpike Leeと彼のプロダクション(が"Do the Right Thing"(1989) 以降ぐいぐい上がっていった頃)なのだが、それだけではない、変な磁場があったのだとしか言いようがない。

そしてインタビューされる全員が、暮らしていた当時がどんなに日々エキサイティングで楽しかったか、を楽しそうに語るの。
Rosie Perezさんとかは当時を思い出して涙を流してしまったりするのだが、でも、単にあの時代はよかった、だけの回顧では終わっていない。 全員が当時を振り返りつつ、なんであんなだったんだろ、とか感嘆しつつも、あくまで今を向いているかんじが気持ちよい。

ここで出てきたヒップホップ系の領域はそんなに詳しくないのだが、このエリアにあるBrooklyn Academy of Music (BAM)は93~96年頃、ほんとによく通っていたので町の雰囲気みたいなとこはようくわかる。 といっても当時はまだ十分おっかなかったけど。

で、このうねりは、90年代末の不動産バブルと地上げの波と共に消滅して、離れるひとは離れていってしまう。 ださい高層ビルが沢山建ちはじめて家賃がどんどん上がっていった時期。 でも、残るものは残るはずだし、ということでNelson Georgeさんは今も同じところに暮らしている。

Vernon Reidさんが言っていたBlack Nerdの話がおもしろかった。要は、マッチョではない、黒縁メガネの文系の、でもブラック、という異端な連中が登場しはじめたのはここで、まさに自分もそういうひとりで、その流れは今もTV on the Radioとかに引き継がれているのだ、とか。 なるほどなー。
それを言うと、この映画に出てくる連中はみんなそんなかんじかも。強引にのし上がっていくタイプじゃない。 みんな結構神経質で、でも言うことはいうし、やることはやってすたこら逃げる、みたいな。

上映後のトークでは、Nelsonさんと、あとVernon Reiddさんとかも参加してなかなか楽しかった。

どういうかんじかというとだな、夜中に飲み物を買いに出るとするでしょ、そうすると、みんなどこにだれが住んでいるか知っているわけ、で、ちょこちょこのぞいてみたりすると、みんなリハしたり創作したり勉強したりしている、なので自分もなんかやらなきゃなー、と思うわけよ。 とかね。

あと、Erykah Baduさんがはじめてみんなの前でパフォーマンスをしたときの話とか。

これは映画の本来のテーマからは外れてしまうのだろうが、川向こうのNYのダウンタウンシーンとの関係(バスキアは一瞬出てくるけど)とか、エリアは違うものの、Brooklyn育ちの白人たち - Jonathan LethemとかNoah Baumbach とかはどうだったんだろ、とか、いろいろ広がるよね。

Nelson Georgeさんは、12日の土曜日、Museum of Moving Imageで行われる、"We Gotta Have It: The 20th Anniversary of the New Wave of Black Cinema"ていうイベントのKeynote address もやるの。 これもぜったいおもしろいんだけどなあ。

http://www.movingimage.us/visit/calendar/2011/11/12/detail/we-gotta-have-it-the-20th-anniversary-of-the-new-wave-of-black-cinema

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