9.25.2022

[film] The Shamrock Handicap (1926)

9月14日、水曜日の晩、夏休みの前日、シネマヴェーラのジョン・フォード特集で見ました。アメリカに向かう前だったのでひとり盛りあがる。『誉れの一番乗』。

ここに書いた2本は、どちらも2014年秋の京橋のフィルムセンター(当時)のMOMA特集で並んでなんとか見ることができて、大好きになったやつ。人も動物も大変な目にあいながら自分の誇りをかけて困難に真っ直ぐに立ち向かってなんとかしてしまう。今の時代、「誇り」って薄汚れたものに見えてしまいがちだが、それは畜獣にだって当然にあるもの。

そして、”7th Heaven” (1927)の、”Street Angel” (1928)の、”Lucky Star” (1929)のJanet Gaynorが出ているのであれば、見ないわけにはいかない。(最初に見たときはまだ知らなかった。”Lucky Star”なんて、この作品を煮詰めたバージョン違いのよう)

アイルランドで由緒ある家柄のSir Miles O'Hara (Louis Payne)はみんなに慕われて妻のMollyと娘のLady Sheila O'Hara (Janet Gaynor)と召使いのCon O'Shea (J. Farrell MacDonald)と沢山の家畜とか最強の障害競走馬Dark Rosaleenとか、Con O'Sheaの友達の鵞鳥のブライアンと一緒に幸せに暮らしているのだが、だんだん生活が苦しくなって馬を手放さざるを得なくなっていく。

そういうのを横で見ていたアメリカの大金持ちOrville Finch (Willard Louis)が馬丁で騎手のNeil (Leslie Fenton)を一流の騎手にしてやろう、ってアメリカに連れていくことにして、恋仲だったSheilaとNeilは離ればなれになって辛いところに向こうのレースでNeilは落馬して大怪我を負ってしまう。

あーあ、ってなったところでアイルランドから一家揃って - 馬も鵞鳥も - がおおーい、って海を渡ってきて、地元では名士だったSir Milesの登場に現地のアイリッシュは熱くなって、次は名馬Dark Rosaleenのお出ましだ! ってなったところで騎手が怪我して、じゃあ僕が乗る - 僕ならできるから、ってNeilが馬に自分を括り付けて。この先は燃えるアイリッシュに火がついて爆走機関車になる。

ほんとはここで、あたしが乗る! ってSheilaが飛びだしてきたら最高なのだがそこまではむりだったか。

ラストは再びアイルランドに戻ったSheilaとNeilが四つ葉のクローバーのもとで愛を誓うの。フォードのアイルランド愛が炸裂した最初の一本。どこの国であろうがお伽話のように美しく正しいので文句つけようがない。

Kentucky Pride (1925)

9月11日、日曜日の昼に見ました。 邦題は『香も高きケンタッキー』。 上映のたびに売り切れいるようだからしばらくの間、ずっと上映しておいてもよいのでは。それだけの価値ある映画だし。教育にもよいし。

馬映画なのでIMDBのTop Billed Castも馬が最初に並んでいる。

馬小屋で誕生した時から馬丁のDonovan (J. Farrell MacDonald)と馬主のMr. Beaumont (Henry B. Walthall)から、こいつは絶対すごい馬になるぞ! って期待されてたっぷりの愛を注がれて育った牝馬Virginia's Futureは、すくすく育つのだが、後妻に裏切られてだんだん財がすり減ってきたMr. Beaumontの今後がかかった最後の勝負レースで怪我をして、でもなんとか殺処分はまぬがれ、ひどいやくざ3人組の元に売られて酷使され、Mr. Beaumontも平民に落ちぶれて、でもVirginia's Futureの娘のConfederacy(.. 連合国)はすばらしい馬に育ってレースの時を待っていた…

楽しくて輝いてて怖いもの知らずだった幼年期からの挫折と苦難、因果を乗り越えてみんなの期待と未来を背負ってぶっ飛んでいくConfederacyの勇姿にじーんとなるのはもちろん、街角でぼろぼろのVirginia's FutureとよれよれのMr. Beaumontが一瞬すれちがう時の切なさとか、馬の声が頭のなかにわんわん響いてきてドリトル先生になったかと思うよ。

これはディズニーみたいに馬を擬人化したドラマ、ではなくて、”The Shamrock Handicap”もこれも、アイリッシュも馬も、ひと続き/連なりの共通の感情や情動をもったファミリーとして描いていて、そういうのをなんの説明もなく、ギャップも違和感もなく手に汗握れてしまうのがすごい。これを大上段に「メッセージ」のように振りかざすのではなくて、こう来たらこう来るだろ? なあ? って機械工のようにさくさく作って見せてしまう。これがあるから、ジョン・フォードは何見たっておもしろいのよね。


今日みたいな陽気が続いてくれたら、なにがあっても我慢するしがんばるし。 でも国葬だけはだめだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。