9.29.2022

[film] The Lost Patrol (1934)

9月25日、日曜日の昼、シネマヴェーラのジョン・フォード特集で見ました。(パート2はぜんぜん見れていないので泣きそう)

邦題は『肉弾鬼中隊』。 戦争アクションでこのタイトルなので、肉が弾け飛ぶなか鬼のようになった中隊の殺戮地獄絵巻が展開されるのかと思ったのだが、そういう泥臭いのではなかった。(砂漠なので泥ないし) 原作はPhilip MacDonaldの小説 – “Patrol” (1927) - 彼自身の従軍経験を元に書かれたもので、脚本はDudley Nichols。 女性がひとりも出てこない - まあそうか。

第一次大戦中のメソポタミアの砂漠を英国の騎馬小隊が行軍していて、兵を率いる馬上の中尉がひとり、砂漠の真ん中でどっちかなー、のように様子を伺っていると「ちゅん」て小さな音(音だけだと素敵な)がして馬から落ちてあっさり死んでしまう。

残された軍曹(Victor McLaglen)を含む11人は慌てて、なぜなら中尉だけがどこに行ってなにをするのか、地図と指令を頭のなかに握っていたからで、でもとにかくここにいては危険だから、と全員で砂漠を渡っていくと突然オアシスが現れて水とヤシの木と廃墟のように打ち棄てられた石の建物があり、馬も人も喜んで水を飲んであびて、裸になって寛いで少しだけ希望と安らぎが。

だったのだが、夜の間に見張りが殺されてて、ひとりが怪我を負ってて、馬をぜんぶ盗まれてしまう。馬なしで砂漠を行軍するのは自殺行為なので、ここで見えない相手をどうにかするしかない。そういう極限状況のなかで、悲観するもの楽観するもの諍いするものいろいろで、軍曹はくじで2名を選んで徒歩で町まで向かわせて救援を頼もうと、ついでに隊員たちの家族への手紙を託すのだが、晩に彼らの死体が馬に乗せられて静かに返されてきて、絶望が更に深まる。

敵らしき者たち(でも彼らが本当の敵なのか単に殺したいだけなのか、は不明)は最後の最後までわからないので、「戦争」でのやりとりや経過、酷さを描く、というよりは追い詰められた兵隊ひとりひとりが死の恐怖と向かい合って諦めたり慟哭したり熱中症になって幻覚を見たり狂ったりしていく様を描いていて、そういう点では災害やパニックで追い詰められて死ぬ/生きるドラマとそんなに変わらないのかもしれない。それか、西部劇で、見えない原住民の襲撃に曝されているしんどさ過酷さ、が砂漠のまんなかで、イギリス人の男たちのドラマ(でもそんなに男男して歯を食いしばったり拳を振りあげたり、みたいなうざいシーンはない)として展開される。

一度だけ、飛行機が飛んできておおーい、って手を振るとパイロットも気づいて降りてきて、着地してやあやあ、って笑顔で機から降りてきちゃって、だめーって全力で言ったのに3秒で撃たれて倒されてしまう。ここって笑っちゃいけないのだが余りにあっさり消えてしまうので漫画みたいだったり。(全体に、「ちゅん」て音がしたらころん、てその場で動かなくなってしまうケースが多くて、その動きのあっけなさがおもしろい。馬がいないとこうなってしまうのか)

元は敬虔なキリスト教信者で、亡くなった兵の埋葬やお祈りをしながら、狂気に落ちていくBoris Karloffが怖すぎて英国/ヨーロッパホラーとか表現主義系の香りが濃い気がして、でも背景は砂漠の陽射しかんかんなのでそのミスマッチなところも不思議、というか、どんなに明るくても人はおかしくなる、戦争をやっている只中に、どっちみちまともな人なんてそうはいないのだ、とか。

最後、軍曹以外はみんな砂の下にいなくなって、彼自身もほぼ狂ってしまったようなところでようやく味方の軍が現れる、という残酷さ(ホラー)。なんでこの状態になってから来るのか、この状態でひとりだけ帰還してどうしろというのか – もちろんその叫びもどこかに届くことはなくて、届かないので何度でも、いくらでも繰り返されていくに違いないの。

続編では、砂の中に埋められていたBoris Karloff(なぜか包帯つき)が月の晩に蘇ってひとりまたひとりと…

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