9.10.2022

[film] Funny Pages (2022)

9月6日、火曜日の晩、米国のYouTubeで見ました。A24のcoming-of-age コメディ。
作・監督はこれがデビューとなる17歳のOwen Kline 、Noah Baumbachの”The Squid and the Whale” (2005)で子供時代のJesse Eisenbergを演じていたのが彼。

高校生のRobert (Daniel Zolghadri)が学校で美術教師のKatano (Stephen Adly Guirgis)とRobertの今後の進路とかアートについて議論している。 手元にあるKatanoやRobertの作品はRobert Crumb/根本敬ふうのエロ・グロみたいなあんま品のよろしくないでろでろのカトゥーンで、大学に行って勉強を続けるのか、そちらには行かずに自力で精進していくのか、やれる/やれないみたいな話から熱くなったKatanoがじゃあこの俺を描いてみろ! って裸になってパンツも脱いで台の上に立ったら、もういい! ってRobertは教室を飛びだして、車で追いかけてきたKatanoと口論していたらKatanoは車をぶつけてあっけなく事故死してしまう。

師匠の死で動転したRobertは彼のアトリエに忍びこんで彼の作品を盗みだそうとして捕まって裁判にかけられて、堅気の両親(Josh Pais & Maria Dizzia)は嘆いて、漫画を続けるのはいいけど、せめてカレッジだけは出ておくれ、と懇願するのだがRobertはきかずに家を飛びだして、実家のあった高級住宅地のプリンストンから危険地帯トレントンのみるからにやばそうなアパート? - 家主のBarry (Michael Townsend Wright)の家の地下で窓がなくて湿気もうもうで水槽の魚が茹だってて、家主も含めて部屋も分かれていなくて怪しい同居人もいる、そんなところで暮らし始める。

仕事は自分の裁判のときに弁護してくれたやさしいCheryl (Marcia DeBonis)のいる地方検事局で、やってくる依頼人の口述をタイプするバイト - そこに現れる連中の似顔絵を描くのも修行 - とおたくの巣窟のようなコミックストア(ああいうの、あった)でつきまとってくる友人のMiles (Miles Emanuel) - ぼさぼさ髪、すごいにきび - の相手をしたりしながらレジとか在庫を見たりうだうだ過ごしたり。

そんなある日、Cherylのところに地元のRite Aide(ドラッグストア)で暴力沙汰を起こして裁判になっているWallace (Matthew Maher)が現れて、言動も挙動もめちゃくちゃ不安定ですぐにキレるタイプで目を合わせるだけでやばそうなのだが、彼の経歴が有名なヒーローもののコミックを描くスタジオのcolor separatorであったことを聞いて、実際にコミック本に彼の名前があることのを発見すると、彼に教えを乞おう、って近寄っていくと…

冒頭からRobertは自分がずっとひとりで描いてきたものについて、好きで描いてきたのに周囲にきちんと(いいじゃん、くらいは言われるけど)認められていない/認められたい、って思っているようで、そこに現れたWallaceは商業的には成功したところにいた人なので、Robertからすればすごい人、なのだがWallaceからすれば自分のやっていたことはアートでもなんでもないんだ、って。このギャップが双方の溝をだんだん深めていって、あまりになにもかも異常すぎていられなくなった湿気ハウスから逃げるようにして戻った実家でのクリスマスにWallaceを招いたところ、いろんな惨事が巻き起こって連鎖していって止まらない。 Robertはどこまでも必死でがんばっているので笑ってはいけないと思いつつも、あまりに変な方に話が転がっていくので、笑うしかない。

アメリカン・コミックの世界を知っていれば更におもしろくなったのかもしれないけど、知らなくてもRobertの微熱でうなされたようにコミックにかける前のめりの思いと、それが誰にも受け容れられず空回りして気がつけば自分のまわりにいるのは変な人ばかり、という事態はなんとなく把握できて、そしてこの映画に登場するのはRobertの両親を除けば、外見も含めてものすごい変人ばっかり(よくキャスティングしたねえ)で、それ自体がコミックになってしまっている - そしてRobertはそういうのを実際に描いているので - これはこれで十分におもしろいものになった。コミックをベースにした、というよりも主人公の頭のなかのぐしゃぐしゃがコミックとして現実に流れだして、どうしたものか、になってしまうなんともいえない怖さ。

音楽はSean O'Haganで、明らかに彼だ! っていう音とかメロがちらし寿司のように散らされていてたまんない。

あのラストはやっぱり“Call Me by Your Name” (2017)を意識している?

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