9.05.2022

[film] All My Friends Hate Me (2021)

8月30日、火曜日の晩、BFI Playerで見ました。友達いないので参考になるかと思って。
なかなかおかしく、怖い – 近寄れないとこも含めてとっても英国的な怖さ。監督のAndrew Gaynordはこれがデビュー作となる。

Pete (Tom Stourton)は難民キャンプのボランティア活動から戻ったばかりで、31歳の誕生日を大学の同窓生が祝ってくれるというので10年ぶりに彼らと再会すべく旧友のGeorge (Joshua McGuire)がデヴォンの方に持っているカントリーハウスに行く。そろそろプロポーズしたいと思っている恋人のSonia (Charly Clive)は後から来るというので、ひとり車で向かう - “What a Fool Believes”なんかを流しながら - のだが、途中犬を繋いで停まっている車から変な男が出てきたり、道を尋ねたら相手はすごく変わった老人だったり、来るまでに結構消耗するのだが、とりあえず館には辿り着く。

館に着いてもがらーんで誰も出てこなくて、居間で延々待たされて、ようやく現れたのはGeorge夫妻と昔からの友達とかつての恋人のClaire (Antonia Clarke)と、あと彼らが地元のパブで会っておもしろい奴だから連れてきた、というHarry (Dustin Demri-Burns) – ちょっと苦手っぽいのでやだなあ、ってかんじ。

道中で疲れた、というのもあったのかもしれないが、自分は嫌がらせされている? というくらいに苛立ったりうんざりしたり、えっ? となることが続いて、でも実際には「冗談~」だったり過度な思い過ごしだったり、昔から知っている仲なので、昔から延長の冗談なのかもしれないし、自分が少し鼻持ちならない大人になってそういうおふざけを許容できなくなっているのかもしれないし、でも酒を呑んでわいわいしている分には楽しいからいいか、になったり。その辺をぐるぐる回っていって、全体としてはやはりなんか疲れているのかもな、と。

でも一日経ったあたりで、「あんた、みんなからすごく嫌われているよ」とか裏で言われてがーんとなって、かといってどうすることもできず、でもそうしたら友人たちが言ってくることやってくることなにもかもが「嫌な自分」の嫌なところをめがけてやってくる気がして、疑念と不安のぐるぐるが止まらなくなっていく。

イギリス流の(階級)ジョークの泥沼、に嵌ったのかそのジョークを次々に仕掛けられている(なんのために?)のか、Peteのただの思い過ごしと言えるのか、Peteは10年前より本当に嫌な奴になってしまったのかもしれないし、Peteの頭のなかには”All My Friends Hate Me”という文言がずっとこだましている。

で、彼の矛先というか疑念はそもそも「友達」でもなんでもなかったHarryの方に向かい、Soniaもいる前で修羅場が展開されたりもするのだが、そこでさらにでんぐり返られたりいろいろあって大変。なんでこんな目に遭わなきゃならないのか。

同窓生とか昔馴染みの人との付き合いとか距離の取り方とか面倒だなあ、というあたりと、更には、10年会っていない間に自分はどれくらい老いて変わってしまったか、どれくらいかつてのままで変わっていないように見えるのかを答え合わせのように審判を受けたり確認させられたりせざるを得ない身悶え&ホラー - をうまく突いた脚本 - Pete役のTom StourtonとTom Palmer – “Totally Tom”っていうコメディデュオでEdinburgh Festivalに出たりしているふたりが脚本を書いている - で、舞台で上演してもおもしろいかも、という気はした。

全体として画面の暗さ、人物の顔の捉え方、シンセを中心としてJohn Carpenterみたいに鳴る音楽(Will Lowes & Joe Robbins)は明らかにホラーのそれで、いつ殺戮が始まってもおかしくないテンションにまみれていて、実際それに近い場面もあったりするのだが、最後まで油断ならないきりきりした状態とか瞬間をうまく捕まえている。これが閉鎖的な村の中で起こったりすると間違いなく血みどろのフォークホラーになるし、日本の場合だと「村八分」っていう専門用語がある。

でもこの作品はそこまで行かずに、鳥肌に近いところのあるねえ、みたいな日常の恐怖と乾いた笑いをうまく抽出していると思った。やっぱり友達とかいいや、ってなったりしない? … しないか。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。