5.26.2022

[film] They Drive by Night (1940)

5月19日の昼、Criterion ChannelのIda Lupino(役者)特集で見ました。
『夜を走る』を見た後だったので、程度。邦題は『夜までドライブ』。

監督はRaoul Walsh、原作はA. I. Bezzeridesの38年の小説- “Long Haul”で映画化された後にタイトルを映画と同じに変えたそう。 関係ないけど、Nicholas Rayのデビュー作は”They Live by Night” (1949)。

Joe (George Raft)とPaul (Humphrey Bogart)のFabrini兄弟はふたり交替で運転しながら深夜のトラック便で青果とかを運ぶのをやっていて、いつかは自分たちで独立しよう、って夢見ているのだが日々の仕事はしんどくて故障は起こすし仲間も居眠りで事故を起こして焼死したりしているし、結婚しているPaulの妻はもうこんな仕事は辞めて家にいて、ってずっと言っている。

立ち寄った市場の集積所でかつての仕事仲間の、今は自営のトラック会社を経営しているEd (Alan Hale)と再会して、彼からは一緒にやらないかって誘われて、借金を返すお金を貸してくれたりする。のだが、その夜のドライブで居眠りをしたPaulは事故を起こして、彼は右腕を失ってトラックも大破してしまうの。

こうしてやむなくJoeはEdの会社に雇われることになって、かつてJoeのことを好きだった Edの妻のLana (Ida Lupino)はその立場を利用してやや強引に彼に近寄っていく。でも仕事の途中で知り合ったCassie (Ann Sheridan)と仲良くなっていたJoeは相手にしなくて、イラついたLanaはパーティの後で酔い潰れてへなへなのEdと彼入りの車をガレージに入れる時、衝動的にシャッターを閉めて - 赤外線で自動で閉まるやつにしていた – 彼を一酸化炭素中毒で殺して、事故死ということにして、会社の立場とか恩とかを束にしてJoeに近寄っていくのだが..

George RaftとHumphrey Bogartが兄弟であれこれ言い合いながら薄汚れたトラック野郎を演じているのがおもしろいし、George Raftに正面から絡んでいくIda Lupino(このとき22歳、Raftは39歳)の突っぱりっぷりも素敵。ここでの彼女は憎まれ悪役として堂々としているのだが、ずっと想っていたJoeにふられてしかたなく酔っ払いの傲慢なEdと一緒にならざるを得なくてあんなにも拗れちゃったかわいそうな女、っていうのが透けて見える – それくらに余裕があって見事だった。

そういうのとは別に運転手仲間でどこのドライブインに行っても無邪気にピンボールをやり続けているIrish (Roscoe Karns)とかもよくて – あんなふうになりたいなー、って。


Moontide (1942)

5月12日、木曜日の晩、これもCriterion ChannelのIda Lupino特集で見ました。

監督は当初Fritz Langで彼が離れた後にArchie Mayo。邦題は『夜霧の港』。 原作はWillard Robertsonの小説”Moon Tide” (1940) - 小説のエンディングは結構ちがうって。Jean Gabinのアメリカ進出を狙ったものだったらしい。ダリが酔っぱらってらりらりするシーンで協力しているって。

港湾労働者でどこかから流れてきたBobo (Jean Gabin)がいて、酒場でかつての仲間らしいTiny (Thomas Mitchell )とかPop Kelly (Arthur Aylesworth)とやりあったり飲め飲めー ってはしごしたりして、気がついたら記憶なしで海辺の漁師小屋に転がってて、漁師のTakeo (Victor Sen Yung)があんた憶えてないだろ、ここにいていいよ、っていうのでしばらく勝手に住ませてもらうことにして、そしたらある晩、浜辺から海の沖の方にふらふら浸かって進んでいく女性が目に入ったので救いあげる。彼女はAnna (Ida Lupino)と名乗って始めは自棄でぼーっとしていて冷たいのだが少しづつBoboと打ち解けていく。 この話の横で彼が酔っ払った晩に締め殺されて発見されたPop Kellyを殺したのは自分なのではないか - 憶えてないけど – というBoboの周りで彼の過去も含めて何かを知っているらしいTinyとか、彼とAnnaを助けたりするNutsy (Claude Rains)とか、事件の行方とふたりの仲はどうなる? っていうノワールとrom-comが混ざったようなやつなの。

どこかから流れてきた酔っぱらいの男と、どこかに流れようとしていた孤独な娘が近づいていって、周りのよい人たちがみんなで支えようとする - いろいろあるけど最後はよかった、になるのでよかった。

欧州の野獣のような匂いがきそうでみっしりした体躯のBoboの横で海から救いあげたAnnaがぽわぽわの髪の毛でふぬけた棒のようになっているところとか、彼女がBoboに目玉焼きを作ってあげて彼がおいしそうに食べるところとか、真ん中のふたりがすばらしく絵になる - Ida Lupinoって横にどんなクズや変態の男がきても絵になる - 絵にしてしまうのって、やはり彼女がずば抜けたなにかを持っているからではないか。


滅入ることが多いねえ。なんで人を殺すのだろうか。

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