4.21.2017

[film] Mad to be Normal (2017)

9日の日曜日の夕方、AldgateのCurzonで見ました。
新作映画なのだがなぜかふつうに公開されないようで、この映画館のみ、この日の午後の2回、監督と主演のDavid TennantさんのQ&A付きのと挨拶のみのだけで、でもどっちもSold Outしていて、見たのは挨拶のみのほう。

精神科医R.D.レインが60年代にロンドンの東につくった患者たちと医者(レイン)が共同生活しながら治療をしていくコミュニティ施設 - Kingsley Hallでの日々を綴ったドラマで、R.D.レインのお話だったら見なきゃ、ということで行った。座席にはMental Health Foundationていうとこが発行している”Good mental health for all” ていう小冊子が置いてあったけど、いや、こういうの見にくるような人たちはぜんぜん平気なのでは(← ていうやつがいちばん)。

お話はKingsley Hallでの臨床ケースがいろんなとこで評判になりつつあったR.D.レイン(David Tennant)と彼の周りに集まってきたいろんな協力者とか敵とか患者とかとのいろんなエピソードなどを追っていく。 彼のところに押しかけてくるElizabeth Moss、患者のMichael Gambonとか, Gabriel Byrneとか、うまい人たちで固めているのであーあ、みたいなふうにはなっていない。

監督・原作のRobert MullanさんはTV用のドキュメンタリーのほかに、同名の本"Mad to be Normal: Conversations with R.D. Laing" (1995) を始めとしてレイン関連の本を書いているひとなので中味に関しては何の問題もない、ていうかむしろ、あえて学問寄りの内容にならないようにがんばりすぎてレインの目指したところが見えにくくなってしまったのではないか、とか。レインをよく知らないひとがこれ見たらタバコ吸うしドラッグやってるしすぐ子供つくるし喧嘩っぱやいし、ただ規格外なだけのやばい医者にしか見えないかも。

今の学校や若い人たちの間でどれくらいレインが読まれているのかいないのか、ぜーんぜんわからないのだが、SNSとかで強制的に繋がることを強いられている - 結果としてその輪から排除されてしまうことへの病的な畏れがある、のを見たり聞いたりすると(いや、わかんないけどね、これもまた目くらましかもしれない)、あんま読まれていないのかなあ、と思ったりする。

レインやベイトソンを10代の頃に読んでいなかったらしんでいた、ていう人は多い(自分もそう)と思うが、彼らは心の病を内面の疾患ではなくコミュニケーションの病と置いた。コミュニケーションていうのは親子のそれだったり教育のそれだったり、或は言語(構造)そのものだったり、要はぜんぶ自分ではないそいつらのせいにすることができた。 そういう考えのパスがどれだけ自分を楽にしてくれたか、「ふつう」とか「あたりまえ」といった線引きの思想がどれだけ他者を傷つけ自身をも抑圧してしまうものなのか、あるいは、ひとを好きになればなるほど「自分」は壊れていくものなんだとか、知っておくだけでも違うと思うんだけどなー。

「ダイバーシティ」とやらがこれだけ叫ばれなきゃいけないのも、「ふつう」とか「標準」といった思想、それをベースとしたコミュニケーションへの過信・盲信がしょうもなく浸透して壁を作ってしまっているからだと思うの。「コミュニケーション」だの「繋がる」だの、詐欺とかウィルスとかみたいなもんだからね。 それらを当然のように強いてくる連中のほうが狂ってるんだからね。
(ダイバーシティそのものを否定するもんじゃない - ていうかそれが常態なのだ、ということはねんのため)

Kingsley Hallは結局閉鎖されて患者たちは出ていかなければなりませんでした、というキャプションと共に映画はぷつりと終わってしまうのだが、いやいやそうじゃなくて、レインの思想は明らかに(万能ではなかったにせよ)多くの人を救ったのだし、いまもその可能性に溢れているんだし、ていうことはちゃんと伝えてほしかったんだけどなー。

Elizabeth Mossさんは貫禄としか言いようがないすばらしさで、あとGabriel Byrneのオカルトっぽい狂いようはそれ既にどこかでやってるでしょあなた、みたいなやつだった。


これのあと、晩の8時からPrince Charles Cinemaで”Interstellar” (2014) の70mm版ていうのを見た。
日本で公開されたときも有楽町で35mmのを見てあーら素敵、と思ったのだが、70mmはさらに素敵になる。 これって宇宙は塵と埃と本棚のなかから生まれる、みたいなやつなのだが、70mmだと塵の塵感が更にものすごくてマスクしたくなるくらい。
ブラックホールとか理屈のところはぜんぜんうさんくさくてわかんないのになんでか感動してしまうのも不思議で。終わってロビーにでると黒縁メガネの女の子たちが、なんかわかんないのにいつも泣いちゃうのよー、あーあたしもー、とか抱きあっているので微笑ましかった。


BBC2のJools Hollandの番組にChristine McVieさんが出てるよう。

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