4.07.2017

[film] Bird on a Wire (1974)

1日の土曜日の夕方、barbicanで見ました。なんでかこの一回きりの上映。
Leonard Cohenの72年のヨーロッパツアーを記録(ライブは20箇所をまわって、うち4〜5箇所で16mm撮影)したドキュメンタリー。 長いこと失われたものとされ、海賊版が出回っているのみだったが2009年、西海岸の倉庫で296個の缶からが発見されて、時間をかけてリストアされたもの。

上映前に監督のTony Palmerさんのお話があって、なかなかおもしろかった。
71年にこの映画の企画をLeonard Cohenのところに持っていったとき、彼はまだアルバム3枚を出したばかりで、しかもレコード会社とは契約更改の時期、つまりは契約が存在しない状態でこういうフィルム撮りをすることのリスクとか、そもそも彼自身が自分のライブにぜんぜん自信を持っていなくて自分の声も嫌っていたりとかいろいろあって、許可が貰えるとは思えなかったのだが、監督が60年代初からずっとLeonardの詩集を読んでいるとか粘り強く交渉して、しばらくしたら許可がでて、4名のカメラスタッフがツアーに同行することとなる。

フィルムが完成したあと、Leonardが自宅で見たいというのでフィルムを送ったらそれを最後にフィルムは行方不明になった。 それが2009年、Frank Zappaの”200 Motels” (1971) - これも監督の作品 - のフィルムをストーカーのように延々探し続けていたZappaのマネージャー(「すごく嫌なやつでいまだにだいっきらいだ」)から突然電話があって、ついに"200 Motels"を見つけたと、さらにZappaの缶の隣になんかいっぱい積んであるんだけど、と言われて行ってみたら、それがこれだった。
ZappaとLeonard Cohenのフィルム缶が並んで放置されている倉庫… どんな臭いがしたのかしら。

あと、DVDのジャケットは、鳩サブレ… ではなくてピカソの鳩の絵が使われているのだが、ピカソの絵がそういうのに使われることをピカソ財団は一切許していないのに、この作品に関してはなんで許可がおりちゃったのか、とか。

生前のLeonardもこの修復版を見て、一応認めてくれたのでこれが晴れて決定版になりました、と。

で、フィルムなのだが、まあすごい。
ライブシーンをずっと撮っているわけではなくて、オフステージとライブで半々くらい。髭剃ったりシャワー浴びたりプールで泳いだりインタビュー受けたりツアーメンバーとくつろいだり、夜を一緒に過ごしたいと誘ってきて頑と動かないファン(見るからに)の女性との会話とか、PAの調子が悪くてよく聞こえなかったから金を返せとバックステージにやってきた陰険な客への大人な対応とか、ツアーの最後、テルアビブの楽屋で涙ぐむところとか、当時のLeonard Cohen完全密着レポ、と言ってよい特濃の内容。

ライブのほうは、女性コーラス2名(うちひとりはJennifer Warnes)、アコギ2、ベース、ピアノオルガン、6名のバックによるアコースティックで、なんというか、完全にやられてうちのめされてしまう。
このひとはこんなふうに歌うのか、こんな目つきで、こんな鼻の線をして、こんなふうに息をしてこんなふうに語りかけるのか、と。
“Suzanne”も”Sisters of Mercy”も”The Partisan”も”Chelsea Hotel”も”So Long Marianne”も”Bird on a Wire” (これがラスト)も、既にリリースされていたこれらの曲を丁寧に歌って流していくのだが、初めてこれらを聴いたような気が、何度もキスしているのに初めてキスされたようなかんじがした。 45年前の彼が湛えている真摯さ、親密さ、弱さを隠そうとしない強さ、これらの熱がダイレクトに伝わってくる。 同時期に撮られた有名なライブフィルムとして"Ziggy Stardust and the Spiders from Mars" (1973)   - Bowieの凄さがあまり伝わってこないのであんま好きじゃないけど - があるが、あそこで放射されている熱と比べても全く遜色ないかんじ。 あるいは例えば、雰囲気が似ているだけでぜんぜん違うのかもしれないけどLou Reedの"Transformer" (1972) とか。

例えば、人生を変えてしまうライブがあるとしたらこういうのだと思うし、こういうのがあるからライブに行かねば、と思うの。
フェスに行くのは楽しいし、別にいいけど、こういう出会いってあんまないかんじがする。

終わってロビーに出ると監督ひとりで立ったままDVDを売っていたので、買ってサイン貰った。
ボーナスディスク付で、表紙がピカソの絵で、£15なんて安すぎる。(プレイヤーないけど)

でもこれは映画館の大きな音で、みんなで寄り添うようにして見たほうがよい映画。

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