4.19.2017

[dance] Merce Cunningham / William Forsythe

ドイツにいます。ホテルのTVでやっている”The Simpsons”がドイツ語吹き替えでへんなかんじ。

15日の晩、パリ・オペラ座バレエ団をPalais Garnierで見ました。
最初は売切れがついていたので無理かなーだめだったらパリ行くのやめよ、くらいでだらだらやっていたらそのうち案外簡単に取れてしまった。(入ってみたらまんなかのボックス席だった..)

この季節なのでクラシックの演目はやってなくてモダンなのはわかるが、それにしてもMerceとWilliamを組み合わせるもんかね、とか思って、でもやはり見てみたいよね。

最初がMerce Cunninghamのでその後で休憩が入る。
WilliamとカップリングするのであればMerce後期のやたら複雑に錯綜した(でも全体はミニマルで穏やかな)群舞あたりかしらと思っていて、でも開演前に貰ったリーフレットを見たら"Walkaround Time"とあるのでちょっと待てこれってあれか、と白目むいて慌てたところで幕が開いてしまう。(演目くらい事前にチェックしておきましょう)

ステージ上にはMarcel Duchampの”The Bride Stripped Bare by Her Bachelors, Even” - 「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」(1915-23) の9つのオブジェ(Duchamp - Jasper Johns)が置かれていて、その周りで薄い色の異なる全身タイツ(これもJasper Johns)に身を包んだ9人の「独身者」たちが一見ランダムに見える、でもなにかに統御されているかのような動作を重ねていく。

Jasper Johnsがこのセットを作ったときの経緯とかはここに。
http://www.nytimes.com/2013/01/08/arts/design/jasper-johns-speaks-of-merce-cunningham.html

68年にNYで初演されたMerce Cunninghamの、というよりモダン・ダンスの、というよりモダン・アートの、記念碑的な作品。これの4時間くらい前、Centre Pompidouで100周年となる便器アーカイブの小展示を見て、これであとはMOMAを制覇すれば100年便器の旅は完結するわ、とか思ったのだが、Duchampが打ちこんだ小さなヒビは100年を過ぎて再び広がりつつあったりするのだろうか。

音楽はオーケストラピットにエンジニアぽい人がふたり(一人はおそらく作曲のDavid Behrman?)、最初は砂利の上を歩く音が、それから自動車のエンジン音が楕円の弧を描く客席のまわりをぐるぐる回っていくのがやたら面白く、更にオリジナルの舞台にもあった「幕間」 - ダンサーたちはステージ上で適当にだらだらする - のレディメイド(再演)もレコードプレーヤーで7inchを廻して(ほんとに音を出していたのかは不明)ノスタルジックな音楽と共に再現していた。

しかしこんなのよく再現しちゃうよなさすがだなー、ととっても興奮して見ていたのだが隣りに座っていた小さなお嬢さんにはありえないくらい退屈だったようで頬杖ついてママのほうを何度も何度も振り返り、ママもとっても困ったふうで休憩が明けたらいなくなってた。

やっぱし「独身者」の機能役割とか「機械」とか「さえも」とか、Duchampがあの退屈な大作に仕込んだいろんな「意味」とかその透過とか反射とかがわかんないときついかも - いやでも虫みたいな動きとか、緩慢さ退屈さも含めて新鮮でおもしろいとこいっぱいあるじゃん、とか思って見ていた。 偶然だったけど、見れて幸せだった。

後半はWilliam Forsytheの小品ふたつ。

最初の”Trio” (1996) は、ヴェルサーチのぎんぎんちんぴらドレスを纏った3人のガラ悪そうな男ふたり女ひとりが、衣装をめくって体の傷跡自慢みたいのをやりながらベートーヴェンの流麗な弦にのって小競り合いみたいな威張り合い威嚇みたいなどんなもんだい!ダンスを重ねていく。コミカルでおもしろいし、動きの難易度もすごいと思うものの、衣装のせいか畳み掛けるような突っこみ合いのせいかレッツゴー三匹、のような名詞が浮かんでしまったりもするのだが、それでもぜんぜんよいの。

つぎの”Herman Schmerman” (1992) は、最初に男女5人(男2、女3)がこれぞForsytheとしか言いようのないクラシックの流麗さとモダンのシャープネスをタンゴかカンフーか、の勢いでミックスしたような、息を詰めて見てわー、となるしかないやつで、その後に短い男女のDuoで終わるのだが、人数構成が変わっても絡み合いのテンションは持続して全く落ちなくて、それはいったい何処からくるのかしら、なのだった。

会場のPalais Garnierはなんかすごかった。 Metropolitan Opera HouseともCovent Gardenとも格がちがうかんじだった。アイスクリームも売ってないようだったし。

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