12.05.2010

[music] Peter Hook presents "Unknown Pleasures" -Dec.3


12/3の金曜日の晩は、Irving PlazaでKilling Jokeもあって、どっちにすべきか直前まで悩んでいて、結局こっちにした。

Killing Jokeはたぶんこれからもだいじょうぶだろうけど、この企画はPeter Hookの気まぐれに近いものだろうし、Ian Curtisの没後40年(今回のは没後30年企画)に彼が同じことをやるとも思えないし、それまでに世界はなくなっているかもしれんし、とか。

でも、あんまし期待はしていなかった。だってねえ…

だがしかし。 それはまさに、"Unknown Pleasures"であった。
我々は未だ本当の快楽をしらなかったのだ。 そして、それを知ってしまったのだった。
よくもわるくも。

開演は前座なし8:00のはずだったのだが、張り紙があって、8:30からFilm Screeningで、9:00からLive、とあった。

で、8:30に客電が落ちて、前方の分割スクリーンでDVD映像(フィルムじゃないじゃん)が流れはじめたのだが、音も画像もつっかえて動かなくなってしまい、大ブーとなった。何度かのトライの後でようやく始まったのだが、要は当時のFootageやインタビューの寄せ集め(あと映画"24 Hour Party People"からのとか)で、音も編集も雑だし、知ってる内容ばっかしだし、みんな更にぶうぶういって無視してた。

その20分くらいの映像が終ってそのまま、なんでかKraftwerkの"Trans-Europe Express"のイントロがぐあーんと荘厳に流れるなか、バンドがでてくる。

バンドのThe LightsはPeter Hookさん以外は4名で、b.にStone Roses/PrimalのManiとかがいる。最初それを聞いたときは、ぐえーごりごり与太郎ベースが2台かよ、とおもったのだが、Peterさんがvo.に専念していることもあり、そんな、ぜんぜんわるくなった。 Maniが完全に小僧扱いされてへえへえしているのもおもしろかった。

Peter Hookの貫禄、というか凄み、というか居直り具合がすごい。
最近のクローネンバーグ映画に出てくる殺し屋とか、F.ベーコンの絵画の爆発する男みたいなかんじ。 これじゃもうBarneyと一緒にやることはないだろうな、というのが納得できる荒れっぷり。 それでもぜんぜんさみしくないのもまた。

1曲目は"No Love Lost"。EP -"An Ideal for Living"から。最近だとLCD Soundsystemがカバーしていたやつですね。
最初のほうは、"Unknown…"以前からのレパートリーで、これが6~7曲くらい。

4曲目(だったか?)が"Digital"。Peterさんは、思いついたようなとこでしかベースを弾かないのだが、この曲のイントロみたいな、ベースが出るとこはぜんぶとる。そこで鷲掴みにしてがっちり押さえていた。

まんなかくらいから"Unknown Pleasures"全曲再現で、たぶん曲順通りだった、とおもう。
アナログだとA面が"Outside"でB面が"Inside"だったので、そのへんは変えようがないのよね。 で、そのままB面最後までいっておわり。

Joy Divisionの音って、Vo.パートをのぞくと、ほんとはたぶんこういう音を出したかったんだろうな、というのを脳内で補正とか追加したりしながら聴いていることが多かった(なにしろへただからね)のであるが、このバンドのライブでは、かつてそうやって想定していた音がそのまま出ているように聴こえた。

そして、そうやって出てくる「現在」の音の生々しく力強いこと。
(Killing Jokeのフジでのライブでも感じたあのかんじ)

そもそも、Joy Divisionというのは、Jim MorrisonとIggy Popで、めちゃくちゃオトコ志向の、ごりごりにマッチョな音を目指していたわけで、その後のNew OrderがあそこまでBreakしたのも、BarneyとGillianの中性的なイメージがその辺をうまく緩和して聴きやすくしたからだとおもう。

それがこのバンドの音では、従来の志向通り、狙い通りにがりがりと出ている、というかPeter Hookのおやじ臭と共に、その勢いは更に加速され、硬度を増し、手がつけられない状態となってぼうぼうに吹いていた。

アンコール最後の2曲、Peterとバンド全員が一瞬動きを止め、目が遠くの空を彷徨ったその直後、暴発したかのように突然鳴りだした"Transmission"の冒頭のベースのとてつもない強さと速さ、そしてラスト、"Love Will Tear Us Apart"の冒頭、沼のようにどわーんととてつもない広がりでもって響いた(これもやはり)ベース(あまりのスケールだったのでつい笑いがでた)。

すでに何千回と聴いてきたはずのこれらの曲を、はじめて聴いたような気がした。

ああ、すべてはここからはじまったんだわ、というのがよくわかるライブであった。
そして、ここからなにひとつはじまらなかったこともまた、われわれはようく知っているのである。
 

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