12.06.2010

[film] La Femme Infidèle (1969)

ふんとに寒くなりましたわ。

土曜日は映画1本にライブ1本。

金曜日から、Lincoln Centerで"Night Moves: Claude Chabrol & Arthur Penn"という小特集が始まったの。

http://www.filmlinc.com/wrt/onsale/chabrolpenn.html

Chabrolの特集が組まれるのは当然として、Pennのほうはなんで一緒にまた? であったが、”the American filmmaker most directly influenced by the New Wave”ということらしい。 
いいけどね。見れるならそれで。

特集のタイトルになっている”Night Moves”というのは今回の特集でも上映されるPennの75年作品のタイトルでもあるのだが、両者の作品の特徴をうまく言い表しているような。
夜の闇のなかで、その向こうで、いつの間にか脳裏や心理に、人間関係に、あるいは生活の風景に、芝生の隙間に入りこんできて、"move"をうながす何かに常にFocusしていた、というところとか。

Chabrolが描いたそんな「フランス」の風景は「ヌーヴェル・バーグ」と呼ばれ、Pennが描いたそんな「アメリカ」の風景は「アメリカン・ニューシネマ」と呼ばれた。 のだよね?

Claude Chabrolのほうはできるだけ通いたいのだが、とりあえず1本だけ。

4:30から、69年の”La Femme Infidèle”を。
『不貞の女』。英語題は"The Unfaithful Wife"。フィルムはBFIから借りてきたものだったみたい。

立派なおうちがあって息子もいて、幸せそうにみえる一家の夫がMichel Bouquet(ペンギン走り)で、不貞を働いている鉄面皮の妻(あらためてすごいと思った)がStéphane Audran。どっちもおそろしく巧い。

夫はそれがわかっていて、妻も夫がそのへんを探っていることがわかっている。
それでも幸せな家庭はなんとしても維持されなければならず、その緊張はあるところからずうっと、しかしなんということのない日常のなかに差しこまれた形で、とにかく、ある。 
幸せっていったいなんなのかねえ。

そうして夫が不倫相手のおうちに乗りこんで行って、ふつうに会話してたと思ったらとつぜん相手を殴り殺して、遺体をシーツにくるんで車で運んで、沼に沈めて、家庭に平穏が戻ったかに見えた頃に警察がうちにきて、ここまでの流れは目が離せないのだがものすごく自然で、だから不自然で、その共存のありように、とにかくびっくりする。 いまの見た? いまのなんだったの? とかそんなふうに。

普段の日常に、唐突ではあるがごく普通に、「死」や「殺し」が紛れこんでいる、その抗いようがない流れのなかにある、「普通の生活」- 恋人がいて、家族がいて、お食事して、パーティがあって、とか、シャブロルの作品をそんなに見たわけではないのだが、そういう紙一重の怖さ、言いようのない怖さを描くのがうまいよねえ。

誰もが指摘していることだと思うが、この頃からすでに、D.リンチのはるかに先を行っていたとおもう。

特にラストのカメラの動きなんて驚異的。 あれ、まじで鳥肌たったわ。

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