7.01.2023

[film] Basic Instinct (1992)

6月22日、木曜日の晩、丸の内ピカデリーで見ました。『氷の微笑』

監督はPaul Verhoeven。アメリカの公開時に検閲でカットされていたシーンも含んでの公開30周年の4Kレストア版。いま配給権とかStudio Canalが持っているのね? 「サスペンスな女たち」特集を80-90年代アメリカ映画でやったら間違いなくリストされるであろう一本。

当時大ヒットした超メジャーな作品だったのに子供だったので見たことはなかった。
サン・フランシスコで引退したロックスターがセックスの最中にアイスピックでめった突きにされて殺される事件が起こり、殺人課の刑事Nick Curran (Michael Douglas)が呼ばれる。

被害者の近しい恋人で犯罪小説作家のCatherine Tramell (Sharon Stone) - 彼女の小説に全く同じ殺人シーンが出てくる - が簡単に線上に浮かんだので彼女の豪邸を訪ねて、こんなの楽勝じゃないかといろいろ調べはじめるのだが彼女は悠然と捕まえてみなさいよ、って自信たっぷりの態度で取り調べ中にタバコを吸ってボディを誇示し、小説のやり口と一緒だというのはシンプルな濡れ衣だと言い、ウソ発見器にもまったく引っかからないし、反発するようにいろいろ挑発してくる。でも調べていくと、彼女の家に暮らして同性愛的な関係にあるRoxy (Leilani Sarelle)や彼女が訪ねていくHazel Dobkins (Dorothy Malone)は過去に不可解かつ陰惨な殺人事件を起こしていること、Catherineの両親の事故死もなんか怪しくないか? など渦が渦を呼んで巻いて巻かれて。

他方でNickの方にも傷と弱点が晒されて、過去に誤ってツーリストを射殺してしまった事件のアフターケアというのか落とし前というのかで元妻で精神科医のBeth Garner (Jeanne Tripplehorn)のセラピーを受けていたり、Catherineがそんな彼の事件をもとにした小説を書こうとしていることを知り、その先で、警察関係者しか知らないはずの情報がCatherineに渡っていることを知ると、てめえーって思い当たる部署の奴をぶん殴ってしまい、それに続けて彼が簡単に殺されてしまったので、あなたやっぱりやばいから、って捜査から外され休職扱いにされてしまう。

いろんな疑念が湧けば湧くほど次の殺人が起こったり車で追ったり追われたり、その都度Nickは沸騰して走り回ってあれこれ引っ搔きまわすのだが、解決に結びつきそうなものはちっとも出てこない。そうやってアテが外れれば外れるほどギャンブルにのめり込むようにすっからかんのダメ男に堕ちていって..

自分は正常な判断も追跡もできるかっこいいデカ、って思い込みながらふつうの道端に置かれた地雷踏んで猛り狂って道を塞いでいく男と「わたしはあなたの考えていることなんてぜんぶわかっている、お見通し」っていう女が頭脳戦で絡みあう、というより、その手前の肉欲(Basic Instinct)にやられてぐだぐだに溶けて好きなのか嫌いなのかわかんないけどとにかく頭から離れなくて… という極めてわかりやすい破滅に向かう絵図。

昔のノワールならそっちに行っちゃ/触れちゃだめだ!のような、危機を危機として発動させる倫理的な枠組みやコードみたいのがあった気がするのだが、この作品の場合はその辺のタガが外れているというか、Sharon Stoneがあまりにパーフェクトにかっこよく立っていて揺るがないので、Michael Douglasが深みに嵌れば嵌るほど、いい気味、ざまーみろ、もっと苦しめもっと狂っておちろー、ってなる、そこに確かにやってくる爽快感のようなのってなんなのか、どこから来るものなのだろう?とか。

で、最後の最後までCatherineが犯人だった証拠は見つからず示されず、むしろNickの方のむしろあんたぜったいあるじゃろ? なかんじが浮かびあがってきて、でんぐり返ろうとするの、それでよいのかも、って。

ホン・サンス映画の、メロを凌駕してなだれ込んでくる抗しがたい、人をだめな方にずり落としていく酒やキスの魔力 - これもまた”Basic Instinct”と言ってよいのではないか - が、その腐れた源泉のような何かが、バブル後期のきらきらでもって力強く堂々と提示されている、と言ってしまってよいのかどうか。いま、こんなにきらきらゴージャスにやられていく快楽を描いた映画、作れないよね。

あと、Jerry Goldsmithの音楽の濡れてじっとりまとわりついてくるかんじ、最近の映画音楽にはないなー、とか。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。