7.19.2023

[film] 君たちはどう生きるか (2023)

なんとなくもやもやしてあんま気持ちよくないので先に書いてしまう。
7月17日、月曜日の午前、109シネマズ二子玉川のIMAXで見ました。

もともと宮﨑駿もスタジオジブリもきちんと追ってきたわけではない - 映画館で見たのは海外で『トトロ』と『千と千尋』くらい、あとはTV放映のが殆どで『もののけ姫』もなんかかわいそうで最後まで見れず、最近のはほぼ見ていない。いろんな人が指摘している彼の女性や家族の描き方、いかにもにっぽんのレガシー左翼の世界観がなんか嫌だし、しかも今回はタイトルが『君たちはどう生きるか』ときたもんだ。80年代育ちとしてはこのタイトルを聞いただけで白目むいて中指たててすたこら逃げるのが基本動作なのだが、これは監督の最後の作品となるとか、でも(だから?)事前のプロモーションや内容公開は一切なしで、そういうマーケティングがネタバレ禁が大好きな昨今の市況に嵌って見事に当たっているらしい、と。この内容だと海外でも当たって宮崎アニメすごい!って更なる神格化は進んでいくのだろう。

別にあのおじいさんの世界観や人物がどうたら、について興味はないのだが、彼のアニメーションが源流のようなマスターのようなかたちであると思われる今のどこに行ってもアニメとゲームだらけの世の中とか、彼が(青少年のためを思って?)問いかけたり戦わせたり、今回のみたいのも含めたああいう「けしかけ」みたいのがもたらした症例みたいのは感じることができて、それはそんなに気持ちよいものではないし、どうするんだ、というのは思ったりする。どう生きるか、なんていいから。 (あと、年齢的には「自分はどう死ぬか」の方だし)

戦争時に病院にいた母を空襲の火事で失った少年が、傷心状態で父の実家に疎開することになる。迎えにきたのは母の妹ナツコで、彼女は父と結婚するらしくお腹には既に子供もいるという。離れの洋館のような家に部屋をもらって学校にも通い始めるのだが馴染めずに石で自分の頭をぶん殴って血まみれになって寝込んだあたりから、庭の池にいたアオサギ(Heron)がなにかと絡んでくるようになるのと、庭の奥の森にある朽ちた塔などが気になり始めた頃に、寝込んでいたナツコが森の奥に消えてしまったので、少年とアオサギが塔の奥に踏み込んでいくと、そこは海とか風とか別の時空が広がっていて、最初はペリカンの大群がきて、風船みたいなマシュマロみたいなわらわらの大群もきて、インコの軍隊もいて、少年の傍には船乗りのキリコとか少女のヒミとかが現れて、最後は隕石のように天上からやってきたらしいあの塔がなんなのか、そしてその塔の天辺にずっといるらしい「大叔父」とは。

構造としては『千と千尋』の家族を人質に取られた子供が、「不思議の国のアリス」よろしく古い旅館に潜む魔物を相手に知恵比べとか冒険をして何かを掴みとった夏、の冒険ファンタジーに近いかも。こちら側と向こう側があり、上の方と下の方がある。ひとつあるのは少年は母を失い、その喪失感の中、父はいるけどあまり信用していない(従うしかない)、これからひとりでどう生きるかを自分に問おうとしていて、でも会いたい - そばにいてほしい母にはもう絶対に会うことはできない、ということをはっきりと認識するためにSF的な仕掛け(に見える迷宮的ななにか)を導入して、世界の均衡とか構造化された記憶などを示してみせるのだが、そんなものとかこんな時間なんて、いったいなんになろうか、って。

あと、亡母が吉野源三郎の映画と同じ題名の小説を遺していてくれたこと、それを読んで母さん...  て泣いて本はよいなあ、になるのだがそれだけかも。

新しい、それまで見たことがなかった世界を示して、そこに導くというよりは昔からずっとあって組み入れられるべく待ち構えていた何かを壊して/壊れちゃったけどこれからどうする? という話で、それは戦時という事情や作者の軌跡ともリンクしているのだと思うが、どうにかしなきゃ、っていうだけなのと、でもあなたには相棒や仲間がずっといたし、いるのよ、って。あのハイジの頃からあるあったかくとろける食べ物とかも。 でも、そこにすら届かない子供たちはいまも世界にはいっぱいいる。この状態で後はよろしく、なんてやめてほしい。とこの世界を絶賛しそうな富裕層の連中に向かって。 

アニメーションとしては絵画のようなところと落書きのような漫画のような粗く稚拙なところをぶつけて、めくるめく流麗な動きになりそうなところをあえて半歩押し戻して、それが結果的に描かれた世界に没入させる効果を生んでいるような。

大叔父については、名を名乗れ、って ← 『ヴァチカンのエクソシスト』の影響…

なんでアオサギだったんだろ?  カササギじゃなかったんだろ? とか。

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