7.27.2023

[film] Opening Night (1977)

7月17日、月曜日の昼、イメージフォーラムのJohn Cassavetes Retrospective で見ました。

今回の特集でかかる作品たちはとうに見ているのだが、これらと”Love Streams” (1984)については何年かに一度は(Gena Rowlandsさまが見つめているものを)見て、腹わたに刻まないといけないので、見る。

この日の朝、『君たちはどう生きるか』を二子玉川で見終わったのが10:30、これの開始が11:00、既に死ぬほど暑くて坂を這いあがりながらしんじゃうかも、って諦めかけたのだが、なんとか間に合った。たとえばわたしはこう生きる、とか。

ベテラン舞台女優のMyrtle Gordon (Gena Rowlands)が新作劇”The Second Woman”のコネティカットでのプレビュー公演の後、ドアで出待ちをしていた若い女性にサインをしてあげて、彼女- Nancyの様子が少しおかしいことに気付くのだが大雨だったし急かされて車に乗りこみ帰ろうとするとMyrtleに手を振っていたNancyは後ろから来た車に轢かれてしまう。

その前のプレビューでの演技の時点でスタッフは彼女の様子がいつもと違っている – 台詞を勝手に変える、勝手に動いたり時間を取ったりして相手役に投げてしまう等 - ことに気付いて頭を抱えるのだが、この事故がその状態を変な方に転がしてしまったのかどうか、その原因を突きとめていく - そんなことより、このプレビューは乗り切れたとして本公演を迎えることができるのか、作者のSarah Goode (Joan Blondell)や演出家のManny Victor (Ben Gazzara)を巻きこんで、とにかくなんとかOpening Nightを迎えられるように、霊媒師のところでNancyを呼び出して貰ったりあらゆる手を尽くすのだが、Myrtleは不眠とアルコールと徘徊の闇に囚われているようで、初日もいつまでたっても現れず、ようやく来たと思ったら酔ってべろんべろんの立っていられない状態で..

とにかくすごいのは、彼女の(周囲から見ればの)逸脱が、説明不能なベテラン女優の錯乱、として描かれているのではなく、劇作で描かれるテーマや世界があり、演出家からの要請があり、共演俳優との過去あれこれがあり、それまでの彼女のキャリアと今後(の不安)があり、これらの塊りがいっぺんにぶつかってきたとき、そうなったっておかしくない/どこにもおかしいところなんてない、と見えてしまうことで、だから乱心した主演女優がみんなに迷惑かけて大変だったはらはら、という話ではなくて、だから最後のOpening Nightの彼女の振る舞いぜんぶが即興も含めて異様にかっこよく痛快でしかなくて、見終わると緊張による全身のこわばりが抜けないまま、なんてすさまじいドラマ - この顛末の劇的なありようときたら - を見てしまったことか、って毎度のように思う。


A Woman Under the Influence (1974)

7月22日、土曜日の昼、イメージフォーラムで見ました。『こわれゆく女』。

この邦題は昔からずーっと引っかかっていて、彼女はずっといろんな暴力とか影響を受けてプレスされて結果そうなってしまった、それはどこからか石が落ちてきて潰れるとか壊れるとか、そういう自然現象のようなのとは違って、単にあらゆる影響のもとに晒された状態にある女性、というのが正しくて、それでも - という映画なのにな。

LAに暮らす主婦のMabel (Gena Rowlands)は3人の子の母親で主婦で、子供を母親に預けて夫のNick (Peter Falk)と楽しい晩を過ごすはずだったのに、夫は建築現場の仕事で帰ってこれず、Mabelはそのままバーに行ってそこで目が合った男の言われるままに酒を飲んでダンスして一緒に寝て、放心状態で朝を迎えると、Nickが仕事仲間をどやどや引き連れて帰ってきてみんなでご飯だーってパスタを作らせてテーブルを囲んで、Mabelの振るまいで全員気まずくなったり、子供の誕生パーティで他の家の子を呼んだときもおかしくなり、それらはぜんぶ怒鳴ったり殴ったりばかりのNickがひどいからなのだが、彼女は入院して6ヶ月後に戻ってくる。

戻ってくる彼女にNickは親族友人一同を呼んでサプライズパーティーを開こうとして、でもどう考えてもだめなアイデアなので客は返して、限られた親族だけにしたのだが、Mabelがそんなによくなっていないことはすぐにわかり、みるみるうちに修羅場で溢れかえり…   こんなシーンが延々繰り返されるばかりで胸が痛いし、子供たちもかわいそうなのだが、それでも、ここでもMabel - Gena Rowlandsが見てその手に掴まえて抱こうとしているなにかはずっと彼女のなかに、動かずにある - それがなんなのかを見る、そういう映画。

Bo Harwoodの音楽もすばらしいよね。

2005年のBAM Cinematekでの上映の際のトークで、Gena Rowlandsさんが「女性の強さと美しさをこれほどまでにきちんと描いた女性映画はないのだ」 と断言していた通りだと思う。全米公開直前まで存在していたという4時間版が、いつかどこかで見れますように。

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