6.29.2023

[film] Right Now, Wrong Then (2015)

6月21日、水曜日の夕方、菊川のStrangerのホン・サンス特集 - 『小説家の映画』の公開にあわせて新旧の9本が - で見ました。

邦題は『正しい日 間違えた日』 。原題は” 지금은맞고그때는틀리다”。 この年のロカルノ国際映画祭 - 『ハッピーアワー』が出品された年なのね - で金豹賞と主演男優賞を獲っている。

ホン・サンスの映画はフィルモグラフィを追って見ているわけではなく、特定のテーマやジェンダーの設定や俳優の使い方や撮り方、ストーリーの落とし方に興味があるわけでもなく、彼の映画の登場人物のように時間が空いたとき、なんとなーくで映画館に入って見て、それでのめりこんだり大好きになったり、ということもなく、かといってがっかりすることもなく、これってなんなのだろう? ってぼんやり思いつつ、とにかく見る、新作が来たら見る、というのがずっと続いている。それでいいかなー、くらい。まだ「総括」するような人でもないし。続いているからにはおもしろいのかな、とか他人事のような。

ロメールの映画に似ている、とはぜんぜん思わないけど、見た後のかんじだと、近いものがあるかも。ヒトって油断ならない、なに考えてるかわかんないやつ(ら)だから気をつけなきゃね、とか。

二部構成で、それぞれのパートが1時間づつ(たぶん)、ふたつで登場人物も場所も重なるところが多い。中心のふたりはもちろん全くおなじキャラクターで。

パート1は"Right Then, Wrong Now" – 「前は正しかったけど、今はまちがい」。

自分の特集上映のイベントのためにスウォンの町にやってきた映画監督のチュンス (Jeong Jae-yeong)は史跡の入り口できれいな女性を見かけてぼーっとなって、自分のスタッフの女性とソリ遊びなどをした後、史跡に戻ってぼんやりしていると先程の女性がバナナアイスを食べていたので話しかけてみる。それがヒジョン(Kim Min-hee)で、会話をしていくと元モデルで今は絵を描いているというので、アトリエに行って絵を見せてもらって適当に(←そう見える)褒めたたえて、そこから寿司屋に向かってお酒をぐいぐい呑んで酔っ払い、さーてー、となったところでヒジョンは大学の先輩との約束があるのを忘れていたので一緒に行きませんか? って誘ってきて行ってみたらヒジョンは居眠りしちゃうしちっとも楽しくないし、翌日のイベントのトークでも司会の男性があんまりだったのでぶちきれて、あーあ、になって終わる。

パート2はタイトルとおなじ”Right Now, Wrong Then” - 「今は正しいけど、前はまちがっていた」。

ソリ遊びのパートはないけど、チュンスとヒジョンが出会うところは同じようなかんじ – 別物として撮ったのか、どういう順番で撮ったのか? - ヒジョンとの会話は彼女の母や父のことに及んで、アトリエに行って彼女の絵を見たとき、チョンスのコメントが彼女をひどく怒らせて、落ち着くために外の景色を眺めたり、それでもお寿司屋ではよいかんじになってチュンスは家庭があるから結婚できないけど結婚しよう(?)って道端で拾った指輪をあげたり、先輩の家での呑みは酔っぱらったチョンスがズボンを脱ぎだして大変なことになったり、ヒジョンを家まで送っていくと母親が待っているから一旦外でばいばいするけどまた戻るから、と言って別れたあとそのままになったり。翌日の映画祭は終わったあとの会場でチョンスの映画を見ようとしているヒジョンと会ったり。

ふたつは同じ話のバリエーションのようでぜんぜん別の話のようにも見えるし、”Now”と”Then”の境い目、“Right”と”Wrong”のちがいも明確にあるわけではないし、恋が成就したり破局したり、というストーリーのピークやExitがあるわけでもない。

別バースなんて騒ぎたてるような大げさなものでもないし、“Groundhog Day”の、ここを踏んだらこんなんなったりして、程度のものかも。そして、でも、24時間くらいの間にチョンスとヒジョンが出会って、ひょっとしたら恋に繋がるかもしれない何かが生まれたり撒かれたりした、かもしれない、程度の温度と湿度と。こんなふうにふたつのヴァージョンを並べてみることで見えてくるのは恋愛の諸相、というよりもヒトはなんで酔っぱらうとぐでぐでになって、どんなことだって起こってしまう気になったり(そして実際そうなったり)するのかしらねー、みたいないつもの。

まあ恋愛も酔っぱらうみたいなもんだしー、ていうことでよいの? って思いつつそれを確かめたり話したりするひとも周囲にいないので、そのまま家に帰る、みたいな。

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