3.18.2023

[film] The Fabelmans (2022)

3月16日、木曜日の晩、Tohoシネマズの新宿で見ました。
ほんとは、公開直後に見たいやつだったのだが、ロンドンに行ったり大乗寺に行ったりして週末がなくなっていてー。

監督はSteven Spielberg、脚本はSteven SpielbergとTony Kushnerの共同による、監督自身と家族をモデルにしたcoming-of-ageドラマ。撮影はJanusz Kamiński、音楽はJohn Williamsなど。オスカーにいっぱいノミネートされたけどなんと無冠に終わった。

こないだの”Babylon” - “Empire of Light”に続く、昔の映画 or 映画史に寄ってじーんとするシリーズの、たぶん本丸、だと思って臨んだのだが、そんなに映画万歳!にもなってなくて、そこが却ってSpielbergらしいかも、って思った。Spielberg作品のなかではすごく好きなほう。

1952年、ニュージャージーで、家族と一緒に満員のシアターで両親のMitzi (Michelle Williams)とBurt (Paul Dano)と一緒にCecil B. DeMilleの”The Greatest Show on Earth”を見ようとしている(いいなー)Sammy がいて、ぜんぶでっかいのは怖いよ、という彼にBurtは映画の原理を説明して心配いらないから(なにが?)、という。

でもやはり、映画の列車と自動車が正面衝突して吹き飛んでしまうシーンはSammyにとって衝撃で、脳裏に残るそれを再現すべく取り憑かれたようになってしまったので、親は彼に8mmのカメラを与えて、彼は家族のあれこれも含めてカメラを回していくようになる。

ユダヤ系のSammy (Gabriel LaBelle)の家族の団欒の席にはおばあちゃんと3人の姉妹の他に血縁ではないらしいのだが父の部下で気のいいBennieおじさん (Seth Rogen)がなぜかいつもいる。

1957年、RCAからGEに転職した父に伴ってアリゾナに家族は越して、その一団にはなぜかBennieも入っているのだが、べつに誰も気にしていなくて、そこで元コンサートピアニストだったMitziはピアノを弾いて、自然を楽しんで、Sammyは家族以外に学校の仲間たちとも映画を撮るようになり、充実した幸せな時間を過ごす。

やがておばあちゃんが亡くなり、彼女の弟だというBorisおじさん (Judd Hirsch)が現れ、サーカスでライオンの調教をしてサイレント時代の映画に関わっていたらしい彼の、アートはお前と家族の間のいろんなものを引き裂くことになるだろう覚悟しろ、っていう言葉はSammyに強烈な印象を残す。(これと、映画はただのホビーだろ? と父に言われた時の違和感も)

母を亡くして落ち込んでいるMitzi を元気づけるようなフィルムを編集してくれないか、とBurtに頼まれたSammyは、撮り溜めていた家族の映像の編集を始めて、そこの隅に映っていたMitziとBennieおじさんの見てはいけないっぽい親密そうな絵を発見して…

そして一家はGEからIBMに転職した父に連れられて北カリフォルニアのサラトガに引っ越すのだが、そこにはもうBennieおじさんの姿はなく、そこの高校に通い始めたSammyにはユダヤ人虐めとかキリストに恋するMonica (Chloe East)との恋とか、プロムとか新たな試練がー。

プロムではDitch Dayのビーチで撮影したフィルムを上映した時の虐めっ子 (Sam Rechner) の反応が興味深かった。そいつからなんであんなに俺のことを神々しく撮るんだ? って怒られて、更にMonicaには結婚しよう、ってプロポーズしてふられるの。ここでの渦巻きが突出していて、ああプロムおそろしや、って。

こんな具合にエピソードてんこ盛りで2時間半あっという間なのだが、最後は仕事を貰うべくいろんなとこに手紙を出してもまったく相手にされなくて、ようやくTVの仕事を貰えそうになっているSammyが突然怪人のようなJohn Ford (David Lynch)に会うことができて、地平線を追うのだ、って教えて貰って、嬉しくてスキップしていくSammyの後ろ姿で終わるの。

でも、この映画、自分にとってはなんといってもMitzi - Michelle Williamsだった。笑う彼女、皿を洗わない彼女、爪を切らない彼女、くるくる踊る彼女、泣く彼女、鬱でおかしくなってSeth Rogenの元に走る - “Take This Waltz” (2011)の逆をやる - 彼女。 映画が彼女を家から出ていかせて、FabelmansをFabelmansたらしめる。

まあるくなったPaul Danoもいいよねえ。それでも彼特有の、ああ.. ああいったいどうしたことだ.. っていう、打ちのめされて途方にくれた表情を見ることができるのがたまんない。

ユダヤ人家族の子の成長を追う物語、という点では、場所も年代も違うけど、“Armageddon Time” (2022)と見比べてみるのもおもしろいかも。


Twitterのアカウントを消しました。 これまで映画を見る前にタイトルをポストしとくのと、猫や動物の動画をLikeで集めるくらいしかやっていなかったし、情報収集のツールとして助かるとこもあったけど、いまのあそこはあまりにToxicで心と体によくない。あれに費やす時間があったらもっと本を読んだりお片付けしたりしよう、と思ったの。

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