3.01.2023

[film] Bones and All (2022)

2月25日、土曜日の夕方、TOHOシネマズ六本木で見ました。
なんだか怖そうだったので見る前に近くでやってたヒグチユウコ展をみて元気を貰ってから。

Camille DeAngelisの同名のYA小説 (2015)をDavid Kajganichが脚色し、Luca Guadagninoが監督した。
音楽はTrent Reznor & Atticus Ross。 邦題は『骨まで愛して』でよかったのに..

やはりこのふたりが音楽を手がけた“Empire of Light” (2022)は冒頭のピアノが印象的だったが、こちらは爪弾かれるアコースティックギターの音から入る。

レーガン政権下の1988年、ヴァージニアに父とふたりで暮らしていたMaren (Taylor Russell)は、仲よしの近所の子に誘われてその子の家にスリープオーヴァーに行って、寛いで寝転がったところで横にいた子の指を齧って騒がれて(いきなり齧る描写の流れ、おもしろ)、戻ってきた娘の顔(血が)を見た父のFrank (André Holland)は即座に、慣れたように一緒に家を出て、でも彼女の18歳の誕生日にカセットテープと出生証明書を残して消えてしまう。

なんで自分はこんななのか、どうして母からも父からも置き去りにされてしまったのか、Marenは出生証明書にあった母親の名前と住所をたよりに、彼女に会おうと旅に出て、最初に見るからに怪しい老人のSully (Mark Rylance)と会う。彼は彼女のことを同じ匂いでわかった、と言い、自分と同じ - “one of us” - マンイーターで、自分は同じ連中を食べることはしない、という。Sullyにいろいろ教わりながら一人暮らしの老婆を一緒に食べてしまった翌朝、構ってくるSullyのことがなんか怖くなってMarenはひとりで逃げ出してしまう。

旅をするMarenはコンビニのトラブルですり切れた若者Lee (Timothée Chalamet)と出会って、彼もマンイーターだと思ったのだが、Sullyほど粘着してこなくてよいかんじだったので一緒に車でLeeの家があるケンタッキーからMarenの母がいるらしいミネソタまで旅をしていく。この辺、貧しくハングリーな若者ふたりのロードムーヴィー風なのだが、人目を忍んで移動してお腹が減ると人を食べて、たまに罪悪感に襲われて、でもそれって彼らふたりだけにしかわからない痛みと辛さで、これってふつうに報われずに苦しい – 逃避行というほど切実でもない - 恋愛のドラマだと思うのだが、それでよいのではないか。

ようやく精神病院で会うことができたMarenの母(Chloë Sevigny)は、自分の両腕(手首から先)も食べてしまっていて、Marenのことも誰だかわからなくて、Marenは本当にひとりになってしまったことがわかって…

そんな状態になってしまった若者ふたりが寄っていく – 愛しているも分かりあいたいとかもなく未来なんて想像できないし、親とは切れていて一緒にいられないし、近くにきた人は食べちゃうか、親しくなれば食べちゃいけないので離れるしかないし、でもこのふたりはなんとなく離れることができない - 理由はうまく言えない – その辺のもどかしくずるずるしたかんじがたまんなくよいの。人肉を食べたあとの口の周りとかシャツが血まみれのでろでろになってお行儀よくできない情けないところとかも含めて。

そして最後にはやはりSullyが現れて..  Mark Rylanceの存在感と声、その不気味さがとてつもないことは確かながらも、あの役がああなることはなんかわかってしまう感があって、そこだけちょっとだけつまんなかったかも。

まん中のふたりが生きてて彼らがそこに確かにいて揺るがなければどんな荒唐無稽な設定でもとりあえずラブストーリーは成立する、というよい例かも。(賛否あるだろうが)”Twilight”のサーガも自分にとってはそういうやつ。

音楽はNew Orderの"Your Silent Face"とか、あの頃のすごく地味で変なのが選ばれていて(The Cureとかあってもおかしくないのにない)、最後に流れる主題歌 - "(You Made It Feel) Like Home"ではTrent Reznorの声が被さる。彼の声、いいよなー(今更)。

この曲、映画の舞台となった80年代終わりの頃の “Something I Can Never Have” (1989)のその後、のようなかんじもある。この曲で - ”You make it all go away ~ I just want something I can never have”って自分の周りを空っぽに掃除して、今回ので - ”In a world that isn't ours - In a place we shouldn't be ~ You made it feel like home” ふたたびあなたを捕まえようとしている、というか。

Maren役のTaylor Russellさんは”Wave” (2019)でもTrent Reznor & Atticus Rossの音楽に洗われていたような。

続編では結婚したふたりに子供が産まれるのだが、その出産が”Twilight”のあれみたいに凄いことになるの。

あと、なんでDavid Gordon Greenがあんなところに。


今晩の夜行でロンドンに行って3日くらいで戻ってくる(not 仕事)。ぶじに戻れますようにー。

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