3.20.2023

[film] Bonne chance! (1935)

3月18日、土曜日の昼、シネマヴェーラのサッシャ・ギトリ特集『知られざるサッシャ・ギトリの世界へ Bonjour, monsieur Sacha Guitry』で見ました。この特集、初日の3/11から出遅れて、3/13に『とらんぷ譚』は見たりしたのだが、こっちの方は(も)文句なしのおもしろさだった。ギトリはやばい(今更)。

邦題は『幸運を!』。英語題は” Good Luck”。 のちにGinger Rogers & Ronald Colmanのコンビで"Lucky Partners" (1940) - 『ラッキー・パートナー』としてリメイクされているそう。
監督としてはもうひとり、Fernand Riversの名前がクレジットされている。ギトリが最初に映画用のオリジナル脚本として書いた作品。

画家をしているらしいClaude (Sacha Guitry)がいて、近所の洗濯屋の娘Marie (Jacqueline Delubac)のことが気になっていて、頼まれた肖像画を描いている間も隅っこに彼女の顔を描いたりしている。彼が彼女に「幸運を!」って声を掛けたら、彼女が洗濯物を届けに行った先でご褒美のチップを貰ったのでそれで宝くじを買ってみる。買いに行ったら最後の1枚だったのでこれもラッキー! だし、Claudeにはもしこれが当たったらふたりで山分けしましょう!っていう。

これはラッキーついでなのかわかんないけど、近所のProsper (André Numès Fils)がMarieに、僕はもう戦地に赴くので13日後に戻ってきたらMarieの生まれたフォンテナック市で結婚しないか、ってプロポーズしてきて、Marieのママ(Pauline Carton)からはあんたにもうそんな機会なんてそうはないだろうし、Claudeはずっと年上だし、って言うので戦争に行っちゃう彼にとってもよいことなのかも、って思って軽くOKしてしまうの。

そしたらその晩、Marieの買った宝くじが200万(今のお金でいくらかしら?)の大当たりを出して、約束したからって100万をClaudeに渡すと、Marieが婚約したのはわかるけど奴が戻ってくる前にこれをふたりで使っちゃおうぜ – ってClaudeはワルっぽくいろいろ企んで、でっかい車を買ったり、前から狙っていたルノワールの絵を買ったり(おいおい)、豪勢なランチを食べてフォンテナックに向かうと、市にすごい金額を寄付をしたので賓客になっていて鼓笛隊にパレードまでしてくれて、13日後の式の手配をして、そこからエジプトに渡ってモナコに戻ってきて、再びフォンテナックに戻る。

こんなふうにお金はいくらでも(半ばやけくそで)使ってしまえるので好き勝手のやりたい放題にやっていく一方で、Marieはもうじき別のやつと結婚することになっているのだから、という線は守ろうとして、でもその葛藤のせいかホテルとかモナコのカジノではがたがたになったりして、でも..  

ふたりにはどこまでも「幸運を!」に込められた呪いのような幸運が付いてまわって、それはふたりが互いのことを好きだからと思っていたのだが、それだけじゃない、というかそこから滲みだしてくるのか、偶然とは思えない不自然さに旅をしながら気づいていくのと、やはり、そうであるとしたらふたりは一緒になるしかないんじゃないか、って絞めつけられていくところがたまんないの。なんで一緒になれないのか? 婚約が決まっているのだし年齢が離れすぎているし、でもそれって本当の理由になるのか? 好きになっちゃったのならしょうがないんじゃないか? この辺の粋な問いの立て方が車や船やバクチであれこれぶっ飛びつつ、結婚することはできないんだ、でも、だけど、やっぱり、ってぶつぶつぱたぱたと欲望の炎の上で栗みたいに爆ぜていくおもしろさとスリルと。

あー、反対側でMarieに強引に婚約を迫ったProsperの13日間もそれなりにおもしろいものなのだった。「幸運を!」は誰一人として不幸にすることはなくて、この辺はなんか神様がいるかのような。

こんなふうに時間と場所と相手を都度取り替えたり参照したりぶつけたりヒビを加えたりしながら2人の距離を縮めていくrom-comって、やっぱり映画の方が得意で、演劇だと状況に縛られてしまうようなー。

Sacha GuitryとJacqueline Delubacの息の合ったとこ - Jacqueline Delubacは5回結婚したGuitryの3番目の妻となった人なので当然かも - だけどそれにしてもあんたたち。しかしGuitryって、2回目の結婚以降はずっと別れてから約3カ月で次のひとと結婚しちゃうのな。これならあんな物語だって書いちゃうよね。

あと、ギトリとルビッチだと、ギトリの方が7つも年上なのが意外だった。ルビッチのコメディの方がよりクラシックな気がして、ギトリのってモダンなかんじがして。 どっちもすけべで変態だけど、ギトリの変態性は露出狂のそれで、ルビッチは露出させて喜ぶ方のかな、とか。

というわけでしばらくギトリ続くかも。

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