3.09.2023

[film] Close (2022)

3月1日の午後、A24のScreening Roomで見ました。
ロンドンでも3月3日から公開となっていて、Curzonなどでは結構でっかく宣伝されていた。
ネタバレしているので、これから見たいひとは注意を。

ベルギーのLukas Dhontの監督・脚本(はAngelo Tijssensとの共同 - 今作でも)によるデビュー作“Girl” (2018)はすばらしい若者映画(トランスジェンダーへの偏見を徒に助長する/上っ面だけわかった気にさせるだけ、という批判があることはわかるものの)だと思ったが、これもそうで、昨年のカンヌでグランプリを獲って、もうじきのアカデミー国際長編映画賞にもベルギー代表としてエントリーされている。ふたりの少年が花畑を並んで走っていく予告だけでも見るべき作品であることを予感させる。

ベルギーの郊外に暮らす13歳のLéo (Eden Dambrine) とRémi (Gustav de Waele)は親友で、ずっと一緒にLéoの家が経営する花畑で追っかけっこをしたり、将来の夢を語ったり、寝る時もRémiの家に泊まったり一緒だし、オーボエをやっていてややおとなしいRémiを外に引っ張り出してくれるLéoのことを両親のSophie (Émilie Dequenne)とPeter (Kevin Janssens)も愛している。

そんなふたりが高校に入って同じクラスになり、そこでもいつものように一緒に遊んだりじゃれたりしていると、女子のグループがふたりはずっと一緒にいるしカップルなの? って聞いてきて、Léoは即座に否定するものの、なんだか気まずくなる。

その後も女子たちにそういう質問をされたことが引っかかってしまったLéoはRémiと自分は違うから、って反発するかのようにアイスホッケー部に入って、これまでのようにRémiと一緒にいたり寝たり走ったりなどから距離を置いたり避けたりするようになっていく。RémiはLéoの突然の変化に戸惑って「なぜ?」って聞いたり、やがてみんなの前での取っ組みあいの喧嘩にまで至ってしまうのだが、いったんの、一瞬のほつれは戻ってくれない。

ある日の遠足でRémiが来ていないことに気づいて、どうしたんだろう、と思っているとその終わりにバスから降りて全員そのまま体育館に集まるように言われて、そこには父兄も来ていて.. Rémiになにかがあった、ことはすぐにわかった…

その後のLéoはホッケーと実家の花畑の手伝いに没入して、忘れよう吹っ切ろうと毎日を懸命に過ごそうとして、でもセラピーセッションで、級友がRémiのことをいい奴だったとか取り繕ったように語るのには憎悪の目を向ける。

でも、もう無理かもってひとりSophieに会いにいったLéoは…

なにも、どこにも変なところ、やましいところのなかった2人の少年に起こったこと、仲がよければよいほど起こってもおかしくなさそうで、決して癒えない傷のありようも含めて誰にでも思い当たりそうなところはある。大切な友の喪失を「事件」としてではなく、輝いていた過去と起こってしまったことに対する罪の意識とその重さと救いのないところにおける救済、という角度から描いて、でも誰にもそこを貫いてLéoを救ってあげること、そのパスを示してあげることはできない。あるいは、その手前でRémiになんとかしてあげることはできなかったのだろうか、も含め、言えば言うほど他人事になってしまうもどかしさものしかかってくる。

前半の花畑を並んで走っていくふたりの姿が美しくずっと残って、それが美しければ美しいほど後半の悲痛さが際立って、しかもその痛みの深さは圧倒的でどうしようもない。「もしあのとき..」をいくら並べてみてもどうすることもできない。そんな悲しみを正面から取りあげることにどんな意味が? とか。そしてこれは若くても老いていても、異性の恋人にも親兄弟にでも起こりうることよね、と思いつつ、それでもこれを美しいふたりの少年のドラマにした意味とは? というあたりが引っかかってくる。ラストのLéoの眼差しを見るとよけいにー。

こうした痛みや救いのなさを無垢で美しい子たちにぶつけてああかわいそうにー、って悲しむのは簡単だけど、でも、やはり発端はホモフォビアの心無い一言から始まっていて、これはやはり社会的な虐めで、ここを子供はそういう残酷なものだからとか、言った本人に悪気はなかったのだろうし、とか言うあたりに落ちて/落としてしまいがちだけど、もういい加減にそういうのもやめるべき、これを美しい子供たちの悲しいお話として「鑑賞」するのもー というのも思った。 そこまで含めるとこの世界には絶望しかなくて、だからRémiは亡くなってしまったのだと。

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