6.03.2022

[film] Laurel Canyon (2020)

アメリカ西海岸の60〜70年代の音楽をテーマとしたドキュメンタリーを何本か見たのでまとめて書いておく。

Laurel Canyon (2020)

5月21日、土曜日の夕方、ヒューマントラストシネマ渋谷で見ました。
元は”Laurel Canyon: A Place in Time”というタイトルで2回に分けて、2020年の2週間に渡って放映されたもの、なので1時間 x 2の120分の作品。

Laurel Canyonのミュージシャンたちの肖像を60年代から撮ってきたふたりの写真家 -  彼ら自身も同じタイミングでここに移ってきた - Henry DiltzとNurit Wilde、彼らのアーカイブを紐解くかたちで、1965年から1975年くらいまでで、このなだらかな山とくねった道にくくられた一帯でどんな音楽が創られていったのかを追う。

フッテージも含めて登場するのはCrosby, Stills, Nash & Young, Joni Mitchell, The Doors, The Byrds, Buffalo Springfield, The Mamas and the Papas, Love, The Eagles, Jackson Browne, Linda Ronstadt, Gram Parsons などなど。まだ生きている人たちはこの映画用のインタビューも。

初めはとにかく安い家賃で広めの家が借りられて、でっかい音を出してもだいじょうぶだったので貧乏ミュージシャンたちがやってきて、音を出しているとだれかが顔を出したり出されたり、酒やドラッグも入ってパーティになり、東海岸からやってくる、英国からもやってくる、そうやっていろんな人が出会って曲ができて、フォークはフォークロックになり、エレクトリックが入り、カントリーもブルースもまじってサイケデリックもできあがる。この新しいうねりにウッドストックがぶつかって音楽産業としても膨らんで、貧乏だったミュージシャンは成金になり、一帯は金を産む鉱山のようになって、でもそのうちCharles Mansonが現れて..

もちろんムーブメントなんて言ってもひとりひとりのすばらしいミュージシャンたちがいたから、というだけなのだが、今ふうにいうとオープンでコラボレーティブなスペースがダイバーシティ&インクルージョンな空気を呼びこみイノベーションをもたらした(けっ)、そんな時代への甘い憧れみたいのもあるのか。

でもなんかわかんないけど、白人ヘテロ中心のヒッピーのありようを無条件に肯定して歓迎して、そういうのがやがてCharles Mansonのカルトやオルタモントになだれこむ、というダークサイドは(あんま見たくないけど)もうちょっとフォーカスされてもよかったのでは。

CSN&Yが道のすれ違いのとこでなんとか結成されたこととか、The Mamas and the PapasがNYからここに移ってくるところとか、どこまでも孤高のJoni Mitchellとか、おもしろいエピソードはいろいろ。


Echo in the Canyon (2018)

6月1日、水曜日の夕方、ヒューマントラストシネマ渋谷で見ました。

これは↑の”Laurel Canyon”のフッテージとインタビューを中心とした包括的な回顧とはちょっと違って、監督のAndrew SlaterとJakob Dylanが中心にいて、Jakob Dylanがホストとなって2015年10月12日、LAのOrpheum Theatreで行われた同名のコンサート - 参加したのはBeck, Fiona Apple, Norah Jones, Cat Power, Regina Spektor, Jadeなど - でのライブ演奏とこの後にリリースされる同タイトルのレコードの録音風景が繋がったり、そこで取りあげられた楽曲の背景や魅力などについて、Jakobが当時の関係者やミュージシャンに話を聞いていったり。相手はTom Petty, Roger McGuinn, David Crosby, Stephen Stills, Lou Adler, Michelle Phillips, Brian Wilson, Ringo Starr, Eric Clapton, John Sebastian などなど。

元のコンサートのテーマがThe Byrdsのデビュー盤"Mr. Tambourine Man”のリリース50周年、というものだったので、フォークがロックになったところとか、そこにBritish Invasionがどう絡んできたのかとか、”Laurel Canyon”で語られたエピソードもいくつか、そこにはBeatlesもあったけど、Beach Boysもいたぞ - Brian Wilsonはバッハ並み、とか、結構視点があっち行ったりこっち来たり、今のミュージシャンから見た西海岸の話になっていて、だからこっちにはJoni MitchellもLoveもDoorsも出てこない。海の音楽のBeach Boysは山の谷間のLaurel Canyonにも””Echo”したのだろうか? とか。  

監督のAndrew SlaterがCapitol Recordsの元CEOだった、というのもあるのかしらと思っていたら最後の方で、Jacques Demyの”Model Shop” (1969)を見たらすごくよくて、当時の音楽を探ってみたくなった、とかあっさり言ってて、それなら最初からそう言え..(最後の方はこの映画からの抜粋映像ばかりに)

でもJakob Dylanがピックアップした曲はどれも好きなのばかりで “Just Wasn't Made for These Times”とか、The Associationの”Never My Love"とか、“Monday, Monday”とか、”Expecting to Fly"とか - 最後にガラスの檻のなかでひとり狂ったようにギターをがぎがぎやっているNeil Youngさまがー。

そして映画はTom Pettyに捧げられている。当然かも。


Linda Ronstadt: The Sound of My Voice (2019)

5月4日の午前、シネマカリテで見ました。
タイトル通りLinda Ronstadtの評伝ドキュメンタリーで、監督は”The Times of Harvey Milk” (1984)を撮ったRob Epstein。映画としてはこれが一番しっかり作られていてグラミーの Best Music Filmを獲っている。

アリゾナのツーソンに生まれてメキシコの歌を歌って育って、60年代の終わりにLAに出てthe Stone Poneysを結成して、Troubadourで歌いながら、ここにGlenn FreyやDon Henleyが加わって、というあたりは”Laurel Canyon”で語られていたそれとは別の王道のウェストコーストの伝説のようなかんじで、でもとにかく彼女の歌声がなに聴いてもよいったらなくて。

そして後半のDolly PartonとEmmylou Harrisとのトリオ、その並びのとてつもないすごさ。ライブ見たかったなー。
もうライブで歌声は聴けないのかもしれないけど、彼女の歌声を聴いてみ、しかない。

どうでもいいけど自分がどうしようもなくだめなときって、だいたい頭の奥で“You're No Good”か”Loser”が流れている。流れない?

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