6.27.2022

[film] 三姉妹 (2020)

6月21日、火曜日の晩、ヒューマントラストシネマ有楽町で見ました。
“Three Sisters”がオリジナルタイトルで、邦題は『三姉妹』。 Seung-Won Leeが脚本・監督を務めた韓国映画。 ネタばれとか気にしなくてよい気もするけどいちおうー。

おそらく昔の記憶 - 2人の少女が背を向けて走っていく映像の後に、三姉妹のそれぞれの現在が描かれていく。ここだけでも十分におもしろいものになっているかも。

次女ミヨン(Moon So-ri)が一見、一番きちんとした成功者ふうで、宗教団体の聖歌隊を指揮しながら夫も同じ団体の幹部で教師をしていて、子供ふたりの四人家族できれいな家に住んできれいな服を着て神様がいるので不安もなく、悩みといえば食事の時に娘がなかなかお祈りをしないことくらい。それでも、なにがあっても神に寄り添えば神は救ってくださるはずだから、ってきらきらしている。

作家をしている三女ミオク(Yoon-ju Jang)は髪を染めて奇天烈かつどーでもいい恰好をしてジャンクフードを食い散らかしつついつも不平不満たらたらのおらおらで、ミヨンのところにどうでもいいことで電話をかけて困らせたってちっとも気にしない。年上の夫と彼の連れ子がいるが彼らも彼女の圧と威嚇には頭があがらないし継子ははっきりと距離を置いている。

地味に花屋をしている長女ヒスク(Kim Sun-young)は自分がガンで調子がよくないことを周囲に言いたいけど誰も聞いていないようだからいいやー大丈夫―、って部屋の灯りも点けずにぼーっとしてばかりで、元夫からは金をたかられ、ゴス&ゴミパンク&メタルぽい一人娘のボミ(Ga-hee Kim)の癇癪には頭があがらないけど、彼女が愛しくてたまらないみたい。

上の二人は彼女たちなりのやり方で自足していて、その安定した立ちっぷりがなんか気にさわるので絡みたい下の子のミオクも絡みたいときに絡んで吐きだせればそれでよし、だったので宇宙の均衡は保たれていたのだが、ミヨンの夫が合唱隊の生徒と浮気していることがわかって家を出てしまってから、旦那だけでなくあんなに崇めていた神への信頼からなにからぜんぶ揺らいでしまったところにあとの上と下のふたりの生活に触ってみると、なんだかみんなぼろぼろじゃんー ってなったところで実家の父の誕生日に三姉妹で出かけようって過去に向かってドライブする。

そこで明らかになる三姉妹(ともうひとりいた)の過去、そこには彼女たちがどうしてこんなになってしまったのか、のおおもと - 家(父長)の理不尽かつ暴力的な縛りと呪いがはっきりと現れて。

物語の前半では彼女たちの立っている/立てるところまできたこんがらかった場所と時間を照らしだそうとして、終盤でそうやって明かされた現在の表裏のようにしてあった過去からの闇がどこから来たものだったのかをえぐり出す。(終盤の流れがやや性急で唐突なかんじになってしまったとこだけやや残念)

それは個々の家庭の修羅場の絡まり具合の数段深いところ - ほぐせば、話せばなんとかなるようなものではなくて、えぐって表に引きづりだして晒して叩くしかないような、彼女たち三姉妹を三姉妹として隅っこに固まらせてあんなふうにしてしまった化け物がふたたび現れて彼女たちをすくませたところで、ざっけんじゃねーぞおら!って。 ここはやや唐突で少しだけびっくりしたのだが、後から考えればそうだよな、って納得できる。そしてそのあまりの勢いと共にいろんなものが噴出してくる(のが見える)ので泣いてしまう。おいしいけど辛すぎて笑いながら泣いてやけどする韓国のお鍋のような。

『ハチドリ』(2019)にもあったテーマ。あの作品は1994年に14歳だった彼女を描いていたが、彼女があのまま大きくなって今にいたら..  この三姉妹のようになっていたのかしら、とか。大きくなれてよかった、なんて言えないくらいに暗く深い闇だと思うけど、ラストの3人の立ち姿を見るとああーって。

まんなかの3人がなんともいえずかっこいい - 彼女たちはかっこよくあってほしいな、って思うそのままに素敵に浜辺に立っているので、よいの。また会いたくなるような。


梅雨、しれっと勝手にいなくなってんじゃねえよ。そんなの許されるとおもってんのかおら。

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