1.28.2022

[film] Stillwater (2021)

1月22日、土曜日の午前、シネクイントで見ました。

“Spotlight” (2015)のTom McCarthyの新作で、主演はMatt Damonで、彼が乱闘したりしながら娘を救出しようとしているらしい予告を見たとき、またかー、みたいに思ってしまったことは確か。彼のJason Bourneてなんか違う - ”Interstellar” (2014)とか”The Martian” (2015)とか、遠くにひとり取り残されて途方に暮れている滋味のない性格もそんなよくないTom Hanksのようなところが魅力だと思っていて、でもそういう点から見ても結構違ったやつだったかも。

2007年にイタリアで起こった無実のアメリカ人女性Amanda Knoxが現地で勾留された事件にインスパイアされたものだという。

オクラホマのスティルウォーターで石油の採掘をやっているブルーカラーのBill Baker (Matt Damon)がいて、妻はいなくて(自殺したと)、地元の身寄りは義母くらい、娘のAllison (Abigail Breslin)はマルセイユで同居していた女性を殺害したとして逮捕され現地の刑務所に入っているが、彼女はずっと無実を訴えている。彼は娘との面会のために定期的にマルセイユを訪れていて、今回Allisonに会ってみると事件の容疑者に繋がりそうな情報(口コミ)を得たという手紙を担当判事に渡してほしい、と頼まれて、でも判事に会うとこの程度の情報では再捜査はできない、と断られる。現地の元警察官で探偵をやっている男からはその男のDNAさえ手に入れられたら警察にある現場のそれと照合できないこともない – でもすごく高いぞ、って言われて、その先、Allisonには(希望を持たせるために)判事は調べてみようって言っている、と告げ、Billはやってはいけないとわかっていながら自分ひとりで手がかりを探り始めるの。

その時滞在していたホテルで隣の部屋にいた母娘 - Virginie(Camille Cottin)とMaya (Lilou Siauvaud)と仲良くなって、彼女たちのアパートに間借りさせてもらい、日雇いの仕事とかをしながらAllisonの同居人を殺した可能性のある男(名前はわかっている)を探して治安の悪い高層団地群(フランスの映画によく出てくる)のあたりを嗅ぎまわり始めて、因縁つけられてぼこぼこにされたり、そのうちAllisonにも判事ではなくBillひとりでなんかやっていることがばれてふざけんな、って元々父とは蟠りがあった彼女は絶望して自殺をはかり、Virginieたちからも出ていってと言われて。

やがてVirginieたちとも和解して容疑の男の顔がわかって、サッカー場でそいつを見かけたBillは.. (これくらいまで)

実際に起こった事件が元なのでこんなこと起こるわけがないと言いきれないわけだが、でも、うーん。(Amanda Knox本人はこの映画について失望して怒っている、と)   フランス語もほぼできないBillがVirginie(彼女は英語ができる)のお世話になって、ビザもないのに日雇いで働きながらたった一人で容疑者を追っかけるとか、フランスってあんなに異国人に(特にアメリカ人に)甘くてやさしい国かしら、って思うし、いろいろ無理ありすぎな気がした。初めのほうでAllisonの態度に含みがあったりするのとか、終盤のBillのあの行いはいくらなんでもだめでしょ、とか。

脚本上の性格設定はたぶんきちんとできているのかもしれないけど、物語を構成する糸に真犯人探しと、うまくいっていない父娘の絆の話と、孤独で武骨な男とシングルマザーの恋と、スティルウォーターという田舎 vs. マルセイユという田舎の話と、父親の執念と自己回復と、女性同士の恋と嫉妬と、あれこれてんこ盛りしすぎて明らかにじゅうぶん回収できていない。もしAllisonの言ったことが本当だったとしたらそれはそれで簡単に収束できるとは思えないし、そういう状態のままスティルウォーターであんなふうに落着できるものなのか、って。 そんな土地のお話なんです、って言われたら … となるしかないけど。

結果として、Matt Damonだったかも。よくもわるくも。

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