1.27.2022

[film] 忠烈圖 (1975)

1月16日、日曜日の夕方、国立映画アーカイブの特集『香港映画発展史探究』で見ました。
日曜日のせいか客席ぱんぱんで、あーこの空気はきっとオミクロンたっぷり含有しているねえ、と思いつつも身動きとれない。

この特集は未見だった『男たちの挽歌』(1986)をはじめ、地味に何本か見ていて、『董夫人』とか、すばらしい女性映画なども多いのだが、とにかく書いている時間がー。  英語題は“The Valiant Ones”。

胡金銓(キン・フー)の代表作と知られて、たぶんNYにいた頃(90年代)に見たことがあった気がして、でも確証は持てずにううむーって見ていって、最後の岩石ごん、のところではっきりと思いだした。上映された4Kのレストア版作成にもアメリカが関わっていたようだが、アメリカのキン・フー周辺の研究ってなんか裾野が広そうで、Lincoln Centerで小特集が組まれた時も上映前にトークする予定だった研究者の方が来れなくなって、替わりに論文みたいな長文原稿が送られてきたことがあったり、とにかく恒常的に熱くて深そう。なんでだかは不明。

明の時代、日本の海賊「倭冦」が中国南部の沿岸を荒らしまわってみんな苦しんでいて、皇帝の命を受けた将軍は腕利きの7人を選んで、圧倒的多数の倭寇に闘いを挑む。とにかく、カンフー&ちゃんばら活劇として見ていてこんなに楽しくかっこよく美しい(あの衣装のカラーとか)ものはないの。見事に緩急のきいたダンス映画のようでもある。

とにかくかっこいい白鷹と徐楓の夫婦もそれぞれの強者たちも一見そんなに凄そうには見えなくて飄々としていて、でもすれ違ったり振り返ったりした瞬間に気が付けば向こうは死んでいて、それで相手はあたふたして。敵の方に乗り込んでいっても向こうが奥から順番に強いのを出してきても全然へっちゃらで払い除けて、いちいち、おー、とか、わー、とか唸るしかないのと、それら敵方の出方出し方がいちいちくどくてしつこくて、それで連中がうんざりするくらいいっぱいいることがわかって、林を抜けて海岸線を走って最後に白塗りの倭冦の首領 - 博多津(朱元龍)が現れて、でも白塗りなのでなんか微妙におかしくて、どかどかどすどす何度も宙を舞ったり蹴ったりして、最後はごん、って。

NFAJの本特集のページにこの作品をレストアした時の話と撮影当時を振り返るキャストの皆さんの動画があって興味深いのだが、あれらの動きはやはり厳密にコレオグラフされたものだったのだなあ、というのとテーマは“loyalty and sacrifice”ということに尽きるのかー、とか。


怒火 (2021)

1月16日、日曜日の午前、『忠烈圖』の前座で、Tohoシネマズの日比谷で見ました。
英語題は”Raging Fire”、邦題も『レイジング・ファイア』。
Donnie Yenの主演だから、というより、陳木勝(Benny Chan)の遺作であるならば、と。

ベトナムマフィアと香港マフィアの麻薬取引の現場に張っていた香港警察のチームが、横から現れた5人組によって壊滅させられブツも奪われて、その現場に直前に行くことを禁じられたボン(Donnie Yen)は、かつての部下で、4年前の事件捜査の際に有罪となり収監されたンゴウ(Nicholas Tse)たちの関与を疑って追っていく。その過程で明らかになる当時の警察上層部の非道と、ンゴウたちに刻まれた復讐の念の深さ、そしてそれでも衝突せざるを得ないふたりの業と宿命と。 これも“loyalty and sacrifice”を巡る終わりのないドラマだとは思うものの、明の時代からなんて入り組んだ面倒なところまで来てしまったことだろう、って。なにが被さって乗っかってここまで…?  “power and order” ?

車も含めたアクションはやたら派手で、最後の市街戦は”Heat” (1995)みたい(いやあそこまではぜんぜん)だったりもするのだが、度肝を抜かれるようなところまではいかなかったかも。どこまでも終わらないくどい殴りあいでも、なんかどこか安心して見ていられたような(←それじゃだめなのよね)。

なんか、真似できなさすぎ、っていうのもあるのかも。『忠烈圖』とか素敵なカンフー活劇って(ダンス映画も)見終わったら体動かして誰かに絡みたくなったりしない?(絡んではいけませんが)。 高度すぎて痛そうすぎてそれができないのってむず痒いかも。

そういえばJohnnie Toを随分見ていないことに気づく。見たい。

普段、音はでっかい分には文句ない派なのだが、なんか耳障りなくらいに(よくない意味で)やかましく感じたのは気のせいだろうか? 全部の音が中域にだんごになっているような。


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