1.17.2022

[film] All I Desire (1953)

シネマヴェーラで年末から始まっている(今週でもう終わっちゃう..)特集 - 『Strangers in Hollywood1』はどれもとってもおもしろくて全部見たいのばっかしだったのだが、年末はあちこちでいろんな特集ばかりやっててムリで、以下、見た順でざーっと備忘の感想を書いておく。

ぜんぶ見ている時間はなさそうだったのでダグラス・サークのを中心に見て行ったのだが、まあとにかくサークの底なしでおもしろいこととんでもないこと。サークは見られるやつぜんぶ見なきゃ、になった(けどやっぱし見れないの多数だった)。

Phantom Lady (1944) - 『幻の女』

12月18日の土曜日に3本みた、その最初の1本。
監督はロバート・シオドマク、原作はウィリアム・アイリッシュの有名なやつ(あらすじはすっかり記憶からおちてる)だが、映画はノワール&サスペンスとしておもしろい。

エンジニアのScott (Alan Curtis)が結婚記念日に妻と喧嘩して家を出て、バーに行って、カウンターの横に座った女性を誘って妻と一緒に見る予定だったショーの余ったチケットで観劇して家に戻ると警察がいて(誰が通報したんだろ?)妻は殺されていて、Scottは容疑者として捕まっちゃって、彼を密かに想っていて無実を信じる秘書のCarol (Ella Raines)がひとりで捜査をはじめるのだが、カウンターにいた女性はカギとなる変な帽子と共に行方不明、バーのバーテンをはじめ証人になってくれそうな人たちはぜんぶ知らないと言い張るのでなんか変だぞ…  になっていって。 途中でわかってくる犯人の手口の巧妙さと証拠を追って夜の街に分け入っていくCarol気をつけて、って後半に盛りあがっていくサスペンスがたまんない。


The File on Thelma Jordon (1949) - 『血塗られた情事』

これもロバート・シオドマク監督作で、Barbara Stanwyckさまが出てくるので見ないわけにはいかない。

Thelma Jordon (Barbara Stanwyck)が地方検事局に現れて地方検事補のCleve (Wendell Corey)に金持ちの叔母の家で起こっている強盗未遂のことを話す。うざい義父にうんざりして妻とも疎遠になっているCleveはThelmaに惹かれていって、やがて起こった彼女の伯母の殺人事件でもThelmaに助言して自分が入った法廷で無実を勝ち取るのだが、そこからゆっくり明らかになっていくThelmaのおそろしさときたら..  もちろん、これぞBarbara Stanwyck、なのでとっても盛りあがる。

“Phantom Lady”と”…Thelma Jordon”の2本は合わせ鏡のようになっている気がして、前者では男性が裁かれて後者では女性が裁かれて、事件の白黒というよりなぜそういうことになってしまったのか、をめくるめくテンションと共に追っていって、どちらも落下して終わる。ここでの「ノワール」って男性から見えない女性の闇、のような扱いにされている気が。


All I Desire (1953) - 『わが望みのすべて』

これもBarbara Stanwyckさま主演で、監督はダグラス・サーク。
ウィスコンシンで暮らしていたNaomi (Barbara Stanwyck)は女優になる! って主婦と子供たちを捨てて家を飛びだして10年くらいで、威勢よく出ていったものの実際にはボードヴィルショーのどさまわりで腐っているのだが、次女のLily (Lori Nelson)が高校の卒業式で女優デビューするので戻ってきて、という手紙を貰って、少し悩んでから帰ることにする。

帰ったら次女は大喜びで、でも彼女の不在のつけをひっかぶった長女Joyce (Marcia Henderson)の目は冷たいし彼女のことを知らずに大きくなった長男もいるし、夫Henry (Richard Carlson)は当然複雑だし、家を飛び出すきっかけのひとつだった地元のアウトドア男 (Lyle Bettger) - 近所もみんな知ってる - は長男と仲良くなっているし、Naomiはパリで成功した女優ということになっているし、Lilyはママについていって女優になりたい、なんて言い出すし..

Barbaraの2本立て、として見ると家の外に出ていく彼女と家の中に戻ろうとする彼女と、どっちもものすごく大変そうで、でもこの大変さを男性の役割期待云々から大きく逸脱したところで女性のドラマとして堂々と演じることができるところが彼女なのよね、とか。

Barbara Stanwyckの母娘モノというと、“Stella Dallas” (1937)があるし家族のメロドラマだと“There's Always Tomorrow” (1956) – これもサークの - があるけど、これもエモが溢れかえってすばらしくよくて、とにかくこんなのが80分きっかりでまとまってしまうのがしんじられないったら。

(まだ続く)

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