1.10.2022

[film] Spider-Man: No Way Home (2021)

1月7日、金曜日の晩、二子玉川の109シネマズで見ました。IMAXのレーザーで。

またネタバレのよいわるい議論が巻き起こっているのを目にしたが、正式公開後のそんなのは”Spoiler Alert”って頭に掲げておけばよいだけのこと。そんなことよりこんな素敵なクリスマス映画を直前になんの邦画に配慮したのかしらんがリリース時期を延ばして、しれっとした顔で超くだんない応援キャンペーンだのでへらへらお祭りしている配給会社の殿様体質の方がよっぽど問題だと思う。 ネタバレに異様に過敏で神経質になってしまうマインドと業界側のなんでもありがたいと思え体質と政治家だのお偉いさんに平伏して文句を言えない中間メディアのありようって、ぜんぶ地続きの病気ではないか。いけてない学園のとてつもなください風紀委員。あーくだらないー。

前作”Spider-Man: Far from Home” (2019)の最後でMysterio (Jake Gyllenhaal)に正体を明かされ、それを極右ゴシップメディアのJameson (J.K. Simmons)によって大々的に拡散されてしまったPeter Parker (Tom Holland)はどこに行っても散々で、証言してほしいNick Fury (Samuel L. Jackson)は出てきてくれないしMayおばさん (Marisa Tomei)はHappy (Jon Favreau)と別れる別れないでそれどころではないし、MJ (Zendaya)やNed (Jacob Batalon)とはよい関係だけど大学は本命のMITを含めてみんな落ちちゃうし、最後の頼みの綱でDoctor Strange (Benedict Cumberbatch)のところに行って、魔法の力で人々の記憶からPeter Parkerの名前を消して貰えないか、と頼む。でもやるとなったら、やっぱりあの人とあの人は対象から外してとか駆け込みで例外処理を詰めこんだらバグって別次元からPeter Parkerを知っている怪人たち - Doc Ock (Alfred Molina)とか、Electro (Jamie Foxx)とか、Sandman (Thomas Haden Church)とか、The Lizard (Rhys Ifans)とか、Green Goblin (Willem Dafoe)とか - がわらわら現れてパニックになる。

どうするんだようドラえもん! てなったので、一応連中を檻に入れて元に戻す手筈を整えたところで、彼らは戻ったらどうなるの? - まあ運命として死ぬよね、と言われたPeterは、その前に彼らをcureしたい、って言いだして..

この辺まで、映画のつかみはさいてーだし、その後の展開はなし崩しでおもしろくなくて、そもそもの事件を追っていた統括責任者のNick Furyが出てこないのがひどいし、のび太の願いをそのまま受けてしまうDoctorもいいかげんすぎるし、Peterもあれこれひっかぶって混乱しているのはわかるけど少し落ち着けだし、どうするのよ、になったところで - この先からバラすよ。

最初の予告でDoc Ockが出てきたところでそうなるだろうな、と誰もが思っていたとおり、同じPeter Parkerとして、Andrew GarfieldとTobey MaguireのSpider-Manがポータル越しに入ってきて、やっぱり「治療」なんてされてたまるかって暴れだしたElectroやGreen Goblinを相手に一緒になって戦うの。 そのなかで、大切な人を失うことの辛さとそれでもぼろぼろになって戦う - 殺し合うことの虚しさなんかが大波となって押し寄せてきて、そこでPeter Parkerたちはあの有名なライン - "With great power comes great responsibility”を改めて噛みしめることになるの。これがTobey Maguireの”Spider-Man” (2002)の最後に語られた時、NYはまだ911の傷とブッシュ政権が煽るイスラム圏への報復措置への恐怖で揺れている最中だった。そしてこれがSNSでフェイクの砂嵐が吹き荒れる20年後の今にリプライズされる意味 - 狙っているところはまちがいなくあるの。

Peter Parkerたちは次元を超えた邂逅を経て改めて自分がPeter Parkerであることの意味を再確認して、それはなによりもこのシリーズを通してPeter Parkerと共に学んだりはらはらしたり成長してきた我々に、そういうことだったんだよね、って改めて強く訴えかけてくる。ずるいとしか言いようがないけど、3人が揃うことの意味ってそれ以外に考えられない。 “Endgame”でAvengersが戻ってくるあの瞬間以上のエモが吹きこんでくる。あれは5年だったけどこっちは20年。

ねえ、Andrew Garfield PeterがMJを抱きとめた瞬間のなんともいえない表情、みた? あれだけでもうぜんぶ許しちゃった。”The Amazing Spider-Man”の3を作ってあげてもいいんじゃないか。Paul Giamattiがあの後どうなったのか、見たいし。

もういっこ、”responsibility”に込められた正義と悪のありようについても。映画に出てくる悪人たちはそれぞれの止むに止まれぬ事情の中でああなってしまったのだからそこに向き合う- cureする必要がある、というTom Holland Peterは、自分が炎上して悪役にされたことで初めて気づく。Andrew GarfieldがElectroにごめん、て言うところとかも。

“Peter Parker”の名前を追って向こうからやってきたのが野郎ばかりだった、という件はもう少し根が深そうなので、考えてみる。なんでまだ子供のPeterにばかりあんな重い試練を与え続けるのかについても。

そして今のPeter Parkerにとって辛く切ないのはここで終わらなくて、最後の危機を食いとめるためには改めて人々からPeterの記憶を全て消すしかないのだと言われて、彼はそれを受けるの。MJやNedと一緒に過ごした時間も記憶もどこかに消えてしまう。”Yesterday” (2019)みたいなことになってしまうけど、”About Time” (2013)みたいにやり直せばよいのだ、って - どちらも英国映画だけど。

Tom Holland Peterの3部作のタイトルに付けられた”Home” - “Family”ではなく - の意味、そして最後にやってくるクリスマス..    あのシーンにHawkeyeやKingpinが映りこんでいなかったか、もう一回見て確認しておきたい。

エンディングに流れるのはRamones → The Go-Go's ときて、今回はDe La Soulの”The Magic Number” ! まったく異議なし。



RIP Bob Saget..  90年代の初め頃、日曜の晩の”America's Funniest Home Videos”のホストだった彼にどれだけ救われたことか。ありがとうございました。

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