3.20.2020

[film] Peter Ibbetson (1935)

13日、金曜日の晩、BFIのTilda Swinton特集で見ました。これはTildaさんが出演している作品ではなくて、これまでの彼女が出てくるイベントとはちょっと違った。

シアターに入るとTildaさんと相方のMark Cousinsさんがステージの端にちょこんと座り足をぶらぶらさせて仲良く話をしたりしている。でも誰も近寄れないかんじ。神々しくて。

時間が来ると、ふたりが立ちあがって”The State of Cinema”と大書きされた横断幕を広げて、更にステージ前方にいた人たちが立ち上がり手書きのパネルを手にしてこちら向かってアピールする。パネルには映画監督の名前 – “Akerman”とか”Ida Lupino”とか”Ozu”とか”Bresson”とか”Jarman”とかあって(自分のいた席から確認できたのはそれくらい、もっとあった)、それが終わると暗くなったステージ上でぴかぴか光るライトを手にTildaとMarkが”Tainted Love”の誰かのカバーでダンスするの。で、一連のパフォーマンスが終わると(結構長く激しく踊っていたのにちょっとしか息切れしてないのすごい)TildaとMarkのトークが始まる。

ふたりは2008年からスコットランドの田舎でBallerina Ballroom Cinema of DreamsていうFilm Festivalをやっていて、このBallroomはかつてWhoやPink Floydもライブをした素敵なところらしいのだが、そこを8 ½日間借り切って食事もみんなで持ち寄ったりの手作り上映会をしたのだと。横断幕はその際にも掲げられたもので、この”The State of Cinema”については、2006年、Tildaさん自身がSan Francisco International Film Festivalでスピーチした内容がここにある。

https://www.awardsdaily.com/2014/04/16/tilda-swinton-on-the-state-of-cinema-2006/

映画人として、今の映画産業のありようや将来を踏まえ、それでも人は、子供たちはなぜ映画を必要とするのかを自分の見てきた映画、これから見たい/見られるべき映画について、自身の使命も含めて包括的に語っている。彼女がなぜ俳優として映画界から求められるのか、なんでこの人がこんなにかっこよくて慕われるのか、これを読むとわかる。

そういう話を一通りした後で、これから上映する2本については、どちらも本当に大好きな映画なので、ここで紹介できるのが嬉しくてたまらない、と。”Peter Ibbetson”は昔パリで見て打ちのめされた(brown away)。監督のHenry Hathawayは西部劇を主に撮って“True Grit” (1969) の最初のやつが有名だけど、これはとにかくすばらしいので気に入ってもらえたら嬉しい、って自分も客席に座る。(ふつうこういう映画の紹介とかって、紹介したら会場から立ち去る人が多いけど、彼女はほぼすべて、自分が紹介した後に席に座ってみんなと一緒に見るの。すごいよね)

あと、今回彼女の相手をしたMark Cousinsさんはドキュメンタリー映画作家でもあって、彼の”The Eyes of Orson Welles” (2018)は見ていたし、間もなく公開される”Women Make Film: A New Road Movie Through Cinema”は予告見たけど必見だとおもう(Tildaさんも参加している)。

A Portrait of Ga (1952)

スコットランドのオークニー諸島のおばあさんの佇まいをおさめた5分の短編。おばあさんは監督のMargaret Taitのお母さんで、聞こえてくる素朴な笛の音も含めてほっこりしかない。あの地域って、いつもお天気予報みるとひどそうなのだけど、一度行ってみたい。

Peter Ibbetson (1935)

原作はフランスのGeorge du Maurierの同名小説(1891)。邦題は『永遠に愛せよ』。

Tildaの登場を待っている時、隣に座ったおじいさんから、君はこの映画を見たことがあるか? と聞かれて、いえ、ありません、と返すと、わたしは40年ぶりなんだよ、本当に楽しみで… と言う。かっこいいなー、いつかこんなことを言ってみたい。 

パリの郊外のおうちに暮らす少年Gogo(ごーごー)は隣に住むMimseyと喧嘩ばっかりしているのだが本当は仲良しで愛おしいと思ってて、でもGogoのママが亡くなると彼はおじさんに連れられてイギリスに渡ることになって、ふたりは悲しいお別れをするの。

時は流れて、イギリスで母の旧姓を名乗りPeter Ibbetson (Gary Cooper)となったGogoはばりばり働く建築家で、ヨークシャーのDuke of Towersの邸宅の改築を任されて図面をひいていると施主の奥方のMary (Ann Harding)がいちいち突っこんできて、なんだこのやろうは、って思う。でも互いになにかが引っ掛かってくるのでやりとりしていると、やがて恋に落ちて、ふたりはあのGogoとあのMimseyであることを知って更に盛りあがるのだが、嫉妬に狂った彼女の夫は銃を持ちだしてきて..

Peterは終身刑になって更に牢獄で寝たきりになり、Maryはどこまでもふたりの愛を信じて..
ここから先は書きませんけど、「本当に愛し合っているふたりは」のテーマを見事に映像化したすばらしく切ないファンタジーが展開される。悲しくはなくて、よかったねえ(泣くけど)、なの。

こんな美しい作品があることを教えてくれたTildaさんには感謝以上のなにがあろうか。
隣のおじいさんとは上映後、目を合わせて「その通りでした」 - 「ほらね」ってやった。

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