3.12.2020

[film] Orlando (1992) + Will We Wake (1998)

2日、月曜日の晩、BFIで見ました。

みんなこの3月はいろいろ大変だと思うが、BFIではTilda Swintonさんの特集が組まれていて、彼女が作品の上映に合わせてちょこちょこやってきてイントロしたりQ&Aしたりしてくれる。既に3回くらい行って彼女のおしゃべりを聞いた。BFIに行けば彼女に会える(かも)って、それだけで明日も生きてみようか、ってなる。 というくらいにすばらしい人だというのがわかったの。

Londonに来てこの映画を見るのは2度目で、前回は2018年の夏にCurzonで見て、この時は作家のDeborah Levyさんと丁度“Free Woman: Life, Liberation and Doris Lessing”という本を出したばかりだったLara Feigelさんの対話があった。話の中心はフェミニズム観点からのあれこれだった気がする。

今回の上映はイントロで監督のSally PotterさんとTilda Swintonさんが登場する。BFIの売店では(他でもあると思うけど)女性映画人Tシャツ - 白地に黒字でGreta GerwigとかAgnes VardaとかClaire Denisとか名前がプリントしてあるだけの – をいっぱい売っていて、そこの”Sally Potter”シャツをTildaさんが着て、”Tilda Swinton”シャツをSallyさんが着て、Sallyさんが小さいのかTildaさんが大きいのか身長差がありすぎるコンビで、はしゃぎまくりの仲良し漫談みたいになっていた。

5年くらいふたりで構想を練っていたけど予算がなくてお金を出してくれたのがソ連のLenfilmでこれが彼らにとって最初の海外プロジェクトだったのでいろいろおもしろかった、とか、映画作りの基本がわからなかったので手作りの手探りが続いて、コスチューム担当のSandy Powellさんはやはりお金がないのでShoreditch近辺で布地や古着を漁っていたとか、それら記念品の数々は展示スペース(今回の特集に合わせてなんかやっているらしい – 行かなきゃ)にあるから見てねー、って。

本編上映前にTildaさんの初監督作品である“Will We Wake”(1998)が上映された。9分間の短編で、彼女の双子の赤ん坊 - XavierとHonorが食べ物をむしゃむしゃしながら微睡んでそのまま落ちていく寝顔を一人づつ、ゆっくりクローズアップして引いて、ただそれだけなのだが赤ん坊の寝顔ってなんでこんなに... としか言いようがない。 このうちのひとり - Honorさんが昨年”The Souvenir”で見事な女優さんになったこととこのタイトルを被せるとなんかたまらず..

改めて見た“Orlando”は、初めから終わりまで見る快楽・聴く快楽が全方位で襲ってきて、たまんなかった。所謂「名画」(評論家が選ぶランキングに入るようなの)とは違う種類のやつだと思うのだが、先の赤ん坊の映画と同じようにOrlandoの頬っぺたを眺めていられればそれで幸せ– ルーベンスの頬っぺたにじーんとするのと同じように。

時間を超え、性を越え、国を跨いだ500年に渡るOrlandoの移動と変容の軌跡。宇宙人と戦ったり悪魔をやっつけたり革命を起こしたりするわけではなく、ただそこにいて人と交わり、数百年のレンジでその美しさが変わらないというのは常に自分が変わり続けているからだ、ということ、その驚異をTilda Swintonはこちらを見つめるだけで – その時その場にいた人も、我々観客も瞬時に納得させてしまう。 Virginia WoolfがVita Sackville-Westを見つめた目もこんなふうだったのではないか。恋の魔法ってこういうもの。

そして、彼女はひょっとしたらひょっとして本当にOrlandoなのかも、ってここ数日、彼女の話を聞けば聞くほど思うようになった。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。