3.29.2020

[film] Man to Man (1992) + Caprice (1986)

16日、月曜日の晩、BFIのTilda Swinton特集で見ました。Covid-19のために17日からBFIは閉まってしまうのだが、この晩にはそんな様子はまったくなかったの。 こんなことになるならこの後の“Michael Clayton” (2007)も見ておくんだったなあ、って後悔してからでは遅いので普段から機会を逃さずに見ておかないとねえ。

最初にTildaさんが出てきて、いつものように来てくれてありがとう、ってひと通り喋ってから、今日ここに来るはずだった”Man to Man”の監督のJohn Mayburyは例の件で来れなくなってしまったけど、とJoanna Hoggさんを紹介する。最初に上映する”Caprice”の監督として。

Caprice (1986)

ふたりは同じ60年生まれだし、なかよしなのだろうな、と思っていたら本当にそんなふうで、互いにあんたここで変なこと言ったらただじゃおかないからね、の火花を飛ばして刺しあう空気に満ちていておもしろいったら。

この”Caprice”は監督のNational Film and Television Schoolの卒業制作として作られたもので、Tildaさんの出演している映画としては最も初期のものだという。映画“The Souvenir” (2019)で、主人公のJulie (Honor Swinton Byrne - Tildaの娘さん)が卒業制作用のフィルムを準備している設定があるのだが、そのフィルムというのが実はこの”Caprice”で、あそこでJulieが着ている服というのも実は.. などの驚愕のネタも明らかになり、監督からはこの”Caprice”は、今年公開予定の”The Souvenir Part II”の内容にかなり直結してしまうので公開を禁じているのだが、今回だけは特別だから許した、って。

ロンドンの街角の雑誌スタンドで、その日発売予定のファッション誌”Caprice”を楽しみに買いにきたLucky (Tilda Swinton)が雑誌を手に取ると、その雑誌の世界に迷い込んでしまって、それは夢のワンダーランドだった ...  という27分の短篇。

プロダクションも小物もファッションも、音楽(シンセがぐいぐい盛りあげる恥ずかしいくらいの80’s音楽をオリジナルで作っている)も手作り感と工夫に溢れていて、とにかく楽しいの。客席のTildaさんも楽しんで見ている(のが見えた)。 Manolo Blahnikの名前がでっかく出たりしているのだが、協力したりしているのかしら?

いまの若い子にはわかんないかも知れないけど、ファッションが憧れで輝いていてファッション雑誌も本当にかっこよかった時代 - 金持ち階級の見せびらかしではなく、まじで先端と呼ぶにふさわしかった時代、というのがあって、それがこの頃だったのだよ、ってこれを見てもらえば説明できるの。

ファスト・ファッションなんて死んでも着たくないあんなの着るくらいならボロのがまし、ていうどうしようもないマインドと、いまの雑誌スタンドに行っても、ブランドにじゃんじゃかお金だしてもらって作られた重いばかりの紙束が並んでて、こんなのがクリエイティブとか言われるんだから安いもんだよね、って嫌味ばかり吐くようになってしまったのは、この頃のこういうのがあったからです、とも言えるの。

Man to Man (1992)

ドイツのManfred Kargeによる一人芝居で、1987年にTildaさんがまずエジンバラで、続けてロンドンのRoyal Courtsで演じたものを、映像として残せないか、と監督のJohn Maybury - Derek Jarman繋がり - のところに持ちこんで出来あがったものだという。

ぼろアパートの一室でぼろぼろの老婆 - Ella Gericke (Tilda Swinton) が、ナチス政権下のドイツで、生き残る/生き延びるために亡くなった夫になりすまし男として生きた半生 - 転々としていく職業の扮装をしながら、言葉も態度も当然男ぶりぶりになりながら振り返っていく。

Manfred Kargeが20年代の新聞記事を見て書きあげた実話が元で、ジェンダーとか性役割に関するとても政治的なテーマを含んでいる作品だと思うのだが、映画自体は目紛しく変わっていく彼/彼女の百態に釘づけで、言葉遣いもころころ変わってよくわかんないのも沢山あるのに目が離せない。
変装百態というとCate Blanchettさんのが有名だった気がするが、こちらも相当。

でも、できれば演劇の方でも見たかったかも。

こうしてTilda Swintonさんとの短かった半月は終わってしまった。それまで知らなすぎたのかも知れないけど、彼女のことを知れば知るほど自分の世界もその光を受けてぐいぐい広がっていく、こういうことってそうあるものではないから、彼女にはありがとう、って何千回でも言うしかない。


ロックダウンされた世界の死者の数はどんどん広がっている。BBCを見てうう、ってなり、CNNを見てああNYはだいじょうぶかしら、になり、Euronewsを見てがんばれイタリアとスペイン、になり、だいたいこの3局をぐるぐる回っている。 日本の対応を見ても怒りと絶望しかこない。 これらを見ていると人類はだいじょうぶだ打ち勝てるなんて、ぜったい思えないわ。

もう我慢できなくなってPCで映画を見始めました。DVDはこっちでは買っていないので、BFIとかCurzonがやっているやつ。 映画館を少しでも助けることができるのであれば。

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