3.25.2020

[film] Caravaggio (1986)

15日、日曜日の夕方、BFIのTilda Swinton特集で見ました。

上映前に廊下でファンに囲まれているTildaさんを見かけたが、この上映回には現れてくれず。
やっぱりサインとか貰っておけけばよかったかなあ。

この作品、当時まわりはみんな見ていたし西武系で文系は見ておくべし、って話題になっていたし見ておけばよかったかなあ、だったのだが見ていない。ルネサンス期だけではなく現代のシンボルあれこれが出てくるって聞いてあーってなったし、Caravaggio自身のことをもっと勉強したり見たりしてからにしたい、とか思ったし、ゴダールの”Passion” (1982) みたいなやつかしら、とか思ったし。お金もあんまなかったし。

本編前に上映されたのは”Romeo I lack from Flavio” (2018)っていう6分間の短編で、監督はTildaとSandro Kopp(Tildaのパートナー)。ヘンデルのオペラ- “Flavio”からの一節をバックに水辺でばうばうはしゃぎまくる5匹のEnglish Springer Spanielが撮られていて、音楽と見事なシンクロを見せる - まあどう撮ってもそうなるのかも知れないけど、なかなかのダンス・ムーヴィーで、きれいに終わるのでぱちぱちが起こる。あんな5匹に毎日囲まれていたら楽しいだろうなー。

そして”Caravaggio”。 16世紀の、たぶんナポリで、鉛毒でぼろぼろになって死にかけているCaravaggio (Nigel Terry)が回想していく形で当時の画壇やパトロンや周辺のごろつきとのあれこれとその時々で彼が制作していた絵画が向こうに見えたりする。

人間関係では町の喧嘩野郎のRanuccio (Sean Bean)とその連れのLena (Tilda Swinton)との金と欲にまみれたべたべた生臭い三角関係とかがあったりするのだが、基本的な振る舞いは野蛮で下衆で、でも絵画のところにくるとどうも天才なのでみんながうむうー って唸る。 それは現代の我々が彼の絵を見て感じる、この闇の奥にどれだけの混乱と非情と暴力があるのだろう、って震撼するのとリンクしているようで、ロックンロールスターの物語と同じようなかんじで、そこはよいのか。でもこれ、Caravaggioのお話し、っていうのが認識されていなかったらどうなのだろうか、とか。

歴史上の人物 - でも英雄でも暴君でもなく、遺されているのは圧倒される絵画いくつか、そういう人物とその作品から背景の歴史の書割を取っ払って、痴情沙汰とか成りあがりとか闇取引とか怪しげな、でもいかにもありそうな挙動とかうす汚れた歪んだ表情のなかに浮かびあがらせる。これって芸術作品の堂々たる普遍性の反対側にある一回きりの、死んだらそれまでよの刹那の中間にあって、Derek JarmanはCaravaggioの絵画にある静謐さと野蛮の共存の向こう側にそれを見たのではないか。

絵を描いているときのCaravaggioは対象のモデルを見つめつつ、そのモデルが模している神話上のあれこれとどう関わろうとしていたのか、というのと、この映画でDerek Jarmanが現代の俳優と撮影技術、アイテムを使って再構築しようとした16世紀のCaravaggio - ローマのありようは対照をなしているような。つまりこれは現代の物語 - 86年当時のアートはどこに? - ではないのか。 こんなふうなアートに向かう態度が90年代のブリットではどう変容していったのか - この辺があの動きの下地としてあったような気がするのだが - 考え中。

Lol CoxhillとかSimon Fisher Turnerも出てくるのね。


さて、在宅勤務が始まって1週間くらい経って、もういやだ飽きた。
住んでいるところってさー、仕事がやだやだって泣きながら逃げこんだ先 - 映画館とかライブハウスとか美術館とか本屋とかレコ屋とかから拾いあげたり掬いあげたりして持ち帰ったアンチ仕事グッズが山ほど積んである場所で、広いおうちならそこからquarantineされた別の場所を設けるのだろうけどそんなのないし、そうすると仕事も現世もくそくらえのモノたちに囲まれて仕事することになって、ムリなのよ。 電話会議とかしててつまんないからちょっとよそ見して、おやこの山は?  とか、この箱って? とか掘り始めると止まらなくなって、そうすると向こうのほうで「もしもしー?」とかやってたり。

そういうわけなので、外にでないと頭がおかしくなる気がして、ロックダウンとは言っても必要最小限(basic necessities)の買い物のために外出するのは許されているので、外には出て、歩けるところまで歩いたり。 まだ風は冷たいけど年に数回あるか、っていうくらいのほんとにすばらしい陽気なのがくやしい。 ぽつぽつ外を出歩いている人達はいて、でも歩道で向かい合うとまだ遠くなのにどっちも譲って距離をとる。
スーパーは先週のような棚がらーんの物不足は解消に向かっているかんじ、ないものは変わらずないけど、なんとかなるじゃろ、な空気になってきている。

先週まで本屋もいくつかは開いていたのだが、もうみんなクローズしてしまった。本て、生活必需品じゃないんだって、さ。

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