3.01.2020

[film] Lourdes (2009)

もう3月かあ。早すぎないか?

2月23日、日曜日の午後、BFIのJessica Hausner特集で見ました。
上映前にJessica Hausnerさんと一緒に脚本を書いたGéraldine Bajardさんのふたりが簡単なイントロをした。この映画の取材のためにルルドの泉に行ったのだが、ここは助かる見込みがあるとは思えない人たちが最後の救いを求めていっぱい来るところなので、それはそれはすごい光景があって忘れられなかった、とか。
上映後にもQ&Aがあったのだが、次の映画の時間があったのでそれはスキップした。

奇跡を起こすとされるフランスのルルドの泉に巡礼・療養ツアー(食事から治療から祈祷からいろんなアクティビティまでパッケージされている)に来ている車椅子のChristine (Sylvie Testud)がいて、付き添いで介護をするMaria (Léa Seydoux - まだぽっちゃりさん)は傍にいることはいるのだが目を離すと遊びに行って放ったらかしにしていたり、でもChristineは半ば諦めているのかツアーのいろんな行事にきちんと参加していて、そんな彼女を母のように横で見守っているおばさんとか、すこし位が高めのシスターとか、みんなにあれこれ問い詰められてばかりで大変そうな神父とか、いろんな人たちがいる。そういうのがそれぞれの患者ごとに一連隊ついていて、みんなそれはそれは真剣に切実に奇跡とか神の加護を信じて期待していて、よいこでないとそういうのは来ないから危険な惨劇みたいのは決して起こらない。 見守る人たちはみなよい人たちだし、見守られる人たちも同様。

でも何かがきっかけで奇跡みたいなことが個別に起こることはたまにあるようで、でもそれが起こっても嫉妬したりはしない(はず)。で、ツアーの終わりくらいにそれがChristineに起こったらしく、夜中に突然麻痺していた両手が動いて、車椅子から立てるようになってしまう。 周囲はざわざわして、これって奇跡として認定されるのかとか、これは一時的なものなのか恒久のものなのか、いろいろ複雑そうなのだがChristineはとりあえず嬉しそうで、お別れの会では少し憧れていた軍人さんとダンスをするところまでいくのだが…

ストーリー上(Christineが主人公ぽい、という点を除いては)、これがChristineひとりに起こる事情や理由が説明されることはないので、これが奇跡と呼ばれるものなのか彼女の身体に起こった単なる変異なのか誰にもわからないのだが、そういう場所なのでみんなでよかったねえ、になって、エモの波とか熱だまりみたいのができる。取り憑かれる/取り憑く、という程強いものではない、その場所と時間をゆるりとかき混ぜて溜まっている見えない空気のようなものを描く - デビュー作の”Lovely Rita” (2001)にもあった - のがうまいなあ、って。

これがひとりの身に起こったところで何が変わるわけではない、という点で奇跡も殺人も同じようなものかもしれない、とまでは言わないけど、幸せってなんなんだろうねー、というのはじんわりと来て、これは監督の新作 “Little Joe”でも追求されている模様。見ないと。

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