3.26.2020

[film] Naissance des Pieuvres (2007)

書き忘れていたやつ。11日、水曜日の晩、”The Seasons in Quincy.. ”の後にBFIで見ました。
今は映画館が閉まっているので公開されていないけどOn Demandとかでは公開中の“Portrait of a Lady on Fire” (2019)が大評判のCéline Sciammaさんの小特集がBFIでは組まれていて、これは彼女の監督・脚本デビュー作。 原題を翻訳にかけると「タコの誕生」…  英語題は”Water Lilies”。

彼女の監督・脚本作って”Tomboy” (2011)があって”Girlhood” (2014)があって、脚本だとあのすばらしいアニメーション”My Life as a Courgette” (2016) - 『ぼくの名前はズッキーニ』 - があったりするので、嫌いになれるわけがないの。

パリ郊外に暮らす3人の15歳 - Marie (Pauline Acquart), Anne (Louise Blachère), Floriane (Adèle Haenel)がいて、MarieとAnneはずっと凸凹の素敵な友達同士で、AnneとFlorianeは部活(?)でシンクロをやっていてそれを眺めていたMarieはダントツでかっこいいFlorianeにぽーっとなって、彼女にくっついていって部にいれてほしい、と言う。 なんだこの変な娘は、って見ていたFlorianeは彼女を家に呼んで、その陰で男の子とデートをする口実にしたり、てきとーにあしらうのだが、彼女があまりに素直で一途なのでだんだん傾いていく。 部に入ってもいいよ、と言われたMarieは水着でプールに入るのだが、水面下でチームが曲芸みたいな仰天技を繰り広げているのを見て度肝抜かれてやめて、でもFlorianeには犬のようにくっついていく。

男女それぞれの人気もので女王様として振るまうFlorianeにもいろいろあるし、クラブで変なおやじに連れ去られそうになった彼女をMarieが救ったり、Anneは片思いしている男の子といろいろえー、みたいなことがあるし、どいつもこいつも危なっかしいのではらはらしながら見てしまう(← 親の気分か)のだが、最後はとりあえず。

わたしは彼と/彼女と一緒にいたいんだ - 彼の/彼女の時間をひとりじめしたいよう、って、そればかりで悶々していて、そこから一線を越えるまでの切なくてやりきれない思いと、超えた後のどうしようもう戻れないや、の底のない不安があって、でも君は君なんだからだいじょうぶだよ、って。言葉にするとめちゃくちゃ蒼くて恥ずかしいことでも、この人の映像はその距離感と落ちついたフレームがとても優しく暖かい。きりきりするシーンがあっても、見たあとにどこかふわっとくるものがくるの。

このデビュー作の頃からずっと大人と子供の中間地帯を彷徨う若者とか子供の惑いを見つめてきて、それがこの間の”Portrait of a Lady on Fire”では大人の女性の恋を画面に、まっしろな画布に定着させてみようとする。それがすばらしいものになったのは、普遍的ななにかを信じているから、というよりも常に画面上で揺れるふたりのシルエットに魅せられているからではないか。

Floriane役のAdèle Haenelさんは、“Portrait of a Lady on Fire”でも火の玉お嬢様を演じていて、こないだのセザール賞授賞式のかっこいい退場劇でますます惚れてしまったのだが、それはこの頃から既にあったやつだったのかー、って。 筋金入り、としか言いようがない。

それにしても、こんなにも長い間、映画館にも本屋にも美術館にもレコ屋にも行かなかったのはここ数年間なかった。 そのうちなんかどうにかなってしまう気がして、どうなるのかしら、って少しどきどきしている。

夕方にスーパーに行くと、入り口ではだいたい入場制限をしていて、それは店内が混んでいるから、ではなくみんなが互いに距離をとれるように。 なので外で並ぶほうも1列になって、前後2m以上距離をとるように言われて、じっと待つ。 中ではとてもゆったり買い物できる。 小売のお店の場合は、そこまではしないけど、フランス系のパン屋はカウンターの前に非常線を張って、距離を置いてあのパンください、とかやるの。 現金は不可でコンタクトレスのカードで手を伸ばして。

それにしても、ほんっとに天気がよいのが腹立たしくて、それでも絶対に外に出ることができない人たちがいるし、外に出たくないのに仕事で出なければいけない人たちもいるし、それどころじゃない、病院で苦しんでいる大勢の人たちもいる。 なんだか全てがありえないところに倒立したりでんぐり返ったりしてしまう大島弓子の世界が目の前に来てしまったような。 で、あんたはどうしたいのよ? って聞いてくるの...

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