3.16.2020

[film] Dark Waters (2019)

4日、水曜日の晩、Picturehouse Centralで見ました。ひどい雨で地下鉄の駅に人が溢れて閉鎖され、間に合わなくなるところだった。
Todd Haynesの新作で、2016年にNew York Times Magazine に掲載された"The Lawyer Who Became DuPont's Worst Nightmare"をベースとした実話もの。

90年代の終わり、企業対策弁護士のRobert Bilott (Mark Ruffalo)が法律事務所のパートナーに昇進したところから始まり、West Virginiaの畜産農家のWilbur Tennant (Bill Camp)が大量のVideoを持ちこんできて、Robertのおばあちゃんから紹介されてきた、彼のところの家畜 190頭が変な死に方をしているのにどこの誰も取りあってくれない、と言う。自分は企業側の弁護士なんだけど、って言いつつも気になったので地元に帰って現場を見てみると明らかに牛さんたちの様子がおかしいし、彼に見せられた牛の臓器なんか ..

DuPont 側とは仕事で勿論深い関わりがあるので偉い人に問合せを入れつつ 自分でも調べていく(担当している企業なので資料はいくらでもある)とよくわからない単語とか腑に落ちない点が出てきたので更に掘り進めていくと..

DuPontが自分の会社にとっては顧客企業であること、地元ではここが長年雇用のコアになっているのでそう簡単に潰せるものではないこと、それが環境やヒトを含む動物に本当に有害であるかどうか、因果関係を含めて科学的に立証するのは相当に時間も掛かるし難しいこと、といったことは簡単に思い浮かぶので、これは大変かも、と思っていると映画の時間軸は約20年(つい最近まで)にも及んで、まだ続いているというのだからびっくりするし、これらにほぼひとりで立ち向かい裁判で勝ち続けているRobertには敬意しかない。

自分も00年代初のテフロン訴訟でDuPontが問題になった件はよく覚えているけど、その背後にはこんなどろどろがあったのかー、っていうのと、今も昔も大企業ってやつは .. っていうのは思う。こういうのがある度に規制だの監査だのの仕組みが強化されてそのためにものすごいお金と工数が掛けられて、でもそんなの苦しんだ人たちや家族の痛みに比べたらたかが.. なんだよね。

こういう大企業がもたらす災厄みたいなのって、これから来るに決まっている気候変動の件も含めるとかつての戦争以上にひどいやつだと思うし、格差の件も含めてなんとかしないとねえ。日本は昔のチッソといい今の東電といい、国とムラとが一体になって陰湿に執拗に攻めてくるのであーあ、って更に絶望的になるけど、こんなドラマとして表に出していくしかないのか。

Todd Haynesがこんなに政治的なドラマを、って言うひとは言うのかもしれないけど、わたしは彼のドラマはどんなメロドラマでも – “Carol” (2015)だって - 政治のドラマだと思ってきたので違和感はないし、むしろここまでストレートに出してきたのはすごいな、って。

所謂正義漢的な振る舞いからは遠く、重そうな移動を続けて最後までひたすらしんどそうな顔色のMark Ruffaloの演技、彼の妻のAnne Hathawayも、彼の上司のTim Robbinsも地味だけどよいの。最後の方でAnne HathawayとTim Robbinsが喧嘩するところなんてすごい迫力だし。

あと、今のコロナのもそうだけど、科学的にどう、っていところの解析は勿論大事だし必要だけど、それ以前に苦しんでいる人たちを(だれであろうと)救う、そういうベースができないとだめで、その点でにっぽんはほんとにだめな国になってしまったねえ(と、そこにばかり考えがいってしまう)。

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