10.30.2019

[film] Goodbye, Mr. Chips (1969)

BFIではLFFが終わったあとには派手に宣伝している”Musicals!”の特集が始まり、他にも地味だけど”Maurice Pialat and the New French Realism”の特集 - Pialat周辺の作家のもかかる - が始まり、ぜんぶ見たいのにぜんぜん見れていなくて泣いている。

これは20日、日曜日の晩、Musicals!の特集枠、しかも映画の50th anniversaryである、ということでQ&Aつきの上映会があった。

上映前のQ&Aに出てきたのはPeter O'Toole元夫人で、映画の中ではKatherineのかっこいい友人Ursulaを演じているDame Siân PhillipsとRaymond Ward .. って誰よ? というと映画の中の学芸会シーンでみんなで歌って踊るところでひとりだけ変な動きをして笑いを取るガキだったひと。(あのシーンは他の出演者には内緒でスタッフと自分でこっそり考えてやったのだそう)

Siân Phillipsさんの思い出話は、夫婦で映画に出ることについて自分は平気だったけどPeterはすごく神経質になってできるだけ一緒にいないようにしてて、でも撮影はリラックスしてみんなにとって素敵な夏の思い出になっているって。 あと、監督Herbert Rossのアシスタントであり奥さんだったNora Kaye(前夫がIsaac Sternだった)のエピソードとか。

原作の『チップス先生さようなら』は小さい頃に読んだ最初期の文庫本のひとつだったと記憶しているのだが、欠片も覚えていないのが悲しいよう。

上映は35mmで、現在ヨーロッパに現存するこの映画のフィルムの中では最良のコンディションのプリントだって。確かにうっとり。たまにぶちぶちしていたけど。

20年代の英国の、厳格な男子校のBrookfield Schoolでラテン語の教師をしているチップス先生 -Arthur Chipping (Peter O'Toole)はみんなに堅物の変な奴、って思われていて自分でもいいもんそんなもんだし、て思っているのだがある日歌手のKatherine (Petula Clark)と出会って、夏休み中のポンペイでも偶然に会って、話をしていくうちにお互いだんだん惹かれていって、ありえないありえないって自分で言いながらも結婚することになって周囲を唖然とさせて .. ずっとふたりで仲良しで。

イギリスの穏やかな地方の絵とゆっくり戦争に向かっていく暗い時代と、それでも来ては去っていく元気な子供たちとそれを迎える教師はあまり変わりなく移ろっていく、そういうゆったりとした時間の流れのなかで出会いがあって恋が生まれて、悲しい別れもあって。 という雲の行き来のような時がしっかり描かれているので、なにが起こってもうわあー!(歓)ってなる反対側で、悲しいことはほんとうに悲しく沁みてどうしようもない。 Arthurが長い手足で一目散に走り出すシーンとか、かきむしられるかんじ。

音楽もよくて、Petula Clarkが上手なのは当然として、Peter O'Tooleのぼそぼそした歌もボサノヴァみたいに聴こえないこともなくて、それと教師としてのC-3POみたいな(いや、あっちが真似しているのか)喋りが対となってなかなか素敵ったらない。

監督のHerbert Rossはこれが初監督作で、この次に”The Owl and the Pussycat” (1970)を撮っているのね。これも隣の、でも別世界から来た奔放系の女性にかき回される話だよね。

鴛鴦歌合戦 (1939)

20日の午後、チップス先生の前にBFIで見ました。 これも”Musicals!”特集の一本。英語題は”Singing Lovebirds”。
ミュージカルだろうがなんだろうが、BFIでマキノがかかるなんてえらいこっちゃ、とか、こいつぁめでてえ(ぴしゃ)とかそんなかんじで、なにがなんでも見にいく。

これ、大好きでLDも持ってて何度も見たし。
常連のお年寄りとかもいっぱい来ていて、あのTakashi Shimuraが歌って踊るんだぞ、うそー?  とかそんな会話をしている。
うん、歌って踊るのよ。

浪人浅井禮三郎(片岡千恵蔵)の周りに3人の娘 - 長屋の隣に住む仲良しのお春(市川春代)と、取り巻きがいっぱいいるお金持ちの娘おとみ(服部富子)と、昔の許嫁の藤尾(深水藤子) - がいて、貧困とか格差とか因習とかいっぱい問題はあるものの歌って踊ってしゃんしゃんしゃん、でよいの。 恋のさや当てとか、そういうのより骨董狂いのお春の父(志村喬)が他人事とは思えなくてかわいそうでならなかった。 あと、態度を最後まではっきりさせない浅井がいちばん悪いのでみんなでとっちめてやるべき。

デジタル上映だったのだが、画質がもうちょっときれいだったらなあ。日本の昔のって4Kリストアしたらすばらしいに決まっているのが山ほどあるのになー。でもお客さんはみんな大喜びで笑いながら見ていたのでなんか嬉しかった。 来週にもう一回上映あるよ。

これで『次郎長三国志』でもやってくれたらBFIにいっぱい寄付するのになー。

それにしても、いまFilm Forumでやっている”SHITAMACHI”特集のラインナップがすごすぎてうらやましいったらない。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。