10.23.2018

[film] Colette (2018)

London Film Festival (LFF)は21日の日曜日に終わって、その前に見ているのもいっぱいあるのだが、とりあえず書いていく。 今回LFFで見たのは11本、12日間の会期中、NY行ったり出張出たりで5日間が行けなくなり、買っておいたチケットのうち2枚がだめになった。あーあー

11日木曜日の晩、Embankment Garden Theaterていう、この映画祭のために公園内に特設された会場(駅前。スクリーンも音もでっかくて見やすい。椅子だけがたがた)で見ました。

作家Coletteの若い頃を描いた評伝映画。
最初に監督のWash Westmoreland, 主演のKeira KnightleyとDominic Westの舞台挨拶があって、監督曰く - 内容からすると#MeTooムーヴメントに乗っかったと思われるかもしれないが、脚本のRichard Glatzerさんが最初のドラフトを上げたのは2001年で、そこからずっと推敲を重ねていって、その後彼は“Still Alice” (2014)の脚本を書く傍ら自身のALSと戦って、亡くなる直前までこれを仕上げていたのだと(監督はRichardのパートナーでもあって、この映画は彼に捧げられている)。

フランスの田舎に暮らすColette (Keira Knightley)は20歳になる前に14歳年上のHenry (Dominic West) - ペンネーム"Willy"と結婚してパリに出て、出版をやっている彼の求めに応じて自身の経験を元に女の子 Claudineを主人公にした小説を(Willyの細かな注文を入れていったので共同作業のような形で、でも筆名はWillyで)出したらこれが当たってシリーズ化されて関連商品まで売りだされて、ふたりは裕福になって社交界でも注目されるようになるのだが、そうやっていろんな世界に触れれば触れるほどColetteはWillyの浮気性とか浪費癖とか彼女の書いたものが彼の作品として持ちあげられるのがだんだん嫌になってきて、自分は自分でダンスとか劇団のみんなとのどさまわりとか女性への愛などに目覚めてしまい、Claudineはわたしだ、あの小説はわたしの世界を描いたものなんだ、って啖呵きってぶち切れて別れるところまで。(彼女が”Chéri” (1920)や”Gigi”(1944)を書くずっと前のはなし)

女性が自分の名前と性を表紙に小説を出すことが難しかった時代、というとついこの間の”Mary Shelley”(2017)との関連を見てしまうのだが(作家として同じ括りにするつもりはまーったくないよ)、あれは19世紀初の英国の話で、これは20世紀初のフランスの話で、そこには約100年の開きと国の違いがあって、そこに今世界中で起こっている21世紀初のうねりを置いてみるとだいたい200年くらいかかっている。 こいつはそれくらいにしぶとくでっかいヤマで、ここで緩めて諦めちゃだめよね、というのは改めて思う。
(It's Alive! Frankenstein ..)

あと、これは後で書くけどLFFで見たドキュメンタリー”Be Natural: The Untold Story of Alice Guy-Blaché“も同じ文脈に置いてみると.. さらにああーってなる。

映画は、そういう不自由な闇に捕らえられてもがき苦しむColette、というよりも、田舎の暮らしも悪くないけど都会もやっぱすごいよね、って都市の雑踏に弾けとびながら自身を見いだして強くなっていく女性の物語になっていて、この娘がやがて”Gigi”を書くことになるんだねえ、というのは十分にわかるし、これを書いたRichardの思いもその辺にあったんだろうな、って。

もういっこあるのは、Willyって豆腐野郎が歳の差もあったからか結構緩くて間抜けで大らかで、割と簡単に折れたり謝ったり諦めたりしてくれる。これが粘着DV男だったらとっても厄介で悲惨だったかも、とか。

画面に出てくるファッションや風物がとっても印象派してて、むかしMetでみた“Impressionism, Fashion, and Modernity”の展示の世界 - Monetの”Luncheon on the Grass”とか -  のようで見てて楽しい。
物語をもう少しフィクションの方に寄せて、時代を少し前に倒して、ここにBerthe Morisotを登場させる、とかどうかしらん。

ほんの少しだけ欲を言えば、やはりフランスの女優さんたちの喋るフランス語で見たかったかも。Keiraの熱演にはまったく異議なし、だけど。

邦題、ひどいのが来そうだなー。これも終わんない戦いなのかねえ。ほんとどうでもいいことなのに。

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