10.04.2012

[film] Life of Pi (2012)

これのタイトルを得意げに「ライフ オブ "ピ"」と連呼しているひとがいたが、それはもちろんまちがいなので念のため。

しかし、それにしても、狙ったわけでもなんでもない、ただ出張で来ているだけなのに、NYFFのオープニングに3年連続で居合わせることになろうとは。 去年のときは、わーい2年連続ラッキーと喜んでいただけだったが、さすがにちょっとこわい。 これで運を使い果たしたくない。

例年通りStand-Byの列に並ぶつもりでいたのだが、朝から降ったり止んだりのよくない天気だし、体力もしんでいるのでしんどいーと思って朝Webを見たらチケット売っていた。 で、買おうとしたら1枚$100よ。 ええー、だったが、50周年のお祭りだし、御祝儀込みでいいや、と買ってしまった。

9:00pmの回。 初回は7:00pmの回だから、厳密にはほんもんのWorld Premireではないのだが、それでもお祭りはお祭り。

50周年を記念したオープニングのスピーチでは昨年、NYFFのSelection Committee Chairを辞めることを発表した Richard Peñaさんのが感動的だった。
こないだのVillage Voiceにもこの人がある年のNYFFの開催直前にJia Zhangkeの"Platform"を発見して、プログラムに強引にすべりこませたエピソードが載っていたが、このひとが巨体をゆすって嬉しそうに前説をする映画に外れはなかったの。
ほんとうにありがとうございました、と。 (でもその翌日、平気で前説している姿が... Chairmanをやめただけだったのね)

その後にスピーチをしたAng Lee監督は、えらくふつうのおじさんに見えた。(オーラみたいのがばっさりと、ない)

冒頭に流れるNYFF50のTrailerが例年通りすばらしい。 最後にこっちを見てにっこりするのは、ルーズベルト大統領なの。



さて、「ぴ」。製作に4年をかけたという3D超大作、であるが、圧倒的な「大作」感はあんましない。
まず、冒頭に出てくるいろんな動物 - ナマケモノのまわりにハチドリとか、前景にブタその後ろにカバ、とか、そういう桃源郷映像にやられる。

動物好き、動物園好きのひとは見に行って損はない。 BBCのドキュメンタリーの驚異の映像!とかいうのより、ある意味感動した。

インドで動物園を経営するお父さんお母さんお兄ちゃんと幸せに暮らしていたパイが、家族でカナダに移住することになって動物一式ごと日本船籍の船に乗って引っ越しの旅にでる。
そしたら海のまんなかで大嵐にあって海に投げ出され、目の前にあった救命ボートに逃げこんだらそこに乗っていたのはシマウマ、ハイエナ、オランウータン、そして... トラだった。 あとのみんなは船ごと沈んでいってしまうの。 

"We Bought a Zoo"ではなくて、"I Lost a Zoo"なの。 かわいそうにー。

ノアの箱舟かと思いきや、そこからさきは諸行無常と忍耐の旅で、最後に残ったトラさん(彼の名前はRichard Parker)とにらめっこしつつ、救命ボートにあった保存食を細々と食らいながら命をつないでいく。 (しかもこいつ、ヴェジタリアンだから魚とか食べれねえの)

"Hulk" (2003)で人の肉体の限界超えを描き、"Brokeback Mountain" (2005) で山男同士の一線超えを描き、"Lust, Caution" (2007)で体制側反体制側の一線超えを描いたAng Leeであるから、今回はまさか人と獣の一線超え... があるかもしれないと期待したのだが、それはなかった。
トラが突然しゃべりだしてくる、とか、どうぞわたしをお食べくださいと身を投げだしてくるとか、少しだけ期待したのだが、あとちょっとでしゃべりそうでしゃべってはくれなかった。

ただ、見てもらえばわかるが、これはこれで十分一線を超えた、ひ弱な少年のAmazing Journeyであって(法螺話、ともいう)、ありそうでなかった3D電子曼荼羅、なのだった。 
作りものであることを十分にわかったうえで、それでもひょえー、とびっくりするしかない。

地球を半分ぐるりとまわるスケールをもっていながら、ありがちな愛と感動のフィナーレうんたらに持っていかないところはえらいと言おう。
これに感動して泣けるひとはよっぽどポジティブな(うざい)ひとだとおもうわ。

それにしても、トラってでっかい猫だなあ、と改めて思った。 あの顔の模様とか、見れば見るほどおもしろすぎる。 ほしい。 でもあんなに山盛りのミーアキャットは、いらない。

それにしても、Gérard Depardieuは、あんなとこでなにしてたのかしら。

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