10.26.2012

[film] La guerre est déclarée (2011)

24日の水曜日、終わっちゃいそうだったので慌てて駆けつけて見ました。
『わたしたちの宣戦布告』。 英語題も"Declaration of War"。

ロミオ(という名前の彼)とジュリエット(という名前の彼女)がクラブで出会って恋におちて結婚してアダムという男の子が生まれる。
アダムはかわいいけど、なんか動きがおかしいので医者に診てもらうことにしたら、診てもらうにつれて診察は大掛かりになり、スキャンしたら腫瘍があることがわかり、腫瘍を切除して成功したと思ったらそれが悪性で、生存確率10%の難病であることがわかり、ふたりは大騒ぎしながらアダムのために奔走するの。

親がかわいいかわいいわが子を救うため、守るためにしめしめべたべた泣いて耐えてがんばる、そういうお話しだったら見にはいかなかった。 いくもんか。

アダムの最初の診察でマルセイユに向かうとき、ふたりは「これはぼくたちの戦争だ」と宣言する。 いいか、ふたりで、戦って勝つのだ、と。
(車と電車、それぞれの窓に向かって歌うふたりのデュエットのすばらしいこと)

映画はその宣言を受けて、それに沿うかたちで、ふたりの数年間に渡る戦いを追っかける。
もちろんふたりは医者ではないので、手術したり薬で治したり、治療行為をできるわけではない。なにをするかというと、いちいち沈んだり祈ったり、アダムのそばにいてあげたり、検査の結果に一喜一憂したり、その程度のことしかできない。 家族とか友達はいちおう味方だけど、これはふたりの戦いで、ふたりで喧嘩しても、無一文になっても、やけくそでがむしゃらに走り続けるしかない。 そういう戦い。

とにかく、いろいろ理由はあるのだろうが、ふたりはずっと走っている。

その速さ、速くあろうとするふたりの意思が、映画に軽さと躁状態をもたらして、心地よい。
別に難病モノでなくても、ふたりのパンクスが疾走するだけの映画、としたって構わないくらいカメラはふたりの横について走っていく。

練りに練ったであろうと思われる音楽はずっと見事で、冒頭、ふたりが出会うシーンで流れるFrustrationていうバンド(知らなかった..)の"Blind"て曲のチープなトーンのパンクが全体のトーンを立ちあげて、その後はクラシックでもなんでも、時に沁みわたり、時に勇ましく追いたてる。 
特に、遊園地で流れる"O Superman"のなんという素敵なこと。

あとはファッションとか服の色(青とか赤とか)とか、いちいちセンスがよくて、それで彼らは仲間と呑んだり遊んだりしていて、その辺の譲らない、つんとしたかんじもよいの。

この出来事は主演しているふたりの間に実際に起こったことで、8歳になったアダム本人も出てくる。それをジュリエットのひとが監督して、脚本はふたりで一緒に書いている。
で? それがどうした? というくらい作品そのものがよいので気にならない。

最後のほうのナレーションでふたりは「より強くなるために関係を解消した」という。
え、と一瞬思うがそうなんだ、と思う。 ふたりは、ふたりして愛に殉じるロミオとジュリエットにはなりたくなかったのだ。 だって戦いは続くのだから、と。

それを知ったあとで、浜辺を歩いている親子3人を見るとなんかじーんとくるのね。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。