10.06.2012

[film] Ingrid Caven, Musique et Voix (2012)

29日の土曜日、NYFFの2日目18:30、"Camille Rewinds"の後で見ました。
監督は「ある娼館の記憶」(2011)のBertrand Bonello。
英語題は、"Ingrid Caven: Music and Voice"。

上映はでっかいメインのホールではなく、少し離れたとこの小さなシアターで、そこの前にRichard Peñaさんがいたのでやったあ、だった(この映画は当たり、ということ)。 その後のお手洗いでも彼の横に並んだので、お礼を言って握手をとか思ったが、恥ずかしがりなのでだめだった。 それにお手洗いだし。

お客さんは20人くらいだったか。
ほんとは監督もVideoでトークに参加する予定だったが適わずとのことで、代わりにPeñaさんが語ったところによると、監督が彼女のライブを見て、すごく感動したのでその場で翌日のライブのシューティングをお願いしたらOKが出て、それを撮ったのだが、公にするつもりはなくて、編集したのをIngrid Cavenさんにプレゼントしたのだそう。 それを気にいったCavenさんが、自宅のパーティかなんかで知り合いにちょっと見せたところ、すごいじゃんもっと見せろ見せろ、ということになってロカルノ映画祭かどこか(たしか)で公開したら更に評判になって、ここまで来ました、と。

ものすごく失礼な話しなのだが、わたしはまだ彼女が現役のシンガーとしてライブをしているなんて知らなくて、もう亡くなられたのか、或いは『トスカの接吻』みたいなことになっているのかと思っていた。 しかし、1938年生まれで、撮影がたしか2009年頃、と言っていたので、70歳は超えていたことになる。 ありえない。 しかも2日目でこれか。

カメラはいくつかあるみたいだが、アングルはほぼ固定、編集はPCで、クレジットもPCのフォントのまま、ナレーションもコメントもなにもなし、ライブの始めから終わりまでをざっくり撮っただけ。 演者の圧倒的な歌とその世界がずうっと流れてくるだけ。

ピアノとドラムスをバックにドイツ語の歌、フランス語の歌、英語の歌、スタンダードとかシャンソンとかキャバレー艶歌とか(あとでクレジットをみたらFassbinderの書いた曲もあった)、全く途切れることがない。 まずはその途切れないことにびっくりして、こわくなってくる。

特に、終盤の「アヴェ・マリア」以降の走りっぷり - アンコール2回 - はありえない。
音楽のライブ、というよりは彼女が出演した映画の世界を凝縮してその声で訴えてくる、世界の光も闇も表も裏も、西欧のどんな国にも、それらすべてに響き渡る声、それらを代表する声としてフィルム上にあったあの声、強い声、愛する声、切々とした声、震える声が現れる、というか。 

ライブフィルムって、これで十分なんだとも思った。


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